チンニングを自宅で再現するならドアジムよりぶら下がり健康器だ

チンニングは背中の「広がり」をつくる。ドアジムには制約が多い。ぶら下がり健康器はQOLを上げる。したがって、チンニングを自宅で再現するならドアジムよりぶら下がり健康器だ

チンニングは背中の「広がり」をつくる

背中の種目は「厚み」と「広がり」に分ける。デッドリフトやロウは「厚み」をつくる。チンニングやプルは「広がり」をつくる。したがって、チンニングは背中の「広がり」をつくる

背中の種目は「厚み」と「広がり」に分ける

背中の筋肉は、厚みをつくる「僧帽筋」や「脊柱起立筋」と、広がりをつくる「広背筋」に分けられる。だから、背中を鍛えるときも各種目の特徴を理解してトレーニングをするべきだ。

「僧帽筋」は首から背中の中心までにある筋肉で、僧帽筋が発達すると前からは首回りが盛り上がって見え、後ろからは背中の上部が盛り上がって見える。

「脊柱起立筋」は首から腰にかけて背骨に沿うようにあり、背中では最も大きく長い筋肉だ。脊柱起立筋は僧帽筋や広背筋の内側にある筋肉だが、鍛えることで背中全体の厚みになる。

「広背筋」は脇の下から腰にかけて逆三角形をつくる筋肉だ。腕を広げたり上げたときに逆三角形ができるのは、広背筋が発達している証拠である。

デッドリフトやロウは「厚み」をつくる

デッドリフトは背中を鍛える種目の代名詞であり、僧帽筋や広背筋を鍛えることもできるが、メインのターゲットは脊柱起立筋である。

デッドリフトはデッド(完全停止)状態からリフトするときに「大臀筋」や「ハムストリングス」を使い、一連の動作では常に脊柱起立筋に負荷がかかっている。このことから、デッドリフトを「脚の種目」とする見方もある。

デッドリフトがスクワットやベンチプレスと一緒に「ビッグスリー」といわれるのは、背中側にある複数の筋肉を同時に鍛えられるコンパウンド種目であり、非常に効率的だからだ。

それから、ベントオーバーロウやシーテッドロウのように下や前から重りを引く動きは、僧帽筋や広背筋の内側がターゲットになる。また、ロウ(Row)とは(船を)「こぐ」ことだ。

僧帽筋は肩甲骨を内転させる(背中を引き絞る)ときに使われるため、ロウ系種目では肩甲骨の内転と外転(内転の逆の動き)を繰り返す。

チンニングやプルは「広がり」をつくる

チンニングやラットプルダウンのように体を上に引き寄せるか重りを上から引く動きをするとき、広背筋は最も活躍する。

広背筋は肩関節を屈曲させた(手を上げた)状態から伸展させる(手を前に下ろし後ろに持っていく)ときの役割が大きい。この動きはチンニングの動きそのものであるから、チンニングでは自分の体重がダイレクトに広背筋への負荷となる。

そのため、チンニングは負荷の大きい種目でもあり、自重よりも負荷を下げたいときにはラットプルダウンが使われる。無論、ラットプルダウンがチンニングよりも優れているのは、負荷をコントロールできることにある。

チンニングやラットプルダウンのコツは肩甲骨を下制させる(胸を張る)ことで、これにより腕に負荷が逃げたり肩を痛めたりすることがなくなる。

ドアジムには制約が多い

そもそもドアジムが設置できない。設置しても壁が壊れるかもしれない。ドアジムはチンニングに最適化されていない。したがって、ドアジムには制約が多い

そもそもドアジムが設置できない

ドアジムは強度の高い「突っ張り棒」だが、強度を維持したまま「棒」の長さを伸ばすには限界がある。だから、どれだけ長いドアジムでも長さは1mが限界であり、1m幅の空間は家の中にあまりない。

ドアジムは名前のとおり「ドア」を使うトレーニング器具だが、正確にはドアを開けたときの空間を使う。だから、「開き戸」では使えないし「引き戸」の種類によっても使えないことがある。

例えば、ドアがガラスで作られいると、ドアジムとドアが接触することでガラスのドアは簡単に割れてしまう。

ドア以外の1m幅の空間といえば「廊下」くらいだが、最近はスペースを有効に使うために廊下がない間取りの家も多い。

設置しても壁が壊れるかもしれない

幸運にもドアジムを設置できそうな空間があっても、ドアジムの先端(末端)を固定するためにはしっかりとした「基盤」が必要であり、これが満たされていないと壁を壊してしまう可能性がある。

ドアジムの構造は、「バー」にかかる負荷(=自重)を左右の壁に「基盤」を通して逃がすようになっている。つまり、自分の体重と同じ負荷が左右の壁にかかる。

家の壁は骨組みに石こうボードを張り付けていることが多く、その場合は壁の奥に空間がある。だから、人の体重を支えるのに十分な強度がないこともある。

壁以外の家具も横からの力を支えるようには作られていないから、ドアジムを設置できる場所がなくても珍しくない。

それから、ドアジムの基盤はネジなどでしっかりと壁に固定しなければならないものも多く、賃貸物件では使用できないこともあるだろう。

ドアジムはチンニングに最適化されていない

基盤を固定するためにネジを使わないドアジムもあるが、ここまでの制約を回避してドアジムを設置したところで、そもそも1m幅の空間ではチンニングの動きを最適化することはできない。

チンニングをするときに必要な幅は腕の長さにもよるが、肩幅の1.5倍は必要だと考えるべきだ。手を横に水平にしてから、肘から直角に上へ曲げたときの肘から肘までの幅が、チンニングをするときには必要だ。

この幅が1mより小さくても、チンニングの動きでは肘の位置が動くため、ドアジムを設置した空間の幅が1mしかないと、かなり窮屈な動きになることが分かる。

チンニングにもグリップのバリエーションがあって、「パラレル」なら親指が見える向きにグリップを握る。このときはチンニングに必要な空間の幅も小さくなるが、僧帽筋の関与が大きくなる。

ぶら下がり健康器はQOLを上げる

ぶら下がり健康器はチンニングに最適化されている。ディップスなどができるものもある。占有スペースの問題を解決できる。したがって、ぶら下がり健康器はQOLを上げる

ぶら下がり健康器はチンニングに最適化されている

元々、ぶら下がり健康器はぶら下がって「ストレッチするため」に作られたものだが、最近は「チンニングするため」のトレーニング器具として作られているものも多い。

ストレッチするためのぶら下がり健康器とチンニングするためのぶら下がり健康器の違いは、ぶら下がるための「バー」にある。ストレッチ目的のぶら下がり健康器ではバーの幅が肩幅もあれば十分だが、チンニング目的のときは肩幅よりも広くなっている。

広背筋を鍛えるためにチンニングをするのであれば、肩幅よりも広いバーがあるぶら下がり健康器がいい。肩幅より広い「順手」のチンニングが、広背筋を鍛えるためには最も有効な種目である。

ディップスなどができるものもある

ぶら下がり健康器は人の体重を支えるための構造上、底面が大きく作られている。だから、ディップスバー(水平方向のバー)を付けても、ぶら下がり健康器の大きさ以上に空間を圧迫しない。

例えば、WASAIのぶら下がり健康器にはディップスバーが付いていて、ディップスはもちろん、ハンギングレッグレイズをすることもできる。

ディップスは大胸筋を鍛える種目として、自重トレーニングの中では負荷の大きい種目である。しかし、水平方向に並ぶ二本のバーは日常生活ではあまりなく、パワーラックやぶら下がり健康器でもないと自宅でトレーニングに取り入れるのは難しい。

それから、ハンギングレッグレイズも腹筋を鍛える種目として、自重トレーニングでは負荷の大きい種目である。ディップスと同じように、パワーラックやぶら下がり健康器がないと自宅でトレーニングに取り入れるのは難しいだろう。

ぶら下がり健康器は、チンニング、ディップス、ハンギングレッグレイズといった種目を自宅で再現できる効率的なトレーニング器具である。

パワーラックは置けなくても、ダンベルとベンチ、ぶら下がり健康器があれば、ジムでトレーニングするのに近い負荷を自宅でも再現できるようになる。

しかも、ぶら下がり健康器は10,000円以下で買えるものが多くコストもかからない。簡単な構造だから一人でも組み立てられるし、壊れたりすることもあまりない。

占有スペースの問題を解決できる

ぶら下がり健康器の大きさは、高さが2mで底面も1㎡はあるから、占有するスペースは大きい。しかし、トレーニング器具以外の活用も考えれば、占有スペースの大きさというデメリットを打ち消すこともできる。

例えば、「ハンガーラック」や「物干し台」として活用するには十分な大きさがある。実際、一週間の中でぶら下がり健康器をトレーニングに使う時間は1%にも満たないから、99%以上で二次的な活用ができる。

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ぶら下がり健康器は人の体重を支えるために底面を大きくして力を分散させている。それから、ぶら下がり健康器を使ったトレーニングは自重トレーニングが中心になるから、ぶら下がり健康器自体を重くする必要がない。

そのため、ぶら下がり健康器はその大きさの割には軽く作られていて、移動させることも容易だ。だから、使わないときは部屋の隅でハンガーラックとして使い、トレーニングをするときだけ取り出すといったこともできる。