英会話にフレーズ暗記は通用しない。発音と英作文の勉強をしよう

英会話がフレーズ暗記で完結するなら人はいらない。また、しっかり発音できると会話が楽しく伸びも早くなる。そして、フレーズ暗記をやらないなら英作文をやるしかない。したがって、英会話にフレーズ暗記は通用しない。発音と英作文の勉強をしよう

英会話がフレーズ暗記で完結するなら人はいらない

フレーズ暗記は英語の表現が決まっている。表現が決まっているならロボットもできる。ロボットができるなら人が話す必要はない。よって、英会話がフレーズ暗記で完結するなら人はいらない

フレーズ暗記は英語の表現が決まっている

英語のフレーズ暗記とは、フレーズ(「言い回し」や「慣用句」といった表現)を暗記して実際の英会話で使う技術だ。しかし、残念ながら人が暗記できるフレーズは有限である。だから、フレーズ暗記で使う表現には広がりがない。

例えば、"I'm going"を使った表現を考えると、副詞"home"を使って"I'm going home.(=家に帰る。)"ができる。それから、不定詞"to put on shoes"を使って"I'm going to put on shoes.(=靴を履く。)"もできる。これらの表現をひとつずつ「暗記」して英会話で使うにはムリがある。

それでは、"I'm going"だけをフレーズ暗記して、副詞や不定詞を組み合わせて表現ができるようにすればいいと考えるかもしれない。しかし、"I'm going home."と"I'm going to put on shoes."で使われる"I'm going"をどうやって覚えるのか?

動詞"go"には「ある場所から離れる」「進行する」「ある場所に向かう」といった意味がある。そして、主語が「自分」の現在進行形だから、"I'm going home."は"home"に「向かっている」、"I'm going to put on shoes."は"to put on shoes"を「進行している」となる。

つまり、結局のところフレーズ暗記も単語や文法構造の理解をしなければ本質の理解ができない。本質を理解しなければ覚えることもできない。フレーズ暗記は本質を理解するまでの表面をなぞっているにすぎないのだ。

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表現が決まっているならロボットもできる

それから、もしフレーズ暗記の有限で限定的な表現だけで会話ができるなら、表現同士の対応を定義すればロボット(機械学習ができるAIを一般化したもの)だけで会話ができることになる。

現在すでにチャットボットといったロボットが人との会話に使われている。チャットボットの仕組みはまさに有限で限定的な表現同士の対応を定義したものからできている。

ロボットが新しい表現を学ぶとその表現がどのような表現に対応したものなのかという情報といっしょに、その表現を自分の表現データベースへ格納する。

それでは、我々がチャットボットといったロボットと会話していて感じる違和感はどこから来るのか?ひとつはロボットの表現データベースが貧弱であることが理由だ。データベースの大きさは表現の広がりと比例するから、データベースが貧弱だと表現の広がりもない。

しかし、データベースをどれだけ強化しても違和感は残るであろうことが個人的な見立てだ。会話で使う表現は有限ではないし表現同士が一対一に対応するものではないからだ。

ロボットができるなら人が話す必要はない

しかも、ロボットにできることはロボットにやらせる流れが人類の歴史から分かる。つまり、ロボットだけで完璧な会話ができるなら人が話す必要はなくなる。

世界中の製造現場では多くの作業が自動化(機械化)されている。自動化することで我々の生活がより豊かになるからだ。

会話のなかでもエネルギーが必要な母国語以外を使った会話は、会話ができるロボットの登場ですぐさま置き換えられるだろう。今でも学ぶことに貪欲ではない人は、海外出張になると高額な翻訳機を買ってきてどうにかしようとする始末だ。

つまり、フレーズ暗記が本当に有効な技術なら、我々の未来には母国語では人間同士が会話して、母国語以外ではロボット同士が会話するディストピア(?)が待っていることになる。

しっかり発音できると会話が楽しく伸びも早くなる

発音には正解があるから白黒つけやすい。正しく発音できるとリスニングが分かる。発音できなければリズムは身に付かない。よって、しっかり発音できると会話が楽しく伸びも早くなる

発音には正解があるから白黒つけやすい

英語の発音記号は母音と子音を合わせて40個前後ある。「前後」と数が曖昧なのは、アメリカに音声記号(発音記号)の専門機関がなく、学者ごとに定義の違いがあるためだ。それでも、発音の仕方は有限個であり正解もある。

例えば、"think"を発音記号で表すとθíŋkになる。"sink"はsíŋkだ。つまり、"think"と"sink"の発音の違いは子音"th"と"s"の違いで、それぞれに正しい発音方法がある。

フレーズ暗記が使えない理由は、英会話で使う表現は無限にありすべてを暗記できないからだ。しかし、発音記号は有限個しかないのだから、暗記することに意味が見いだせそうだ。

40種類の発音記号は一見すると膨大な数に思える。しかし、実際は義務教育で少なからず英語に触れてきた日本人にとって、発音記号はゼロからの学びではない。

正しく発音できるとリスニングが分かる

英語のリスニングが分からない原因のひとつは英語の発音を知らないことだ。単語は知っていてもその単語の発音を知らないとリスニングはできない。

例えば、TOEICのリスニングでスコアを上げたいとき、TOEICのリスニング教材だけを学習してもリスニング教材に登場した表現しか分からない。表現は知っていても発音と結びついていないために聞き取れないことがある。

発音を学んでいれば表現としては知っているがリスニング教材では学んでいない表現でも、聞き取れる可能性を上げることができる。だから、リスニング教材と発音の両方とも学べることが一番だが、どちらかしかできないなら発音を学んだほうが効率的だ。

発音できなければリズムは身に付かない

英語を話すリズムは、各単語を正しく発音できているから生まれるものだ。逆に、単語のレベルで正しい発音ができなければ英語をリズムよく話すことはできない。

英語の単語レベルで正しく発音ができていない人で、英語をリズムよく話せる人は見たことがない。日本人にとって英語は母国語ではないから、日本人には日本語の発音に由来したクセが出やすい。100%正しいとは言わないまでも、90%以上の正しさで各単語を発音できるだけで英語が相手に伝わる可能性は上がる。

英語の発音で90%以上の正しさを目指すなら、「英語耳」で発音の基礎を学んでおけば十分だ。それだけで少なくとも発音を褒められることが増えるだろう。それだけ日本人は英語の発音を学んでいないのだ。

フレーズ暗記をやらないなら英作文をやるしかない

会話の手法は暗記か作文どちらかだけだ。日本語会話だって日本語で作文している。英作文ができると伝えたいことが伝わる。よって、フレーズ暗記をやらないなら英作文をやるしかない

会話の手法は暗記か作文どちらかだけだ

会話の手法は「暗記」と「暗記以外」に分けられる。それでは、暗記以外とは何か?暗記以外は暗記しないで自分で考えるのだから「作文」になる。つまり、会話は決まった表現だけで話すか、その場で会話の流れに沿った表現を作って話すかのどちらかだ。

例えば、会社で同僚から「おはよう」と声を掛けられたとき、「おはよう」というあいさつには「おはよう」と返すと会話になると考えて「おはよう」と返すか、前日にその同僚が会社を休んでいたことを思いだして「おはよう。体調は?」と返すのでは違う。

そして、この例では体調を気遣ってくれる同僚(=自分)という以上に、あいさつを返された同僚の感じ方も変わってくる。これは機械的なあいさつしかしない会社の同僚に感じる無力感と同じだ。

日本語会話だって日本語で作文している

日本語と英語では言語のコンテクストレベルが異なる。それでも我々は日本語を話すときに細かな表現を微調整しながら作文をして日本語を話している。日本人が日本語を話すときは作文を意識することが少ないが、かぎりなく無意識に近くても作文はしている。

前日に会社を休んでいた同僚に「おはよう。体調は?」とあいさつを返すときも、「おはよう」とあいさつされた状況とその同僚が前日に会社を休んでいた事実をトリガーにして定型表現をアウトプットしているわけではないのだ。

むしろトリガー条件とトリガーに起因したアクションを決めて覚えるほうが難しい。ロボットはトリガーとアクションがないと会話はできないが、人間はロボットと同じではない。

英作文ができると伝えたいことが伝わる

暗記した表現だけを使うのと稚拙でも作文した表現を使って話すのとでは、その表現を受けた相手の感じ方は異なる。作文には感情が乗りやすく、自然と強調したい言葉にはストレスが置かれるからだ。

フレーズ暗記は英会話に対応するためのいわば応急処置だ。フレーズ暗記で学んだことがまったくのムダになるわけではないが、応急処置だけで一生を過ごすことはできない。英語を話せるようになるには英作文ができなければならない。

英会話で使える英作文を学びたいなら「瞬間英作文」から始めるといい。難しい単語や複雑な文法を使う必要はまったくない。ただ、自分で考えたことを英語で相手に伝えればいいだけで、そのもっとも簡単な方法が瞬間英作文である。