マルチビタミンは筋肥大のためではなくてリスク回避のためにある

マルチビタミンはビタミンやミネラルを補う。筋肥大は栄養素の充足の十分条件でしかない。マルチビタミンは減量期のリスク回避になる。したがって、マルチビタミンは筋肥大のためではなくてリスク回避のためにある

マルチビタミンはビタミンやミネラルを補う

ビタミンやミネラルは体に必要な栄養素である。マルチビタミンは栄養素の充足に信頼度が高い。マルチビタミンだけでは栄養素が足りていない。したがって、マルチビタミンはビタミンやミネラルを補う

ビタミンやミネラルは体に必要な栄養素である

マルチビタミンには複数種類のビタミンやミネラルが含まれている。ビタミンやミネラルは代謝機能や細胞の成長、回復のために使われていて、三大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)と合わせて五大栄養素ともいわれる。

ビタミンやミネラルは三大栄養素と同じく体に必要なものであり付加価値はない。例えば、タンパク質は筋肉の成長に必要であるが、タンパク質を多く取っても筋肉がそれと同じだけ成長しないようにだ。

それに対して、ビタミンやミネラルが長期間にわたって不足するのは良くない。例えば、代表的なビタミン「ビタミンD」の不足は骨を弱くするし、ビタミンDと関連するミネラル「カルシウム」の不足は骨密度を下げる。

マルチビタミンは栄養素の充足に信頼度が高い

マルチビタミンは体に必要な栄養素であるビタミンやミネラルを補助的に取ることに適したサプリメントであり、権威のある研究機関もその効果を支持している。

実際、オーストラリア国立スポーツ研究所は、マルチビタミンを信頼度が最も高いサプリメントのグループ「グループA」に分類している。1

グループAに分類されるサプリメントは、特定の状況下で使用されたときの効果に強い科学的な根拠があるものだ。マルチビタミン以外では「カフェイン」や「クレアチン」、マルチビタミンに含まれていることも多い「ビタミンD」「カルシウム」などがある。

多くのマルチビタミンは一日一粒でビタミンとミネラルが栄養基準値内で取れるよう設計されている。しかも、一粒15円前後と安いこともあって、世界的に消費量の多いサプリメントの一つである。

マルチビタミンだけでは栄養素が足りていない

マルチビタミンから体に必要なビタミンやミネラルが取れることは分かっているが、マルチビタミンだけではビタミンやミネラルに付随する栄養素が不足する可能性も指摘されている。

一般的に、野菜や果物が健康的だといわれる理由は、野菜や果物からビタミンやミネラルが取れるからだ。実際に、野菜や果物を多く食べることと体が健康であることには相関関係も見られる。

しかし、野菜や果物にはビタミンやミネラル以外の栄養素も含まれていて、その一つが「ファイトケミカル(植物性化学物質)」といわれるものだ。このファイトケミカルも体の健康に貢献していると考えられている。

ファイトケミカルの効果を証明するには科学的な根拠が十分ではないが、野菜や果物が体を健康にする理由がファイトケミカルにもあるとするなら、マルチビタミンだけでは栄養素が不足する可能性はあり得る。

筋肥大は栄養素の充足の十分条件でしかない

筋肥大しているなら栄養素が充足しているは成り立つ。栄養素が充足しているなら筋肥大しているは成り立たない。したがって、筋肥大は栄養素の充足の十分条件でしかない

筋肥大しているなら栄養素が充足しているは成り立つ

筋肥大の条件は「栄養」「休息」「刺激」の三つだといわれている。だから、栄養素が足りていないときに筋肥大が起こるとは考えにくいし、筋肥大しているなら栄養素は足りていなければならない。

この「栄養」には三大栄養素から計算される摂取カロリーがあり、筋肥大するときの摂取カロリーは消費カロリーを上回っていなくては(オーバーカロリーでなくては)ならない。

その上で適当なPFC(タンパク質、脂質、炭水化物)のバランスがあり、これらPFCを体で代謝させることにビタミンやミネラルが使われている。

筋肥大に理想的なPFCバランスを食事だけで取ることは難しいから、プロテインなどのサプリメントを取ることもあるだろう。しかし、栄養素は食事から取ることを基本としていれば、筋肥大するとき(増量期)は食事から十分な量のビタミンやミネラルが取れている。

ビタミンやミネラルを取ることに付加価値はないから、ビタミンやミネラルを必要以上に取ることは無益である。むしろ、ビタミンやミネラルを必要以上に取ることは有害ですらある。

ビタミンは水に溶ける「水溶性ビタミン」と、水に溶けない「脂溶性ビタミン」に分けられる。さらに、水溶性ビタミンは「ビタミンB群」と「ビタミンC」に、脂溶性ビタミンは「ビタミンA」や「ビタミンD」などに分けられる。

水溶性ビタミンは必要以上に取っても体外に排出されるだけなので有害性は低い。必要以上の水溶性ビタミンは体外に排出されるが、水溶性ビタミンは代謝にも影響することから、こまめに取って不足させないことが推奨されている。

それに対して、脂溶性ビタミンは必要以上に取った分が体内に蓄積されるので有害性がある。一般的な食事だけで過剰になることはないといわれているが、サプリメントの併用で過剰摂取になる例も報告されている。

それから、「カルシウム」や「マグネシウム」といったミネラルも、それぞれを取る量のバランスが大切である。どちらかだけを多く取ってしまうと、もう一方の吸収に影響することもある。

栄養素が充足しているなら筋肥大しているは成り立たない

筋肥大の条件は三つあるのだから、栄養素の充足は筋肥大の一条件にすぎない。だから、栄養素が足りているだけで筋肥大が起こるとはいえない。

実際、筋肉の材料になるタンパク質を取ったからといって、体が筋肉を必要だと認識している状態(適当な「刺激」を受けている状態)でなければ、筋肉が成長することはない。

だから、筋肥大の条件には「刺激」がある。運動をすることで筋肉を使うと、体は刺激を受けた筋肉が体に必要だと認識して、外部から取った栄養素を筋肉の合成に使う。

それから、筋肉の合成には「休息」も必要である。筋肉の刺激は筋肉の分解でもあるから、休息が足りていないと筋肉の合成よりも筋肉の分解が優位になってしまう。

この「休息」には体の休息だけでなく脳の休息も含まれている。だから、ストレスを減らしてしっかりと眠ることも筋肥大には必要である。

マルチビタミンは減量期のリスク回避になる

減量期には筋肉が落ちるリスクがある。マルチビタミンは筋肉が落ちるリスクを下げる。したがって、マルチビタミンは減量期のリスク回避になる

減量期には筋肉が落ちるリスクがある

体に必要な栄養素が足りていないときに筋肉は落ちる。だから、減量期のカロリー制限は、栄養素の不足から筋肉が落ちるリスクにもつながる。

例えば、運動のエネルギーには糖質が使われるが、糖質が足りていない状態で運動をすると、体は脂質を分解してエネルギーにしようとする。このとき、血中や筋肉内のアミノ酸もエネルギーとして使われるため筋肉が落ちてしまう。

それから、減量期には貴重なエネルギー源でもある糖質を代謝するには、「ビタミンB」が使われる。増量期でもビタミンBが足りていないと、どれだけ糖質を取っても糖質は代謝されないからエネルギーにならない。

摂取カロリーを制限する方法としては、エネルギー量の大きい「脂質」を制限することが一般的だ。脂質は肉や魚、ナッツ類に多く含まれている。

ビタミンやミネラルもこれらの食材に多く含まれているため、脂質を制限する目的で肉や魚、ナッツ類を制限すると、ビタミンやミネラルの摂取量も制限されてしまう。

だから、減量期に脂質を制限して糖質を取っても、糖質を代謝するためのビタミンやミネラルが足りていないことで、せっかくの糖質が代謝されない可能性がある。

さらに、糖質などのエネルギー源が有効に使われないと適当な運動もできないから、筋肉への刺激が足りずに体は筋肉を必要だと認識できない。

体が筋肉を必要だと認識しなければ、筋肉を分解してエネルギーにされる可能性も高くなる。

マルチビタミンは筋肉が落ちるリスクを下げる

ビタミンやミネラルは体が代謝するためにも使われているから、減量期のように外部から取り入れる栄養素が少ないときほど、限られた栄養素をより有効に使うことに貢献している。つまり、マルチビタミンは減量期に枯渇しがちなエネルギー源を最大限有効に使って筋肉が落ちるリスクを下げる。

増量期は外部から取り入れる栄養素が多いから、ビタミンやミネラルも多く入ってくる。食事はバランスが良いことが理想的であり、それができているならマルチビタミンを取る必要はないし、そうでなくてもマルチビタミンは保険にしかならない。

それに対して、減量期はビタミンやミネラルを含めた全ての栄養素が不足しがちになるから、マルチビタミンからビタミンとミネラルを取る必要性が増量期よりも高い。

減量期にマルチビタミンを取っても体重の増減には影響しないが、ビタミンやミネラルは体重を減らすために制限されたタンパク質、脂質、炭水化物の三大栄養素を最大限有効に活用する。

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