パラフレーズを英語より日本語でうまくできる人は英会話が伸びる

パラフレーズは本質を変えない言い換えである。英語のパラフレーズができる人は既に英会話ができる人だ。日本語のパラフレーズが英会話を助ける。したがって、パラフレーズを英語より日本語でうまくできる人は英会話が伸びる

パラフレーズは本質を変えない言い換えである

最も簡単なパラフレーズは単語の置き換えだ。表現を言い換えることもパラフレーズである。本質が変わらなければ文章を再構成することもある。したがって、パラフレーズは本質を変えない言い換えである

最も簡単なパラフレーズは単語の置き換えだ

"paraphrase"は、単語"phrase"に「〜の近く」「〜に似る」などの意味を添える接頭辞"para"が付いたものであり、日本語では「言い換え」と訳される。単語は文章において単体で意味を持つ最小単位だから、最も簡単なparaphraseは単語の置き換え(言い換え)になる。

例えば、日本語の副詞「とても」は、同じく副詞である「非常に」にパラフレーズできる。これは英語でも同じで、"very"を"so"や"extremely"にパラフレーズできることが対応している。

しかし、これらのパラフレーズがいつでも成り立つわけではない。単語の意味は似ていても単語同士には相性があるから、パラフレーズすることで一般的には使われない組み合わせになることがある。

この単語同士の相性を"collocation"といい、collocationは英語上達に重要な概念である。

表現を言い換えることもパラフレーズである

パラフレーズは単語を置き換えることだけでなく、表現を言い換えるときにも使える言葉だ。単語のパラフレーズは「置き換え」であり「置換」ともいえる。しかし、表現のパラフレーズは置き換えや置換にはとどまらない。

例えば、「あなたに会いたい」は、「あなたに会いたいと思う」や「あなたにお目にかかりたい」とパラフレーズできる。英語で"I want to see you"を、"I feel like seeing you"や"I'd like to see you"にパラフレーズできるのも同じだ。

これらのパラフレーズした表現は、元の文章「あなたに会いたい("I want to see you")」の意味を変えていないが、使う「相手」や「状況」を考慮して自然に使い分けられている。

本質が変わらなければ文章を再構成することもある

単語や表現のパラフレーズは文章の一部を置き換えたり言い換えたりすることだが、文章の意味を変えずに構造だけを再構成することもパラフレーズである。

例えば、「高校の数学教師である」と「高校で数学を教えている」は、文章の構造が異なるが本質的な意味は同じだ。厳密には高校で数学を教えているのは教師だけではないが、しっかりとコンテクストを共有していれば認識を間違わない。

これらの日本語を英語にすると、"I'm a high school math teacher"と"I teach math in a high school"になる。英語は日本語とはコンテクストのレベルが違うから、会話の論点などに注意しながら使い分けなければならない。

実際、日本語はハイコンテクストな言語だから問題はなくても、英語はローコンテクストな言語だから会話の論点が「職業」なら、"I'm a high school math teacher"といった方が確実だろう。

英語のパラフレーズができる人は既に英会話ができる人だ

英語で言いたいことが言える人は英会話ができる。英語のパラフレーズで言いたいことが言える。したがって、英語のパラフレーズができる人は既に英会話ができる人だ

英語で言いたいことが言える人は英会話ができる

英会話ができないのは「言いたいことが言えない」からだ。このように感じたことがある人は多いだろう。逆に、英語で言いたいことが言えることは英会話を成立させるし、それを英会話の目標にしている人もいる。

英会話を始めたばかりで、相手を前にして言葉を詰まらせた経験がある人は多いはずだ。相手の言っていることは分かるし言いたいこともあるのに、それを言えないことにもどかしさを感じる。

それと同時に、言いたいことが言えさえすれば英会話が成立すると感じる。そして、言葉に詰まる原因は言いたいことを表す単語や表現が出てこないからであり、新しい単語や表現を学べば解決することだと考える。

当然、新しい単語や表現が使えるようになることは英会話の役に立つ。しかし、新しい単語や表現を使えるようになることは、英会話ができるようになるための必要条件ではない。

なぜなら、日本語に同じ意味を表す単語や表現がいくつかあるように、英語にも同じ意味を表す単語や表現がいくつかあるからだ。つまり、単語や表現は代替できるものであり、知っている単語や表現だけでも言いたいことは言える。

英語のパラフレーズで言いたいことが言える

英語で言いたいことが言えないときは、「言いたいこと」をパラフレーズすればいい。言いたいことをダイレクトに表す単語や表現が分からなくても、複雑な概念でなければ中学生レベルの単語と表現だけで表すことができる。

例えば、あるモノのことを言いたいなら、その形や色、大きさを具体的に言えれば相手が理解できる可能性は高い。最初は説明に時間がかかっても、説明すること自体がトレーニングになるし、それができれば英会話は成立している。

しかし、実際問題として英語を英語でパラフレーズするのは難しい。新しい単語や表現を使えるようになることが、英会話ができるようになるための必要条件ではないとはいえ、中学生レベルの単語や表現だけでは複雑な概念を相手に理解させられないかもしれない。

それから、「言いたいことが言えない」以前に、「言いたいことがない」可能性もある。言いたいことがなければ会話が進まないのだから会話にならないのは当然だが、これは日本人の英会話に特有の現象であり、それが起こる原因も分かっている。

日本人が英語で言いたいことがなくなってしまう原因は、日本語と英語で相手から求められる情報量に差があるからだ。

日本語と英語ではコンテクストのレベルに大きな差があり、この差は世界中の言語をコンテクストレベルで分類したとき、対極に位置すると言っていいほどに大きい。

日本語は言わなくても分かるハイコンテクストな言語であり、何かを主張したときにその根拠を言わなくても相手が察してくれることが多い。

それに対して、英語は言わなければ分からないローコンテクストな言語であり、何かを主張したときにその根拠を言わなければ相手が察してくれることは少ない。

つまり、日本人は主張に対する根拠を話すことに慣れていないため、それが「言いたいことがない(≒何を言えばいいのか分からない)」状態につながる。

日本語のパラフレーズが英会話を助ける

難しい日本語も易しい日本語にパラフレーズすれば英語に訳せる。日本語のパラフレーズは難しくない。したがって、日本語のパラフレーズが英会話を助ける

難しい日本語も易しい日本語にパラフレーズすれば英語に訳せる

英語で言いたいことが言えないとき、いきなり英語でパラフレーズを試みる前に、「言いたいことが言えない」原因をもう少しだけ考えてみる。すると、言いたいことが言えないのは、言いたいことを表す単語や表現が分からないからではなく、頭で考えた日本語が難しいからだと分かる。頭で考えた日本語が易しいなら英語に訳すのも易しいから、言いたいことが言えるようになる。

例えば、「私が忙しいのは、私が何らかの変化を起こしているからではなく、外部の環境が変化しているからだ」という文章を英訳するのは難しいだろう。

しかし、この文章を「私は忙しい」「わたしは変化を起こしていない」「外部の環境が変化している」と分解してやれば、英訳の難易度は下がる。

日本人にとって英語は第一言語ではないから、自分の主張やその根拠を英語だけで考えることはできない。日本人は英語で何かを考えているつもりでも、英語を考える前に第一言語である日本語でそのことを考えている。

これが英語で「言いたいことが言えない」本当の理由だ。つまり、英語で「言いたいこと」は、実は瞬間的に日本語で考えられていて、その日本語が難しすぎるのだ。

日本人は日本語のネイティブなのだから、日本人にとっては何も難しく考えているつもりはなくても、(自然に)英語に訳すには難しすぎる日本語を考えてしまっていることが問題であり、日本語と英語の言語レベルのギャップがボトルネックになっている。

日本語のパラフレーズは難しくない

「言いたいことが言えない」本当の理由が分かったのだから、英会話の問題は英語で解決すると気張らずに、日本語で問題解決をすればいい。日本人は難しい日本語を考えられるのだから、それを易しい日本語にパラフレーズするのは簡単である。

日本人は、英語から英語にパラフレーズしたり、難しい日本語を英語に訳したりすることはできなくても、難しい日本語を易しい日本語にパラフレーズすることはできる。そして、英語を学んでいれば易しい日本語を英語に訳すこともできる。

日本語をパラフレーズするときは、先ほどの例のように「分解」を意識することで、易しい日本語にパラフレーズできる。分解した日本語の文章は英語に訳しやすいから、言いたいことが言える可能性が高くなる。

f:id:findep:20210327102054p:plain