スコッチグレインとジャランスリワヤ選ぶなら?

スコッチグレインとジャランスリワヤは、低価格帯のドレスシューズとして、またグッドイヤーウェルテッドの入門として、人気のあるブランドだ。今回はこの2ブランドについてまとめる。

スコッチグレインとは?

ヒロカワ製靴が展開している、紳士向けドレスシューズのブランドである。

素材・木型・製法にこだわっている

スコッチグレインのこだわりと魅力は、「素材」「木型」「製法」にある。

質のよい革

スコッチグレインのドレスシューズは、革質に定評がある。

スコッチグレインのウェブサイトでも紹介しているとおり、日本を含む世界各国から、最上の素材を取り寄せて使用している。

日本人向けの木型

フィッティングを左右する木型は、日本人向けにアレンジされている。

スコッチグレインは日本発のブランドであり、50年以上の歴史がある。しかし、現代では日本人の足型が変わりつつあることも事実だ。生活習慣の欧米化により、欧米人との差がなくなってきているとも言われている。近い将来には、現状をふまえた木型の修正が必要になるかもしれない。

日本人の足型の変化は、下記の本にも書かれている。ドレスシューズ全般について、体系だってまとめられている。

紳士靴を嗜む はじめの一歩から極めるまで

紳士靴を嗜む はじめの一歩から極めるまで

グッドイヤーウェルト製法

スコッチグレインのドレスシューズは、しっかりとした製法でつくられていて、欠点があまりない。

スコッチグレインでは、ドレスシューズの生産をグッドイヤーウェルト製法に限定している。グッドイヤーウェルト製法は、補修をしながら長く履くことを前提としている。そのため、長期の使用にも耐えられるよう、全体的に堅牢なつくりとなる。

また、製法をグッドイヤーウェルテッドに一本化することによって、生産ラインが集約できていると思われる。この手法は、日本企業が得意とする「改善」そのものだ。

ジャランスリワヤとは?

インドネシアにある靴工場の、日本向け輸出品のブランドネームだ。

歴史は思いのほか長い

ジャランスリワヤは、近年急速に拡大してきた新興ブランドに見える。しかし、実は靴の製造者としての歴史は長い。

ジャランスリワヤの工場は、100年以上前にインドネシアで創業している。そして、2003年にジャランスリワヤというブランドとして、日本での展開をはじめた。おそらく、ジャランスリワヤの製造技術を知ったマーケターによって、ブランド化と日本展開が決まったものと思われる。

実際、同工場で生産された靴は、ドイツでは別のブランドとして展開されているようだ。ドレスシューズでは、技術だけでなくブランドの価値も重視される。しかし、ジャランスリワヤが後発ながらもここまで成長できた理由は、ブランド価値を大きく上回る技術があったからであろう。

製法と価格に注目したい

ジャランスリワヤの特長は、その製法と価格にある。

ハンドソーンウェルト製法

ジャランスリワヤのドレスシューズは、工業化が進むなかではあまり見られなくなった、現代では特殊な製法でつくられている。

特殊な製法とは、ハンドソーンウェルト製法といい、いわば、グッドイヤーウェルト製法を手作業でおこなう製法だ。むしろ、ハンドソーンウェルテッドが主流であった時代に、工業化による手作業の機械化がおこなわれたものが、グッドイヤーウェルテッドである。

ハンドソーンウェルテッドもグッドイヤーウェルテッドと同じように、補修をしながら履きつづけることを前提としている。そのため、全体的に堅牢につくられていることは同じだ。しかし、機械ではなく手作業でつくることにより、柔軟性のある靴に仕上がると言われている。

手頃な価格

ハンドソーンウェルテッドは、9分仕立てとも言われる。つまり、完成までの9割が手作業でおこなわれるという意味だ。ジャランスリワヤは、手間がかかることからグッドイヤーウェルテッドよりも高価になるハンドソーンウェルテッドのドレスシューズを、ほかのブランドと比べても安価に販売している。

ジャランスリワヤの低価格が実現している理由は、インドネシアにおける人件費の低さにある。おそらく、日本での製造ではこの価格を実現することはできないだろう。

実際、ジャランスリワヤは最終工程のアウトソール縫いのみを機械でおこなっている。それ以外の工程はすべて手作業だ。それにもかかわらず、ドレスシューズの価格は2万円台後半からと、驚異的な価格設定である。

スコッチとジャランを比較すると?

2ブランドのドレスシューズを所有しているため、個人的な見解で比較してみよう。それぞれ所有しているモデルは、下記のとおりだ。

  • スコッチグレイン 916 DBR
  • ジャランスリワヤ 98317 CASTAGNA

素材・木型・製法の違いは?

スコッチグレインの土俵になるが、「素材」「木型」「製法(ディテール含む)」の観点で比較する。

素材はスコッチグレイン

素材という観点では、スコッチグレインに軍配があがる。

とくに、アッパーへのしわ入りのよさが、スコッチグレインは際立っている。また、トゥを磨いたときの仕上がりでも、光沢がでやすくて質感がよい。しかし、カラーによる違いはあるが、ダークブラウンには色抜けがある。エイジングといえなくもないが、2〜3年経つと、すっかりブラウンといった明るい色合いになっている。

ジャランスリワヤにおけるアッパーのしわ入りは、深く一箇所に集中している。これは、サイジングによるところが大きいのかもしれない。

木型はジャランスリワヤ

木型は足型との相性の問題でもある。しかし、一般的に指摘されていることから考えると、ジャランスリワヤの方が優れているかもしれない。

逆説的だが、スコッチグレインの木型は、かかとがゆるいと言われることが多い。その理由は、かかとのつくりが大きいか、中敷から履き口までの高さが低いかの、どちらかだろう。しかし、これも相性の問題はあるため、スコッチグレインの方が、かかとのおさまりがよい場合もあるはずだ。

製法はスコッチグレイン

ジャランスリワヤは、ハンドソーンウェルテッドという手間のかかる製法ではあるものの、それ自体はメリットになっていない。むしろ、ディテールの観点では不満がある。

ジャランスリワヤのソックライニングは、長さがインソールの半分までしかないハーフタイプだ。スコッチグレインも同じ仕様ではあるのだが、なぜかジャランスリワヤのソックライニングは、歩行中に剥がれてきてしまうという欠点がある。これは非常に不快で、リペアショップでカットしてもらったほどだ。

ソックライニングが剥がれてしまう原因は、足型との相性なのかもしれない。しかし、所有している2足のジャランスリワヤともに、同じ現象が発生した。このことから、これはソックライニングのつくりの甘さからきていると言えるかもしれない。

致命的ではないが、ジャランスリワヤのクォーターライニング(腰裏、かかとの内側のこと)についても、革が剥がれて靴下につくという欠点がある。ソックライニングの剥がれも含めて、靴内部の仕上げはいまいちだ。

最後に

総合的にみると、スコッチグレインの方が丁寧なつくりで仕上げられていると言える。しかし、ジャランスリワヤも決してわるい靴ではない。価格がスコッチグレインから2〜3割ほど安いということを考えると、購入の候補となることは間違いない。

ファッションとは、全体のバランスである。そのことは下記でも書いている。

とくに、靴に締まりがないと、どれだけよいスーツを着ていても、すべては台無しになってしまう。そういった意味では、スコッチグレインもジャランスリワヤも、どんなスーツ・セットアップに合わせても、遜色ない品質をもっている。

また、靴を購入する際は、試着をかならずすることだ。履きつづけてみなければ気づかないことも多いが、足型に合っていない靴では、履きつづけることもできない。試着をする際は、ふだん履いている靴下を履こう。靴下については、ホーズ以外に選択肢はない。