TOEICで860点を取ることは目標にはならないが指標の一つにはなる

TOEICの860点は誰にでも取れるわけではない。TOEICで860点を取っても英語は話せない。TOEICで860点を取ることは英会話のたしなみを示す。したがって、TOEICで860点を取ることは目標にはならないが指標の一つにはなる

TOEICの860点は誰にでも取れるわけではない

TOEICの問題形式を知らないとできない。時間内に全問題を解かなければならない。高得点は社会的に評価されることも多い。したがって、TOEICの860点は誰にでも取れるわけではない

TOEICの問題形式を知らないとできない

TOEICはリスニングとリーディングの二つのセクションに分かれているが、各セクションの問題形式はリスニング4種類とリーディング3種類の合計7種類があり、それぞれの問題形式を知っているかどうかで正答率が大きく変わる。

TOEICの問題形式を知らない状態で受験すると、ある程度英語が話せる人(例えば、帰国子女や海外駐在員など)であっても、TOEICスコアが900点に到達しないこともある。

リスニングセクションのPart1~4が「写真描写問題」「応答問題」「会話問題」「説明文問題」、リーディングセクションのPart5~7が「短文穴埋め問題」「長文穴埋め問題」「1つの文章、複数の文章」となっている。

例えば、Part1の写真描写問題は、写真の内容を説明している文章を選ぶだけだから直感的に解けるが、Part3の会話問題は会話内容を全て覚えておくことはできないから、会話が始まる前に選択肢を読み込むなどのテクニックが必要だ。

それから、テスト全体が英語のみで構成されていることや、解答がマークシート方式であること、合計2時間で200問を解くことなどにも慣れが必要になる。

時間内に全問題を解かなければならない

990点満点のTOEICで860点を取るには、全ての問題を90%の正答率で解くか、9割の問題を100%の正答率で解くか、それらの間を行き来することになる。しかし、現実的に860点を取る方法は、全ての問題を解いて正答率を上げることである。

リスニングセクションは45分で100問を解くが、流れる音声に沿って回答を進めていくしかない。それに対して、リーディングセクションは75分で100問を自分のペースで解いていくため、時間内に全問題を解ける人と解けない人が出てくる。

一つの問題に時間をかけると最後まで終わらないことは十分にあり得るし、この点においてリーディングセクションはリスニングセクションよりも難易度が高く、一般的にTOEICではリスニングのスコアは上がりやすいがリーディングのスコアは上がりにくい。

高得点は社会的に評価されることも多い

TOEICはそのスコアをコミュニケーション能力レベルとの相関5段階で評価していて、860点は最も高い評価レベルAに該当する。1

企業に就職するときもTOEICの860点は(ある程度は)英語ができるものと見なされることが多く、TOEICスコアを示すときにはケチの付きにくいスコアである。

それから、TOEICでは試験ごとに全受験者のスコア分布を公開しており、どの試験でもスコア区分845点〜で全受験者の上位10%になる。

TOEICで860点を取っても英語は話せない

TOEICではスピーキングとライティングは測れない。860点はリスニングとリーディングだけで取れる。TOEICは高得点なのに英会話ができない人は多い。したがって、TOEICで860点を取っても英語は話せない

TOEICではスピーキングとライティングは測れない

一般的に"TOEIC"といえば英語でインプットする力を測る"TOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC)"のことであり、TOEICの受験者は試験中にスピーキングとライティングを使わない。

TOEICは、1977年に始まってからその試験内で会話や作文能力が測れないことが課題としてあり、これを解決するために"TOEIC Speaking & Writing Tests(以下、TOEIC S&W)"が2007年から始まった。

TOEIC S&Wは、TOEICでは測ることができない英語でアウトプットする力を測るための試験である。ちなみに、TOEICがListening & Reading "Test"なのに対して、TOEIC S&WがSpeaking & Writing "Tests"と複数形になっている理由は不明だ。

860点はリスニングとリーディングだけで取れる

TOEICではスピーキングとライティングを使わないだけでなく、リスニングとリーディングの能力を測ることに特化した試験になっているため、リスニングとリーディングを鍛えるだけで高得点が取れてしまう。

実際、大学受験の延長としてTOEIC対策をするだけで(英会話や英作文をやらずに)860点を取ることはできる。大学受験で英語の基礎が身についていれば、問題形式に慣れてリーディングスピードを上げるだけで十分だ。

無論、問題形式に慣れることやリーディングスピードを上げるための努力は必要だ。しかし、TOEICで高得点を取るための「テクニック本」の数が多いのは、実力があればテクニックだけで高得点が取れてしまうことを示している(実力がないのにテクニックだけを身につけても意味はない)。

TOEICは高得点なのに英会話ができない人は多い

これらの問題から、TOEICで高得点を取ってから英会話を始めるものの、全く英会話ができないことにがくぜんとする人もいる。英会話ができればTOEICで高得点を取れるが、その逆は成り立たないからだ。

「TOEICは高得点なのに英会話ができない」ことをだしにしたオンライン英会話の宣伝は多く、そういった経験をする人が多いことを物語っている。

だから、TOEICは「TOEICでしかない」といわれ、英語学習の中の独立したプロセスになっている。つまり、TOEICからそれ以外の学習(英会話など)に滑らかに接続されていないのだ。

TOEICで860点を取ることは英会話のたしなみを示す

TOEICで860点が取れる人は基礎ができている。TOEICのスコアが上がる人には伸びしろがある。スピーキングやライティングでTOEICスコアも上がる。したがって、TOEICで860点を取ることは英会話のたしなみを示す

TOEICで860点が取れる人は基礎ができている

英会話ができる、できないといった面でTOEICの860点には賛否両論があるが、リスニングとリーディングの力を測る試験としてのTOEICはよくできていて、860点は最低限の単語や文法といった基礎能力があることを保証している。

実際、これらの基礎能力をしっかりと勉強していると思われる語学・文学系(英語専攻)の大学生でも、TOEICの平均スコアは558点だ。2

TOEICはリスニングとリーディングの力を測ることに特化した試験であり、それらの能力を合計7種類の問題形式で多面的に測っている。どれだけ小手先のテクニックを知っていても、基礎ができていなければ高得点は取れない。

TOEICのスコアが上がる人には伸びしろがある

英語学習は積み重ねが大切でありTOEICスコアを上げることもその例に漏れない。だから、TOEICスコアを上げて860点が取れるようになった人は、英会話ができるようになるためコツコツと積み重ねができる人だ。

TOEICは大学受験の延長としてTOEIC対策のテクニックを身につければ高得点が取れると言ったが、そのテクニックだって一朝一夕で身につくものではない。

TOEICの問題形式に慣れるまでには何度もTOEIC公式問題集を解くなりしなければならないし、リーディングスピードを上げるには日々の読書習慣(多読)が欠かせない。

TOEIC向けの教材はたくさん出ているが、基礎は基礎として身につけたら、公式問題集のリスニングセクションを何度も聞いて、リーディングセクションの長文を多読することが学習方法の鉄板だ。

公式TOEIC Listening & Reading 問題集 8

公式TOEIC Listening & Reading 問題集 8

  • 作者:ETS
  • 国際ビジネスコミュニケーション協会
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スピーキングやライティングでTOEICスコアも上がる

TOEICで860点を取る人が英語を話せるようになるよりも、英語を話せる人がTOEICで860点を取れるようになる方が簡単だ。つまり、スピーキングやライティングを伸ばすことでTOEICスコアを上げることもできる。

例えば、スピーキングの勉強をしていてその回答例から学ぶにはリスニングができないといけないし、ライティングも同様にリーディングができないといけない。これはスピーキングやライティングには最低限のリスニングやリーディングの力が必要なことを示している。

それならTOEIC対策に一点集中するよりも、TOEIC対策と並行して英会話なり英文添削なりで英語の四技能全てを伸ばした方がいい結果になるだろう。