ビジネスソックスが「薄い」のはなぜなのか?

ビジネスソックスが薄くつくられている理由はあるのか?薄手が好まれた結果なのか?薄手にしなければならない要因があったのか?このような疑問に答えるべく、ビジネスソックスの「薄さ」についてまとめる。

合理性と伝統から薄くつくられるが必要条件ではない

はじめに、ビジネスソックスというものを定義しておきたい。「ビジネスソックス」とは、その名前のとおり、ビジネスシーンで着用するソックスのことだ。

日本のビジネスシーンでは、長さがふくはらぎ辺りまでしかない「ドレスソックス」が着用されることも多い。しかしながら、一般的にビジネスで着用するソックスは、「ロングホーズ」であるべきだ。

なぜなら、肌を露出させないためには、ロングホーズのようにふくらはぎを完全におおうことができる長さが必要であるためだ。この長さによって、ソックスがずり落ちたりすることはなくなる。

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それでは、なぜロングホーズに代表されるビジネスソックスは、薄くつくられているのかということを考える。そうすると、合理性と伝統から薄くつくられることが多いが、それは必要条件ではないということが分かる。その理由は下記のとおりだ。

  • 合理性から薄くなった
  • 伝統の慣習も関係する
  • 現代の必要条件ではない

合理性から薄くなった

「足」は熱をもちやすいため、すべてのソックスに通気性が求められることから、ビジネスソックスが薄くつくられることは合理的である。また、ビジネスソックスは長時間着用することも多いため、スポーツソックスよりもその機能が強く求められる。さらには、ふたつの「カワ」に挟まれる状況も、考慮されてしかるべきだ。

「足」は熱をもちやすい

そもそも、ソックスとは「足」をおおう下着である。体のパーツのなかでも、「足」は熱をもちやすいという特徴がある。すなわち、ソックスには「通気性」という機能が必要であるということだ。通気性確保の最適解は、ソックスを「薄く」つくることである。

足は第二の心臓ともいわれている。足には、重力によって上から下へ流れる血液を、筋肉の力で下から上へ押しもどす「ポンプ」のような機能がある。この血液循環機能によって、健康状態の足は頭部よりも高温で発汗することが多い。

つまり、「ビジネスソックス」に限定しなくても、いずれのソックスもある程度の通気性はもっているべきなのである。通気性がないと、高温になった足が発汗することで、「むれ」や「むくみ」が発生する。

ちなみに、足が血液を循環させる機能が弱いと、いわゆる、「冷え性」といった症状になる。冷え性の対策には、厚手のソックスで足を温めるという方法があるが、ビジネスソックスでは逆効果となる可能性がある。

なぜなら、冷え性の根本的な原因には、足の筋肉が十分に発達していないこと以外に、下着の締めつけによる血流の悪化という可能性もあるからだ。

つまり、ソックスに「厚手であること」と「ビジネスのきっちりした着こなし」を求めると、厚手で重量があるため、締めつけを強くしてずり落ちしないソックスが必要となり、血液の循環には悪影響になるということだ。

長時間着用になりやすい

ただでさえ通気性が求められるソックスだが、ビジネスソックスにはより一層の通気性が必要である。なぜなら、ビジネスソックスは長時間着用することが多いからだ。

仕事をしていれば、ソックスを1日に10時間以上履きつづけることもめずらしくない。長時間着用すればするほど、熱や水がソックス内に滞留しやすくなる。

つまり、厚手で通気性が十分に確保できていないビジネスソックスは、長時間着用することによる不快感が高まるということだ。

スポーツソックスが厚手につくられる理由は、運動による摩擦や振動を軽減することや、耐久性といったことが優先的に考えられているためだ。

しかしながら、スポーツソックスはビジネスソックスのように、10時間以上履きつづけることはほとんどない。だからこそ、スポーツソックスは厚手につくることができるともいえる。

「皮」と「革」に挟まれる

また、ビジネスソックスは熱をもちやすい「足」を、「長時間」おおうだけでなく、ふたつの「カワ」に挟まれていることも考慮しなくてはならない。すなわち、「皮」と「革」である。

ビジネスシーンでは、革靴を着用することが一般的だ。革靴はスポーツシューズよりも、通気性という機能では劣っている。これもまた、ビジネスソックスが薄くつくられるべき理由となっている。

人の皮、つまり、「皮膚」が熱を外へ排出できるように、革靴の「皮革」にも通気性はある。しかしながら、皮革の通気性は、綿や麻などの天然繊維よりも低い。

そのため、少しでも効率的に革靴内の熱を外へ逃すためには、足から排出された熱をソックスに留めることなく、素早く革靴の皮革をとおして外へ逃してやる必要がある。

さらには、足と革靴のフィッティングという観点でも、ソックスが通気性だけなく、単に「薄く」つくられていることは都合がよい。足と革靴のギャップが少なければ少ないほど、足だけでなく「脚」全体への負担が少なくなるからだ。

伝統の慣習も関係する

下着であるソックスには、伝統的に「綿」が使用されるため、「薄手」になる傾向がある。また、合成繊維でビジネスソックスをつくるときは、伝統的な薄さのソックスを、新しい素材で再現することが重要になっている。

下着といえば「綿」である

ビジネスソックスが薄くつくられているのは、伝統的に「綿」でつくられることが多いことも関係している。

近年は合成繊維の開発が進んだことで、ソックスが綿だけでなく、ナイロンなどの合成繊維を混紡してつくられることも多い。しかしながら、スーツの下着には綿をつかうことが伝統である。

下着に綿をつかう理由は、綿という素材における「肌ざわり」のよさと「吸水性」にある。つまり、快適性と機能性の両立ができる素材が、「綿」であるということだ。

綿100%で厚手の生地をつくることもできるが、ウールなどほかの天然繊維とくらべれば、綿は薄手につくりやすいという特長がある。

いいかえれば、綿は薄手であっても、ウールなどより耐久性に優れているということだ。着用したら必ず洗濯が必要なソックスのような下着には、ある程度の耐久性も必要である。

また、前述したとおり、足と革靴のギャップを少なくするため、ビジネスソックスは薄くつくられるべきである。そして、ビジネスソックスを薄くつくるためには、綿という素材をつかうことが合理的であるともいえる。

「合成繊維」も綿に似せる

さらに、ナイロン混紡のビジネスソックスも、ベンチマークにしているのは伝統的な綿でつくられたソックスである。

結局のところ、長い時間をかけて完成された服装の「かたち」が、大きく変わることはまれだ。そのため、合成繊維でつくられたビジネスソックスであっても、一見すると綿でつくられたソックスと相違ない。

むしろ、綿でつくられた薄手のソックスを、ナイロンとの混紡でいかに再現するか?ということが、論点のひとつにすらなっている。

「かたち」は変えず、現代の技術で過去の技術を再現する、模倣するということは、「服装」という分野では一般的な方法である。

つまり、「ビジネスソックスは薄い」という前提(伝統)が先にあって、現代的な素材でその前提に見合う製品をつくっているということだ。

また、綿のもつ「肌ざわり」のよさや「吸水性」といった特長を、合成繊維にもたせるためにはどうするか?というのも、素材を開発する側にとっては課題のひとつとなっている。

現代の必要条件ではない

ビジネスソックスを薄くつくることは、合理的であり伝統でもある。しかしながら、ビジネスソックスが薄いことは、現代の着こなしにおける必要条件ではない。

クラシックなスーツの着こなしにおいて、薄手の下着が好まれることは事実だ。しかし、技術や価値観の変化によって、着こなしの「あるべき姿」も変わってきている。

たとえば、ソックスと同じ下着である「シャツ」も、本来は綿でつくられることが一般的であった。しかし、形状安定性という機能を付加するかわりに、綿とポリエステルの混紡という選択肢が主流になりつつある。

ソックスには、シャツのような「形状安定性」は要求されていない。ところが、ナイロンなどの合成繊維を混紡することで、耐久性を上げることや、コストを下げることができるようになった。

つまり、厚手であっても、ビジネスソックスに強く要求される「通気性」を確保することができれば、大きくデザインに影響しない程度では、ビジネスソックスが厚くなることもあり得るということだ。

「厚手」のビジネスソックスでもいいのか?

ビジネスソックスが「薄い」ことには、しっかりとした理由があった。しかしながら、現代では「薄い」ことが必要条件にはなっていない。

それでは、ビジネスソックスは厚手でもいいのか?というと、実際には機能だけでなく見栄えという観点からも、おすすめはできない。

やはり、厚手で素材感(存在感)があるソックスというのは、スーツスタイルには合わないからだ。下着はあくまでも「下着」であり、それ自体が主張するべきではない。

また、そもそも、「ロングホーズ」であれば、製品ごとに「薄さ」の違いがあるとはいっても、極端に厚手のロングホーズは存在しないといえるだろう。

ロングホーズの知名度は、日本ではまだまだ十分とはいえない。したがって、作り手側も、市場のスケールよりロングホーズとしての「意味」を重視して販売している。

そのため、売られているロングホーズのほとんどは、伝統的な「薄さ」でつくられていることが多い。「服装」においては、機能と同じだけ「意味」が重視されているということだ。

「意味」を重視しなくなったときは、「スーツ」というもの自体の存在価値が、ふたたび見なおされることになるだろう。機能だけを求めれば、スーツに合理性はほとんどないからだ。

アルタクラッセで手袋をオーダーするべきか?

毎年手にぴったりとあう革手袋がほしいと思いつつも、時期を逃してしまう。今年こそは、と思い調べていたところ、「アルタクラッセ」というブランドをみつけた。今回はこのアルタクラッセのオーダー手袋についてまとめる。

アルタクラッセで手袋のオーダーはすべきではない

オーダー手袋の価格相場は分からないが、スーツのフルオーダーが20万円前後から買えることを考えると、採寸や原材料のコストが低いオーダー手袋の価格は、2万円台が期待するところだ。

「既製品」ではなく「オーダー」にこだわる理由は、手袋が体型の変化の影響を受けづらいことや、革手袋になるといっそうフィット感が求められることにある。

皮革製品は、手入れをしっかりとすれば長持ちするのも特長である。体型の変化で着用できなくなるリスクが少ないこともあり、数年、数十年と使用できるいい製品に出会いたいものだ。

しかしながら、さまざまな観点からアルタクラッセのオーダー手袋を検討した結果、アルタクラッセで手袋のオーダーはするべきではないという結論になった。その理由は下記のとおりである。

  • アルタクラッセのよさが分からない
  • 実態は販促に力を入れている小売だ
  • 型紙から起こしたほうがよいはずだ

アルタクラッセのよさが分からない

アルタクラッセのオーダー手袋は、「モノ」としてのよさが全く分からない。また、市場の評価にリーチすることもできない。ただひとつ分かることは、ブランドとして「高級路線」を目指しているということだけだ。

「モノ」のよさが分からない

アルタクラッセのウェブサイトをみていても、オーダー手袋の「モノ」としてのよさが全く伝わってこない。

アルタクラッセのオーダー手袋は、デザイン、生地、サイズなどをカスタイマイズできる「su misura」という名前のようだ。su misuraのほかには、手袋の「既製品」も取り扱っているのだが、「su misura」と「既製品」の違いが分からない。

そもそも、製造に関する情報がほとんどない。ここから判断できることは、製造に関しては完全な外注になるのであろうということだ。自社で製造設備を持っていれば、また、モノづくりのこだわりがあれば、その点をアピールしない理由はないからだ。

市場の評価にリーチできない

また、別の角度から「su misura」のよさを調べてみようとしても、市場の評価、すなわち、ユーザーレビューにリーチすることができない。

そのひとつの理由として、販売プロモーションが強すぎることがある。実際に、「アルタクラッセ 手袋」で検索してみても、ヒットするのは販売サイトばかりだ。販促に力を入れすぎてしまっているのか、使用しているユーザーが少ないのかは分からない。

いずれにしても、ウェブサイトで「モノ」のよさが分からないだけでなく、市場の評価にリーチすることもできなければ、アルタクラッセの手袋のよさは、分からないままで終わってしまう。

ちなみに、オーダー手袋では比較的知名度が高いと思われる「ブロッサム」は、「ブロッサム 手袋」で検索すると、容易に個人ブログへリーチすることができた。

高級であることだけが分かる

「モノ」のよさが分からなくても、信頼できるブランドであれば検討することはできる。それがブランドの価値だ。しかし、アルタクラッセのブランド価値で分かったことは、高価格帯にポジショニングしている(らしい)ことだけだった。

アルタクラッセのコンセプトには

「最高級、高貴、ハイデザイン」を兼ね備えた手袋の老舗専門店。

という表現がある。ここから推察できることは、高価格帯でモダン(傾向)な製品を販売しているということだ。「モダン」はその時代のトレンドを反映させるため大量生産との相性がわるく、一般的に高価格になる。

アルタクラッセの「既製品」手袋は、1.5万円前後からのようだ。「su misura」の価格がウェブサイトからは分からないのだが、「既製品」よりは高価であると考えれば、2万円からといったことが推測できる。

当初想定していた価格レンジには収まっているものの、やはり、「モノ」のよさが分からない以上は、2万円の博打といわざるを得ない。

実態は販促に力を入れている小売だ

アルタクラッセがモノづくりをしているとは考えられない。モノをつくっていないからには、「製造」小売にもなり得ない。結局のところ、アルタクラッセは販促と販売に特化した小売である。

モノづくりはしていない

前述したとおり、顧客の視点で「モノ」のよさが分かる工夫をしていないことから、アルタクラッセ自体はモノづくりをしていないと思われる。

顧客が服装をオーダーするときに知りたいことは、素材の豊富さや他人の評価ではない。仕立て屋の技術力や、得意とするデザイン、特長こそを知りたいと思う。

しかし、アルタクラッセはこれらの情報、とくに、前者の「技術力」といったことを、客観的に評価する仕組みをあたえていない。

モノづくりにおいて競合との差別化をはかるには、顧客が客観的に評価できる仕組みをあたえないかぎり、競合と同じ土俵に上がることすらできない。

製造小売(SPA)でもない

また、製造小売(SPA)でもなさそうだ。バリューチェーンの流れを考えると、オーダースーツやオーダー手袋の「仕立て屋」も製造小売に近いが、モノづくりをしていないのであれば、「製造」小売にはならない。

アパレル業界を価格帯で分解すると、下記のようになる。下にいくほど価格は高くなる。

  1. 企画から製造、販売までを請け負う製造小売業(SPA)
  2. おもに販促や販売に力を入れる(PB展開あり)小売業(セレクトショップなど)
  3. 歴史や技術力、認知度はまちまちの製造業(ブランド)
  4. 歴史があり認知度も高い製造業(ラグジュアリーブランド)

1のSPAが台頭したことで、2は1のようにコストメリットをだすか、PB展開を進めて差別化をする。また、3と4は差別化することでオリジナリティをだすというのが、生き残るための選択肢だ。

アルタクラッセは、このなかでは2に近い。「仕立て屋」がVC上では1に近いといったが、同じ代金を支払うのであれば、2よりもサイズ感や生地がよいものをつくれそうなので、間違ってはいないだろう。

販促と販売に特化した小売だ

これまでの事実と推測をまとめると、アルタクラッセは販促と販売に特化した小売であるといえる。

コンセプトにある「手袋専門店」という表現は間違っていなかった。小売であれば「専門店」という表現に違和感はない。

しかしながら、商品の「魅力」を詳細に伝えきれていないことからも、「バイヤー」というよりは「マーチャンダイザー」としての機能が強くでている。

「仕入れ」に対するこだわりよりも、仕入れたモノをいかにして「売り上げる」か、または、その手段としてどのように「プロモーションする」か、といったことが目立っている。

競合が少ない商売や、圧倒的なプレゼンスがあれば通用する手法だが、アパレルのようにプレイヤーが多い場合には通用しないだろう。

型紙から起こしたほうがよいはずだ

アルタクラッセの「su misura」は「パターンオーダー」であるが、パターンオーダーでは「既製品」とあまり変わらない。オーダー手袋では、オンライン「フルオーダー」もめずらくしくない。

パターンオーダーには疑問が残る

アルタクラッセの「su misura」で気になっていたことは、su misuraが「パターンオーダー」であることだ。

スーツであっても「オーダー」の定義はあいまいになってきているが、一般的に「パターンオーダー」というと、「既製品」をベースにサイズ調整したものといったところだ。

ちなみに、「イージーオーダー」は既にある型紙をベースにサイズ調整していくものであり、「フルオーダー 」は型紙からつくっていくものだ。

さて、その「パターンオーダー」であるが、実際の採寸は

  • 中指の長さ
  • 手の円周

を測り、類似するサイズを選ぶというものである。しかしながら、指の長さというものは人によって違いがある。また、左右によっても差はあるだろう。つまり、パターン化されたサイズから選ぶのはむずかしいのではないだろうか。

とくに、手は触覚としての機能が優れていることから、指さきの「あまり」などには違和感を覚えやすい。伸縮性がある素材(天然繊維や化学繊維など)であれば気にすることは少ないが、伸縮性にとぼしい皮革製品であれば気になるところだ。

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オンライン「フルオーダー」もある

また、昨今は「フルオーダー」のオーダー手袋であっても、オンラインで発注できるところがいくつかあるようだ。

手袋の採寸はスーツなどとくらべれば平面的であり、採寸しなければならないポイントも少ない。平面上の「大きさ」と立体的な「厚み」が分かれば、「手型」はつくることができる。

スーツは、体全体のふちをなぞり「型」をつくるわけにもいかないため、型紙をつくるにも時間がかかる。しかし、手は実際に手のふちをなぞるだけで「手型」の半分はできあがる。

したがって、顧客が自宅で平面的な「手型」をつくり、立体的にする情報を仕立て屋に伝えれば、あとは、プロフェッショナルが立体的な「手型」をつくってくれるというわけだ。

「既製品」ではダメなのか?

はじめから「オーダー」手袋にこだわって話を進めているが、「既製品」ではダメなのか?というと、そういうわけではない。

たとえば、「デンツ」のように、既製品でも有名な手袋ブランドはいくつかあり、そのファンも多い。あくまでも、「オーダー」から選ぶのは個人の「こだわり」である。

しかしながら、前述したとおり指の長さは人によって異なる。これまでに、「既製品」では指さきの「あまり」が気になるなどの経験があれば、一度「オーダー」手袋を検討してみるのがいいだろう。

リーガルとスコッチグレインどちらを買うか?

リーガルもスコッチグレインも、はじめて買うしっかりとした革靴にはおすすめできる。しかしながら、2社が取っている戦略はまったく異なるものである。今回はリーガルとスコッチグレインについてまとめる。

はじめての革靴はリーガルよりもスコッチグレインを買うべきだ

リーガルとスコッチグレインを比較するにあたり、実際に所有している(していた)革靴を具体例としてあつかう。いずれも、「グッドイヤーウェルト製法」でつくられた、「ストレートチップ」の代表的なモデルだ。

  • リーガル 01DRCD ブラック
  • スコッチグレイン 916 ダークブラウン

着眼点としては、実際に使用したなかでの「気づき」と、企業「戦略」の違いという観点で評価した。さらに、本題からは逸れるが、同価格帯では有名なジャランスリワヤについても、さいごに比較している。

気づきは、適当ではないかもしれないが、QCD(=Quality, Cost, Delivery 品質、価格、納期)を枠組みとしてつかった。このうち、納期は拡大解釈して「入手難易度」としている。

これらから、はじめてグッドイヤーウェルテッドの革靴を買うなら、リーガルよりもスコッチグレインをおすすめするという結論になった。その理由は下記のとおりである。

  • スコッチグレインはQCDに優れている
  • リーガルは中庸でこだわりが少ない
  • ジャランスリワヤは価格の優位性がある

スコッチグレインはQCDに優れている

スコッチグレインが使用する「革」は、スコッチグレインが公言するとおり上質な革である。また、スコッチグレインの耐久力を上げるための工夫は、革靴を長持ちさせるなど、ランニングコストを下げることにもつながりそうだ。さらに、リーガルとスコッチグレインのあいだには、アクセシビリティの差はほとんどない。

スコッチグレインは革にこだわる

スコッチグレインは革にこだわっていることを公言しているだけでなく、実際の革靴から革質のよさを感じることができる。

所有している(していた)01DRCDと916とでは、ブラックとダークブラウンというカラーの違いはあるものの、アッパーの質感は916のようが優れていると感じた。具体的には、916のほうが光沢がでやすいといった印象である。

アッパーの光沢自体が革の品質を決めるものではないが、靴全体に高級感をだす「顔」であることは間違いない。また、革の光沢は「原材料品質」と「後処理」の掛け算であるため、しっかりと仕上げられているともいえる。

ちなみに、01DRCDと916のいずれも、アッパーにはアノネイの「ベガノ」というアニリンカーフを使用している。しかしながら、ベガノのなかでも品質に「ばらつき」はあるはずである。

つまり、916のほうが光沢がでやすいということは、スコッチグレインはリーガルと同じグレードの革を使用していても、より品質が高い革を厳選しているとも考えることができる。

スコッチグレインは長持ちする

また、スコッチグレインの革靴には耐久力を上げる工夫がされていて、リーガルよりも「長持ち」することが予想できる。したがって、中長期的なランニングコストでは、スコッチグレインに分がありそうだ。

01DRCDと916のいずれも、グッドイヤーウェルト製法でつくられている。つまり、ソールを張り替えることで、どちらの靴も数年、数十年と履きつづけることができる。

しかし、916には細かな配慮がなされている。たとえば、ソールの「つま先」がラバーチップで補強されている。このようにすることで、履きはじめのソールの返りがわるいときでも、つま先の「すり減り」を軽減することができる。

また、前述したとおり、916は01DRCDよりもアッパーの光沢がでやすい。そのため、日々のメンテナンスにかかる時間的なコストも、916のほうが少なくて済むといえる。

ただし、916のダークブラウンは、カラーが抜けやすいとも感じる。数年もすると、すっかりブラウン、ライトブラウンといった印象になった。

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スコッチグレインは手に入りやすい

「リーガル」「スコッチグレイン」というブランドネームでは、リーガルのほうが有名かもしれない。しかしながら、スコッチグレインもリーガルと同じくらいアクセシビリティは高い。

まず、リーガルがスコッチグレインよりもブランドとして有名な理由は、「店舗数」の多さに比例するところがある。直営店の数では、リーガルが圧倒的に多い。しかし、実際に革靴を買うシチュエーションを考えると、店舗数の差による影響は小さいものと考えられる。

なぜなら、リーガルとスコッチグレインで迷っているとき、リーガルを取り扱う百貨店、量販店に行けば、たいていはスコッチグレインも取り扱っているからだ。

また、リーガルの直営店は市街地に出店していることが多い。つまり、リーガル直営店に行くことがあっても、少し足を伸ばせば、スコッチグレインを取り扱う百貨店や量販店に行くこともできる。

さらには、アマゾンでも革靴の試着サービス「プライム・ワードローブ」 がある。プライム会員は無料で利用することができるため、よりいっそう店舗数の差はなくなってきているといえる。

リーガルは中庸でこだわりが少ない

リーガルはターゲットが広いため、「革靴選び」で定番下してしまったことによる弊害がある。いっぽうで、スコッチグレイン は「こだわり」をアピールすることにより、革靴市場における差別化に成功した。

リーガルはターゲットが広い

リーガルがターゲットにしている顧客層は広い。そのため、リーガルの認知度は高く、はじめてしっかりとした革靴を買うときの定番になっているが、いくつかのデメリットもある。

まず、リーガルはドレスシューズからカジュアルシューズまでを展開しており、それぞれに紳士靴と婦人靴がある。さらには、価格も低価格帯から高価格帯までを「リーガル」として展開している。

このように、ターゲットを広げて認知度が上がることによって

  • ファッションとしての没個性化
  • 没個性化による他者とのかぶり

といった弊害がうまれる。つまり、「リーガル」というブランドでは、「高級」というラベンリングができなくなってしまった。

実際に、リーガルには「シェットランドフォックス」という、より高価格帯に限定した革靴のブランドがある。これは、トヨタが北米で高級車を展開するため、「レクサス」というブランドを展開したことと同じだ。

革靴にある程度のこだわりをもつ「市場」自体が、どちらかといえばニッチな市場である。このなかで他社との競争を勝ち抜くためには、コストリーダーシップ戦略による「スケール」を活かした価格競争へ持ち込むか、差別化戦略による「こだわり」に特化したブランド価値の向上をするしかない。

つまり、リーガルは前者を選択し、「リーガル」というブランドをより大衆向けに拡大したということだ。

スコッチグレインはニッチだ

いっぽうで、スコッチグレインの戦略は「差別化」にある。革の「質」や靴の「製法」といった「こだわり」をアピールすることで、ニッチな顧客層を確実に取りにいっている。

日本の革靴市場でトップを走ってきたリーガルに対して、後発であるスコッチグレインは、差別化という戦略を取らざるを得なかったともいえる。

しかし、服装のカジュアル化や人口減少による市場の縮小によって、「スケール」よりも「こだわり」を活かした戦略のほうが、需要者側の反応がよく、スコッチグレインにとっては追い風になったものと思われる。

だが、この先の将来を考えると、サプライチェーンのグローバル化やオンラインショッピングの発達により、対「リーガル」だけでなく、対「輸入靴」も考慮しなくてはならない。

経済産業省によると、2012〜13年以降では、革靴の輸入額が国内生産額よりも多い状況が続いている。安価な革靴が大量に輸入されているとも考えられるが、なんらかのアクションは必要だと思われる。

ジャランスリワヤは価格の優位性がある

リーガルとスコッチグレインのほかでは、「ジャランスリワヤ」も比較の対象になることが多い。ジャランスリワヤの特長は、価格の優位性にある。

ジャランスリワヤは、リーガルとスコッチグレインの中間に位置するブランドだと考える。リーガルは前述したとおり、「高級」というポジションを取ることがむずかしい。いっぽうで、スコッチグレインはリーガル「よりも」高級なポジションに近い。

ジャランスリワヤの革靴は、「ハンドソーンウェルト製法」でつくられるというこだわりを持ちながらも、その価格は2万円台からと低価格である。この絶妙なバランス感覚が、リーガルとスコッチグレインの中間というポジショニングの評価になった。

いいかえれば、少し中途半端な印象もある。少しだけ価格を上乗せすれば、スコッチグレインを買うことができる。リーガルとジャランスリワヤの比較はむずかしいところであるが、品質はリーガルのほうが安定していると感じる。

リーガルはダメなのか?

リーガルとスコッチグレインの比較では、スコッチグレインを買うべきだという結論になった。しかしながら、「リーガル」というブランドはもうダメなのだろうか?

安定した品質を保っている

相対的な比較では、スコッチグレインの魅力に光るところが多い。しかし、リーガルはけっして粗悪な革靴を製造、販売しているわけではない。

製造する革靴は、日本を代表する革靴メーカーとして、安定した品質であるといえるだろう。ただ、ユーザー視点での「魅力」を、製品に反映できていないだけだ。

たとえば、「原材料品質」や「後処理」といった、スコッチグレインが意識しておこなっていることである。スコッチグレインは、自社製品の魅力を具体的に言語化できているところが、大きな強みになっている。

価格競争より差別化すべきだ

残念ながら、数千円で買える安価な革靴に対して、価格で競争することはできない。グッドイヤーウェルト製法により、ソールを張り替えながら長く履きつづけたとしても、コストでは勝負にならないからだ。

したがって、ユーザーに刺さるなんらかの「こだわり」をもって、付加価値をつけていかなければならない。リーガルには、その技術力や販売力があるはずだ。ある意味では、マーケティングの強化ともいえる。

また、そもそもドレスシューズとしての革靴需要者の年齢層が、比較的高くなりつつあるともいえるかもしれない。いまの20代や30代の多くは、ユニクロなどのファストファッションがあたりまえの世代であり、服装のカジュアル化の影響も強く受けているからだ。

こうなってくると、よりいっそう「差別化」による高価格帯でのポジショニングが、リーガルにとっては重要になると考える。

「太れるプロテイン」には価値があるのか?

「太れるプロテイン」というキーワードがあるということは、プロテインを飲むことで「太りたい」層がいるということだ。今回は太れるプロテイン、通称、「ウェイトゲイナー」や、太るための効率的な方法についてまとめる。

太るなら「太れるプロテイン」よりも効率的な方法を選択するべきだ

プロテインには、ホエイやカゼインといった「原材料」の違いや、さまざまな「フレーバー」など、豊富な種類がある。さらには、「目的」によってプロテインを分けることもできる。

たとえば、プロテインを飲む目的のひとつとして、「太る」ということがある。しかしながら、太るといっても、太ること自体が目的になるのはおかしい。つまり、「太る」とは、なにを増やすということなのか?を、しっかりと考えなくてはならない。

この「なにを増やすのか?」という問いは、太りたいと考えた「背景」や、その「ゴール」から考える。競技選手のように「筋肉」を増やしたいのか、体型の好みとして「体脂肪」を増やしたいのかといったことだ。

いずれにしても、「太る」という目的を達成するために「太れるプロテイン」を買うくらいであれば、より効率的な方法を選択するべきだと考える。その理由は下記のとおりだ。

  • 「太れるプロテイン」は存在する
  • プロテインは太るためのものではない
  • 太りたければ効率的な方法がある

「太れるプロテイン」は存在する

「太る」原則はひとつであり、どのようなプロテインでも飲み過ぎれば太る。太るためのプロテイン「ウェイトゲイナー」であっても、この原則にしたがい「太る」か「痩せる」かが決まる。

飲み過ぎれば太る

どのような目的でプロテインを飲むにしても、プロテインを飲み過ぎれば当然のように太る。

「太る」のか「痩せる」のかを決めている原則は、摂取カロリーと消費カロリーのバランスである。仮に、食べものを食べずにプロテインしか飲んでいなくても、プロテインからの摂取カロリーが消費カロリーよりも多ければ、飲んだプロテインは筋肉だけでなく体脂肪にもなりえる。

人がプロテインからたんぱく質を体内に取り込むと、たんぱく質は時間をかけてアミノ酸に分解される。アミノ酸は筋肉などの細胞の再合成に使用されるが、合成が促進されていなければ、体内は「たんぱく質あまり」の状態になる。結果として、「あまった」たんぱく質は体脂肪として体に蓄積されるという仕組みだ。

プロテインとは、その名前のとおり「たんぱく質」である。たんぱく質は体のなかで1gあたり4kcalのエネルギーになる。つまり、1回24gを摂取すると、脂質や炭水化物が若干含まれていることもあり、約100kcalものエネルギーになる。

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太るためのものもある

また、体重の増加を意識した太るためのプロテイン、通称、「ウェイトゲイナー」系プロテインもある。しかし、「太る」ための原則は変わらない。

つまり、ウェイトゲイナーを飲んだところで、摂取カロリーが消費カロリーよりも多くなければ太ることはない。ウェイトゲイナーは通常のプロテインよりも太り「やすい」プロテインであるということだ。

ここで、ウェイトゲイナーとは、プロテインに「マルトデキストリン」を配合した商品のことである。マルトデキストリンは糖質であり、体内ではたんぱく質と同じ1gあたり4kcalのエネルギーになる。

また、マルトデキストリンはグルコースをいくつか結合したものであるため、甘さが控えめである。したがって、マルトデキストリンはグルコースより一度に多くの量を摂取することができる。

つまり、糖質をたんぱく質と同時に摂取することでカロリーを増やすことが、ウエイトゲイナーの狙いだ。しかしながら、「プロテイン」として一度に摂取する量が変わらなければ、たんぱく質が減り糖質が増えるだけで、摂取カロリーの増加は期待できない。たんぱく質も糖質も体内でのエネルギー量は同じため、どちらかがより太り「やすい」ということはないからだ。

プロテインは太るためのものではない

プロテインは「太る」ことを目的としたサプリメントではない。また、「太る」ことが目的であっても、「体脂肪」の増加ではなく「筋肉」の増加によって太りたいはずだ。したがって、プロテインは「筋肉」を増やすためにあるべきだ。

目的は「太る」ことではない

プロテインで太ることはできる。また、太りやすいプロテインもある。しかしながら、プロテインを飲む目的は「太る」ことではないはずだ。

プロテインを飲む目的は、筋肉の「材料」として、適当な量のたんぱく質を確保することだ。筋肉を再合成するにはたんぱく質が必要なため、食事だけでは補えないたんぱく質を「サプリメント(補填)する」ということである。

筋肉が増えることで体重も増えるが、体重が増えることはあくまで筋肉が増えることによる「副産物」である。また、筋肉を増やすために「若干の」体脂肪が増えることを許容した結果でもある。この因果関係はとても大切なことだ。

「体脂肪」を増やすなら簡単だ

因果関係を取り違えて「太る」ことが目的になると、おそらく望んだ結果にはならない。たとえば、「体脂肪」を増やしたいだけなら簡単にできる。

「太る」ための原則は前述したとおりだ。摂取するカロリーが消費するカロリーよりも多ければかならず太る。しかし、ただ摂取カロリーを増やしただけでは、太るのは「筋肉」の増加によってではなく、「体脂肪」の増加によってだ。

たんぱく質であれ糖質であれ、消費カロリーから「あまった」エネルギーは、体脂肪として体内に蓄積される。そのように考えると、体内でのエネルギー量がもっとも高い「脂質」を多くとれば、簡単に「体脂肪」を増やすことができるというわけだ。

「筋肉」を増やすことが目的だ

結局のところ、プロテインを飲むのは「筋肉」を増やすためだ。「太りたい」と思うなら、その欲求の背景にあるものを考えなくてはならない。

「体脂肪」を増やすことで「太りたい」と思う人はいない。プロテインは「筋肉」を増やすためにあるのであって、単純に「太る」という目的のためにあるのではない。「太る」のは、「筋肉」を増やした結果である。

したがって、目的に沿った適当なサプリメンテーションが、もっとも効率的な方法であるということだ。摂取カロリーを消費カロリーよりも増やしたいがためにウェイトゲイナーを飲むことは、効率的な方法ではない。

「太れるプロテイン」は一石二鳥のように思われるが、実際は「筋肉を増やすこと」と「太ること」は因果関係にあるのであって、並列した目的にはなりえない。つまり、アウトプットは「二鳥」ではない。

太りたければ効率的な方法がある

ウェイトゲイナーには、摂取カロリーに占めるPFCバランスを微調整できないという欠点がある。ウェイトゲイナーにも配合されている「マルトデキストリン」だけを購入すれば、この問題は解決する。

ウェイトゲイナーは微調整できない

太るための方法としてウェイトゲイナーをおすすめしない理由は、PFCの微調整ができないからである。

ウェイトゲイナーは、「プロテイン」と「マルトデキストリン」を主成分として配合したものだ。これらを同時に摂取するメリットはあるものの、PFCバランスという観点で考えると、ひとつの商品に配合されているメリットはあまりない。

なぜなら、適当なPFCバランスで摂取カロリーを設定しているときには、「たんぱく質」だけを摂取したいときや、「糖質」だけを摂取したいときがあるからだ。

たとえば、就寝前にはたんぱく質を摂取しておきたいが、エネルギーを消費しなければ糖質を摂取する必要はない。また、トレーニング前やトレーニング中には、糖質を摂取することによる運動パフォーマンスの向上を狙いたい。

つまり、「たんぱく質」と「糖質」は、それぞれの用途にあった適当なタイミングで摂取できることが好ましいということだ。

マルトデキストリンを買うべきだ

したがって、ウェイトゲイナーよりも効率的に太りたいなら、「プロテイン」は筋肉の材料としての用途に限定して、摂取カロリーの増加または運動パフォーマンスの向上用途として、前述した「マルトデキストリン」だけを購入したほうがよい。

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  • メディア: ヘルスケア&ケア用品

タイミングの問題

マルトデキストリンを購入するべき最大の理由は、糖質だけを「適当な」タイミングで摂取することができることだ。糖質の特徴は、なんといっても運動するためのエネルギーになることである。

減量期間における糖質不足を経験すると、糖質による運動パフォーマンスへの影響というのはよく分かるものだ。運動パフォーマンスを向上させ、かつ消費カロリーを増やせるのであれば、「筋肉」の増加と相性がよいことは自明だ。

飲みやすさ

また、マルトデキストリンには飲みやすいという特長がある。糖質のため甘味はあるが、砂糖のような甘味はなく、30gほどであれば水に溶かして飲むことができる。

30gのマルトデキストリンでも、摂取カロリーは120kcalになる。1日のなかで30gずつを複数回摂取していけば、摂取カロリーを増やすことができる。

コストメリット

また、ウェイトゲイナーよりも、「プロテイン」と「マルトデキストリン」を別々に購入したほうがコストメリットがでる。ウェイトゲイナーはいわゆる「セット商品」のため、価格が割高である。

プロテインとマルトデキストリンを別々に購入しても、シェイカーで混ぜて飲めば、ウェイトゲイナーと同じ成分になる。

ちなみに、プロテインシェイカーは小型でシンプルな構造のほうが、壊れにくく長持ちする。経験上、「飲み口」がついているものは、飲み口に亀裂が入りやすい。カップと蓋だけのシンプルなシェイカーで必要十分である。

そのほかの効率的な方法は?

「筋肉」を増やすために太るときは、運動パフォーマンスに影響する「糖質」を増やすことがもっとも効率的である。しかしながら、そのほかに方法はないのかを考えたい。

「脂質」で太る

前述したとおり、単純に「太る」だけであれば、1gあたり9kcalのエネルギーがある「脂質」を増やすことが、もっとも簡単なやり方だ。

しかし、脂質はホルモンバランスを整えるうえでは必要な栄養素であるものの、筋肉の材料にならなければ、運動パフォーマンスの向上にも寄与しない。

そのため、PFCのなかでも摂取するべき優先度は低い。摂取カロリーに占める脂質の割合も、20〜25%ほどが適当だといわれている。

例外としては、ケトジェニックのように極端な糖質制限をすることで、脂質をエネルギー源に代えることができる。しかし、ケトジェニックはダイエット手法であることから、「痩せる」ための手段である。

吸収効率を改善する

もし、プロテインやマルトデキストリンを摂取しても体重が増えないのであれば、その原因は栄養の吸収にあるかもしれない。

太る原則はひとつだが、消費カロリーや摂取カロリーがバランスする数値は人によって異なる。このカロリーバランスの数値が高い人を、「ハードゲイナー」という。

ハードゲイナーが太るためには、人よりも多くのカロリー摂取が必要だ。しかし、摂取カロリーを増やすにも限界がある。

そのようなときは、「エビオス錠」などの整腸剤によって、栄養の吸収効率を改善していくという手段も考えられる。

エビオス錠には整腸効果があるとされ、プロテインの過剰摂取によって腹の調子がわるいときに飲まれることも多い。

同社の「スーパービール酵母Z」に期待される効果も同じで、こちらには亜鉛が配合されている。また、一回に摂取する量が10粒から5粒に減っていることはメリットである。

英語の多読がなぜ「おすすめ」できるのか?

多読は、英語学習のなかでも、もっとも取り組みやすく効果的な学習方法である。多読をすることは、英語のリーディングスキル以上に得るものが大きい。今回は英語の多読についてまとめる。

多読は英語レベルだけでなくQOLも向上させる

英語学習の一環として、「多読」をおすすめする人は多い。多読とは、学習している言語で書かれた本を「多量」に「読む」ことである。

多読をすることには、英語のスキルアップ以外にもさまざまなメリットがある。たとえば、「言語」以外の知識を向上させることや、単純に読書を楽しむといったことだ。

つまり、英語の多読をおすすめするのは、英語学習に効果があるだけでなく、QOLの向上にも寄与するからだ。その理由は下記のとおりである。

  • 英語学習への効果が証明されている
  • 「読める」ことだけでメリットがある

英語学習への効果が証明されている

多読は、「リーディング」スキルの向上だけでなく、英語レベル全体の向上を期待できる。また、多読の有効性は、さまざまな研究をとおして証明されてきた。

語学力向上のエッセンスである

多読は、語学力を向上させるエッセンスだ。英語の多読をすることは、「リーディング」という基礎スキルを向上させるだけでなく、英語レベル全体の向上に期待することができる。

多読は、一見するとリーディングのための学習方法に思える。たしかに、「多読」しているときに使用される能力は「リーディング」である。しかし、多読をとおして得られる能力は、リーディングにかぎった話ではない。

たとえば、「文」や「文章」「文書」の構造から、相手へなにかを伝えるための技法を学ぶことができる。つまり、「メッセージ」「根拠」「具体例」のような、「ライティング」の構造化が自然とできるようになってくる。

読み手として、書かれている内容を理解する能力だけでなく、自分が「書き手」「話し手」になったときに必要なアウトプットの力は、実体験をもってしか学ぶことはできないということだ。

外国語の学習法として研究されてきた

多読は、外国語の「学習方法」として、その有効性を研究されてきた。そして、さまざまな研究結果において、多読は語学における有効な学習方法であるということが示されている。

下記の研究では、「学び」のある多読を実行するための投下リソースと、それに対するリターンを比較して、以下のように結論づけている。

Although they do require a significant investment in time, energy and resources on the part of those charged with managing the materials, the benefits in terms of language and skills development for the participating learners far outweigh the modest sacrifices required.
(教材を管理する側としては、時間やエネルギー、リソースの確保に多大な投資が必要であるいっぽう、参加者の言語技能の発達は、その必要な投資がささやかな犠牲と思えるほどに大きな効果があった。)*1

「読める」ことだけでメリットがある

多読をしていると、日本で出版されていない本も読むことができる(ようになる)。また、「読書」という行為で比較すると、翻訳本よりも安価に読書ができるため、コストメリットがある。

日本で出版されていない本が読める

多読ができるようになると、日本では出版されていない本、つまり、翻訳されていない本を読むことができる。なんらかの理由で翻訳されていない本や、翻訳されることが予定されているものの、いまだ未翻訳の本を早いタイミングで読むことができる。

Your Money or Your Life

「FIRE(=Financial Independence, Retire Early、財政的独立と早期退職)」という考え方の、火付け役となった本だ。

「財政的な独立」を達成するためには、どのように資産を形成していくのか?「早期退職」をしたあとにはなにが残るのか?といった、単純な「財テク」以上のことが書かれている。

とくに、資産形成は「投資」と「節約」の両輪でまわっていて、後者の「節約」の重要性は、大量消費社会に対する問題提起だというメッセージにもなっている。

Early Retirement Extreme

「FIREムーブメント」に関する書籍としては、「Your Money or Your Life」と双璧をなすほどに有名である。

「Your Money or Your Life」はFIREという考え方についての本であるが、「Early Retirement Extream」は、どちらかというと、より実践的に「節約」をする方法などが書かれている。

実践的な内容ということもあり、英文としての難易度も「Your Money or Your Life」より高い。FIREムーブメントに興味があれば、「Your Money or Your Life」を読んだあとのほうが、理解しやすいかもしれない。

Flow

生産性を左右するのは、いかに目の前のタスクに「没頭」できるかだ。この本では、没頭することを"flow"と呼んでいる。そして、意図的にflowをつくりだす方法や、flowを起こす要因が分析されている。

著者のDaniel H. Pinkは、ヒットメーカーとしていくつもの本を書いている。そのうち、いくつかは翻訳されているものの、Flowは未翻訳のため、多読の対象としておすすめできる。

Bad Blood

医療ベンチャーTheranosの、誕生から衰退までをまとめた本である。創業者であるElizabeth Holmesは、スティーブジョブズの再来といわれ、彼女自身もジョブズを意識したファッションをするなどで注目を浴びた。

しかし、なぜTheranosは破綻したのか?失敗からの学びという意味で、勉強になる一冊である。アメリカでは非常に話題になった本でありながらも、日本ではいまだ未翻訳のようだ。

Why We Sleep

昨今「睡眠」に関する本は多い。しかし、睡眠のメカニズムは完全に解明されているわけではない。つまり、あたらしい本には、あたらしく発見された事実が書かれていてもおかしくない。

アメリカでは、「睡眠」を対象とした研究が進んでいる。睡眠の質は、生活の質を向上させるための重要な要素であるからだ。「Why We Sleep」では、睡眠の気質を「遺伝的なもの」としている研究が興味ぶかい。

The Code Book

「暗号」の歴史についてと、あまり類のない分野の本である。暗号の歴史は、数学とコンピューターの発展と相関している。

「The Code Book」は、暗号を「つくる」側と「解読する」側、両者の視点から具体的な解説つきで書かれている。著者がジャーナリストということもあってか、内容のむずかしさに対して、読みやすい文章である。

翻訳されている本より安価で読める

また、多読ができると、本の購入単価を下げることもできる。一般的に、翻訳された本は原本よりも高くなることが多い。とくに、日本の出版社から翻訳される場合、紙の「質」やカバーの作り込みなど、付加価値をつけて販売しているようにみえる。

The Culture Map

「文化」の違いを、国ごとにまとめた本だ。「○○人は××だ」というような単純な話ではなく、ある国で話されている言語がどのように発展してきたかや、どのような集団で話されているのかなど、データに基づいた内容になっている。

第二言語として英語を学習するとき、日本語との最大の違いは、言語としての「コンテクストレベル」にあると考えているが、このコンテクストレベルの違いにも言及されている。

Sapiens

日本でも話題になった「サピエンス全史」である。生物学的な話からはじまり、宗教や文化など、人文、社会学を含め多様な視点から、人類とその歴史をまとめている。

翻訳本は上下巻に分かれているため割高である。原本は分厚いが、1冊にまとまっているため、本の価格だけでなく、占有スペースというコストも削減可能だ。

Outliers

「天才」や「成功者」と呼ばれる人たちに、共通した要素はあるのか?ということを、統計的に分析している。「1万時間の法則」を持ち出したことには賛否両論あるが、成功事例を分析するための切り口はおもしろい。

「The Code Book」のように、著者がジャーナリストということもあってか、文章は読みやすい。同著者では、「直感」を題材にした「Blink」なども有名である。

A Random Walk Down Wall Street

「投資」の指南書としては古典のひとつである。インデックス投資が優れているということを、細かく説明している。

「投資」に関する知識がない場合、それなりの英語力がないと読みにくいかもしれない。しかしながら、もし背景知識を理解しているのであれば、「英語」と「投資」を同時に勉強することができる。

「どのように」多読するか?

英語の多読にはふたつの方法がある。

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ペーパーバックで読む

ひとつは、ペーパーバックという「現物」を「買う」または「借りる」ことだ。

アマゾンはペーパーバックの取り扱いが多いが、それでも実際の物流が介入してくるため、在庫切れや納期遅れといった問題はある。

また、図書館などで借りることもできるが、取り扱いはけっして多くないため、読みたい本と出会える可能性は低い。

電子書籍で読む

ふたつめが、「電子書籍」を「買う」ことだ。

電子書籍であれば、物流が介入してこないため、ペーパーバックがかかえる問題はなくなる。また、「本」自体の価格は、ペーパーバックよりも安価に設定されることが多い。

電子書籍のなかでもおすすめしたいのが「Kindle」だ。Kindleは、マゾンの電子書籍プラットフォームおよびリーディングデバイスである。読み放題のサブスクリプション「Kindle Unlimited」でも洋書の取り扱いがあり、多読との相性がよい。

ダンベルの適正重量は?自宅用のおすすめは?

はじめてダンベルをつかったトレーニングをするときや、自宅トレーニングのためにダンベルを購入するとき、適正重量が分からないことがある。今回はダンベルの適正重量と自宅トレーニングについてまとめる。

バーベルから割り引いて60kgのプレート可変式ダンベルセットを買うべき

ダンベルの適正重量は、身長や体重から機械的に計算できるものではない。なぜなら、トレーニングであつかう重量は、それまでの経験やその日の体調によっても変わるからだ。

しかしながら、たとえば、バーベルトレーニングであつかう重量を基準とすれば、ダンベルの適正重量はある程度計算することもできる。

ここでは、バーベル種目を基準としたダンベル種目の適正重量と、自宅トレーニング向けにダンベルを購入するときの最適解を考えたい。その答えは、ダンベル種目はバーベル種目から割り引いて考えるべきで、60kgのプレート可変式ダンベルセットを購入するべきだ。その理由は下記のとおりである。

  • バーベルよりは重量が下がる
  • 可変式はコスパに優れている

バーベルよりは重量が下がる

ダンベル種目は、バーベル種目よりも可動域が広くなることがほとんどだ。また、バーベル種目のように重量を左右に分散することや、重心を安定させることがむずかしい。種目によって異なるが、これらから、重量を割り引いて考えなければならないことが分かる。

バーベルとは可動域が異なる

まず、ダンベル種目とバーベル種目の違いだ。ダンベル種目とバーベル種目の最大の違いは、「可動域」が異なることである。可動域とは、関節の可動域のことだ。

バーベル種目では、ほとんどの種目がバーベルを地面に対して水平の状態で動かすことになる。つまり、バーベルの動線には、かならず体幹があるということだ。したがって、動作の始点または終点におけるバーベルの動きは、可動域の限界がくるまえに体幹によって制限されてしまう。

いっぽうで、ダンベルであれば体幹を割って左右前後に重量を保持することができるため、可動域は広くなる。ダンベル種目の可動域がバーベル種目よりも広いということは、バーベル種目にはないストレスを、筋肉と関節が受けているということだ。

ダンベルは片手で保持する

つぎに、ほとんどのダンベル種目が、重量を「片手で」保持しなければならない。ダンベルの左右合計重量が、バーベルであつかう重量とイコールになることはほとんどない。

バーベル種目では、両手で重量を支えることによって、左右の筋力の差をカバーすることや、重心を安定させることができる。つまり、腕の筋力をボトルネックにすることなく、ターゲットの筋肉へ負荷をかけることができる。

ダンベル種目では、バーベル種目のメリットを享受することはできない。両手または体全体で重量を安定させるバーベル種目に対して、ダンベル種目では左右それぞれの腕で、ダンベルの重量を安定させなくてはならない。

部位や種目によって差はある

以上をふまえて、実際にバーベル種目からダンベル種目へ移行したときの、重量の変化をまとめておく。

胸;50〜60%

ベンチプレスをバーベルからダンベルへ移行したとき、両手の合計重量はバーベルの50〜60%になった。ウォームアップはより低重量を意識し、安全にスタートポジションがとれる重量からはじめた。

ダンベルベンチプレスでもっともむずかしいのが、スタートポジションをつくる動作だ。バーベルの場合は、ラックアップ時の負荷を、肩甲骨からベンチに分散させることができる。しかし、ダンベルの場合は、両手でダンベルを保持する筋力と、ダンベルを保持した状態で仰向けになる体幹の筋力が必要となる。

ダンベルベンチプレスの動作に慣れていない場合、いきなり高重量をあつかうことは非常に危険だ。また、バーベルのように重量を左右へ分散することができないため、手首の安定性も下がる。リストラップで手首を安定させるべきだ。

背中;50〜60%

デッドリフトの動作は、バーベルとダンベルのあいだで大きな差はない。しかし、あつかう重量はベンチプレス同様、50〜60%をターゲットにした。

そもそも、デッドリフトはもっとも高重量があつかえる種目である。そのため、バーベルデッドリフトの重量をダンベルで再現しようとすると、片手であつかう重量も重くなってしまう。しかし、残念ながら片手で保持することのできる重量には限界がある。

また、バーベルデッドリフトよりも筋肉の収縮が大きい。つまり、可動域が広く、腰への負担を気にしなくてはならない。リフティングベルトで腰をしっかりと安定させるべきだ。

脚;60〜70%

スクワットは、BIG3のなかでもっともバーベルとダンベルの違いがでる種目だ。ダンベルスクワットも高重量をあつかうことができるが、それでもバーベルの60〜70%といったところだ。

まず、バーベルスクワットとダンベルスクワットでは、重心の位置が異なる。そのため、ダンベルスクワットはフォームの習得に集中するべきである。バーベルスクワットのように、下半身がフリーな状態にはならないからだ。

また、スクワットも比較的高重量をあつかう種目であることから、片手で保持できる重量にも、限界があることを認識しなければならない。

肩・腕;80〜90%

肩や腕のトレーングは、そもそもがダンベル種目であることも多い。そのため、比較対象はEZバーやケーブルマシンになる。BIG3ほどに差はないが、それでも80〜90%になる。

EZバーのように両手で重量を保持できないことや、ケーブルのように安定した動作を再現することがむずかしいためだ。

可変式はコスパに優れている

ジムダンベルは、価格と設置スペースというふたつのコストで割高だ。また、アジャスタブル式ダンベルは、それ単体で完結してしまうため、意外にも制約が多い。プレート可変式ダンベルは、これらの欠点をなくした、自宅トレーニング向けのダンベルでは最適解となる。また、ベンチなども購入してしまえば、ジムへ行く必要すらなくなり、コストパフォーマンスはさらに上がる。

ジムダンベルのコストは高い

まず、定重量の「ジムダンベル」だが、ふたつのコストで割高になる。

ひとつは、単純に導入コストだ。定重量のため、種目ごとに適正な重量を使用するとなると、1kg単位で購入していかなければならない。

ふたつめは、スペースの問題である。1kg単位でジムダンベルを揃えると、11〜20kgのジムダンベルだけでも、10*2で20個分のスペースが必要になる。

ジムダンベルの造形はきれいで、シャフトが飛び出していることもないため、トレーニングがしやすいことは間違いない。しかしながら、自宅トレーニング向けにジムダンベルを揃えるには、コストという問題が大きくのしかかってくる。

アジャスタブル式は制約が多い

つぎに、「アジャスタブル式ダンベル」だ。ジムダンベルよりも価格、スペースの点では低コストだが、意外にも制約が多い。

制約というのは、重量の設定があまり細かくできないことと、独特なかたちをしているため、使用できる種目が制限されてしまうことだ。

ジムダンベルと同じく、シャフトが飛び出していないのであつかいやすいが、プレートを流用することなどができない。つまり、アジャスタブル式ダンベルは、それひとつでトレーニングを完結させなくてはならないということだ。

可変式は低コストで流用もできる

結局のところ、自宅トレーニング向けにダンベルを購入するなら、「プレート可変式ダンベル」が最適解となる。ジムダンベルよりは低コストであり、アジャスタブル式ダンベルよりも制約が少ない。

プレート可変式のダンベルは、シャフト「径」さえあっていれば、プレートをバーベルやEZバーに流用することができる。一般的にジムなどに置いてあるバーベルは、50mm径のオリンピックシャフトだ。

しかし、自宅用であれば、25〜28mm径のものが多い。プレート可変式ダンベルからバーベルまであつかっているメーカーであれば、統一した規格を採用しているので問題はない。

バーベルよりもあつかう重量が下がるとはいっても、重量は重ければ重いほうがよい。ほとんどが左右合計60kgのセットが最大重量になっているため、こちらを購入するべきだ。あとからプレートを買い足すこともできるが、プレートの追加購入は割高になるためだ。

さらにコスパを上げるものがある

また、プレート可変式ダンベルといっしょにいくつかのものを購入することで、ジムから自宅トレーニングへの完全な移行ができる。そうすることで、コストパフォーマンスの向上を期待することができる。

ベンチ

ベンチがあることで、圧倒的にあつかえるトレーニング種目が増える。とくに、背面の角度調整ができるインクラインベンチがおすすめだ。

インクライン(とできればデクライン)機能があることで、トレーニング種目のバリエーションは2倍以上になる。また、フォールディング機能があれば、スペース問題を解決することもできる。

ジムにある業務用のベンチとくらべると、どうしても作りにチープさがあるのは事実だ。とくに、座面の角度が固定されていることが多い。しかし、ある程度の妥協は必要なため、安価だがしっかりと足が安定するものがよい。

プレートラック

プレートラックには、スペースというコストの削減と、トレーニングの質向上というふたつのメリットがある。

まず、プレートラックを使用することで、プレートを一箇所にあつめることができる。平積みでもプレートを保管することはできるが、プレートを取ったり置いたりするときに、指を挟み込むリスクがある。

また、プレートラックは床面よりも容易にプレートへアクセスできることで、重量の設定変更が楽になる。実際に、トレーニング中にはその利便性が実感できるはずだ。

マット

忘れがちだが、ダンベルとベンチで自宅にトレーニング環境をつくる場合、マットは必須だと考える。集合住宅では隣接する部屋への配慮として当然だが、戸建てであっても、自宅トレーニングの環境を改善することに役立つ。

トレーニングマットは、予期せぬダンベルの落下による床の傷防止だけでなく、防音効果やトレーニング品質の向上に効果がある。たとえば、デッドリフトやスクワットなど、足の位置を安定させる必要がある種目、ベンチを使用する種目において、その安定性を向上させることができるからだ。

自宅トレーニングのメリットとは?

自宅トレーニングのメリットを考える。ジムへ行けば、パワーラックで高重量をあつかうことができるが、自宅にパワーラックを設置することはむずかしい。このデメリットを超えるメリットが、自宅トレーニングにはあるのか?

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費用を削減できる

自宅トレーニングへ完全な移行ができると、ジムの月会費は削減することができる。ジムにかかる年間コストを計算すると、10万円近いコストがかかっていることが分かる。

自宅にトレーニング環境をつくることは、それなりの費用がかかる。実際に、60kgのダンベルセットおよび、ベンチ、プレートラック、マットなどで、6〜7万円といったところだ。

しかし、先ほどの計算のとおり、自宅トレーニングへ完全に移行してしまえば、1年間で回収できるコストである。

時間を削減できる

自宅トレーニングにおける最大のメリットは、むだな時間を削減できることだ。

むだな時間とは、ジムへ移動するためにかかる時間や、ジムでラックやマシンを使うための待ち時間だ。このような「むだ」をなくすことで、より密度の高いトレーニングができるだけでなく、不要なストレスも削減することができる。

ユニクロのイージーケアシャツのおすすめは?

ユニクロには「イージーケア」というシリーズがある。このなかでも、イージーケアシャツは用途を選ぶことによって、そのメリットを最大化することができる。今回はユニクロのイージーケアシャツについてまとめる。

夏場のビジネスカジュアルシャツとしての用途が最適である

ビジネスの装いには変化がおきている。たとえば、クールビズの浸透により、夏場は服装のカジュアル化が進んでいる。また、服装のカジュアル化とは別のベクトルでの変化もおきている。

ひとつは、むかしからの着こなし、ルールといったものを意識しなくなってきたことだ。その際たる例は、シャツの非コットン化、いわゆる、「形状記憶」「形状安定」シャツの登場である。

シャツといえば、いままではコットンでつくられることが一般的であった。そのため、洗濯後にはアイロンがけの手間が発生することはふつうであった。

しかし、形状記憶/安定シャツの登場で、ビジネスシャツの扱い方も大きく変わった。ここで、ユニクロのイージーケアシャツの用途を考えると、夏場のビジネスカジュアルとして使うことが最適だといえる。その理由は下記のとおりだ。

  • 半袖だとデメリットがなくなる
  • ユニクロらしさこそメリットだ
  • あらゆる面でコスパが高すぎる

半袖だとデメリットがなくなる

イージーケアシャツであっても、「袖」にはしわが残りやすい。いっぽうで、社会的な変化としては、夏場は半袖シャツを着ることが一般的になった。したがって、夏場にかぎっては、半袖のイージーケアシャツを着ることができ、弱点である「袖」のしわ残りが気にならないため、実質ノンアイロンシャツとして扱うことができる。

イージーケアでもしわは残る

はじめに、「イージーケアシャツ」と「ノンアイロンシャツ」は異なる。つまり、イージーケアシャツにかかる手間は、簡単だが「必要」ではあるということだ。とくに、シャツの場合は「袖」にしわが残りやすい。

シャツの袖は洗濯中にねじれやすい。また、身頃と違って、乾燥中にシャツの自重でしわを伸ばすことができない。したがって、イージーケアシャツであっても、袖にはアイロンがけをしてやらなくてはならないことが多い。

シャツの形状安定性を評価する指標として、JISの「W&W性(ウォッシュ&ウェア性)」というものがある。W&W性では、洗濯したシャツの各部位に残るしわを、1〜5までの5段階で評価する。この数値が高いほど、しわ残りが少なく、形状安定性に優れていることになる。

ユニクロのイージーケアシャツのW&W性は公開されていない。しかし、ユニクロにはスーパーノンアイロンシャツという製品があり、スーパーノンアイロンシャツのW&W性は「4」である。

形状安定性はスーパーノンアイロン>イージーケアであることを考えると、イージーケアシャツにはアイロンがけが必要なことが分かる。

クールビズが半袖化を進めた

つぎに、社会的なビジネスウェアに対する認識の変化だ。現在、日本では「クールビズ」が浸透してきたこともあって、夏場にはビジネスで半袖シャツを着ることがゆるされる傾向にある。

クールビズは、環境対策などを目的とした、夏場に服装を最適化するための取り組みだ。また、日本の夏は、そもそもが高温多湿で不快度の高い気候である。そのため、クールビズは加速度的に広まっていった。

夏場は実質ノンアイロンになる

イージーケアシャツにはアイロンがけが必要だ。しかしながら、夏場にかぎっては、イージーケアシャツは「実質」ノンアイロンシャツになる。

なぜなら、夏場はクールビズの浸透により半袖シャツを着ることができる。そして、半袖シャツは「袖」が短いため、イージーケアシャツの弱点であった「袖」のしわ残りが、ほとんど発生しない。

実際に、イージーケアシャツには「吸水性」や「速乾性」という特長があるため、洗濯をしても身頃のしわはほとんど気にならない。

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ユニクロらしさこそメリットだ

ユニクロは日本発のブランドであり、ユニクロのシャツは日本人向けのサイズ感だ。また、デザインが無難で、定型化したビジネスシャツでは目立つ欠点が少ない。さらに、店舗数が競合企業よりも圧倒的に多いため、サイズ選びで失敗することもない。

サイズ感が日本人向けである

ユニクロのイージーケアシャツには、「レギュラー」「スリム」の2種類がある。これらは着る人の体型に合わせればよい話で、いずれも日本人向けのサイズ感となっている。

ユニクロのサイズ感のよさは、「H&M」など、海外SPAとくらべると分かりやすい。日本発のブランドであるユニクロが、欧米人向けにつくられたH&Mよりも、サイズ感の適合性で劣後することはない。

実際、H&Mのシャツでは、Sサイズでは小さすぎるがMサイズでは大きすぎるといったことがよくある。H&Mのシャツにも、「レギュラー」や「スリム」といったスタイルの違いはあるが、いずれの組み合わせでも、落としどころをみつけにくい。

下の写真は、H&MのスリムS(左)とユニクロのスリムM(右)だ。H&Mは、サイズをユニクロよりもワンサイズ落としているが、「スリム」のSサイズはさすがにタイトすぎる。

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下の写真は、H&MのレギュラーS(左)とユニクロのスリムM(右)だ。身頃のフィッティングはどちらもわるくない。H&Mはコットン100%である。そのため、ユニクロのイージーケアよりも肌ざわりがよいが、しわが残っている。

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デザインに欠点が少ない

ユニクロの衣服全般にいえることだが、デザイン上の欠点が少ない。とくに、ビジネスで着るシャツのように定型化したデザインの場合、欠点というものがいっそうに目立ってしまう。

逆に欠点があるシャツとはどういったものかというと、たとえば、オンラインで安売りされているシャツだ。ボタン周辺のデザインや素材感などに中途半端なものが多いと感じる。

ユニクロはデザインが無難だ。特別に洗練されているわけではないものの、マスを取りにいく姿勢がデザインにもあらわれているといえる。

アクセシビリティが高い

また、こちらはユニクロの企業戦略にいえることだが、アクセシビリティが高いことが重要である。とくに、海外SAPとくらべると、その差は歴然としている。

ユニクロは全国800店以上の店舗を展開していて、かつオンラインショップでの購入も可能だ。つまり、気軽に店舗で製品を確認してから、購入はオンラインで済ますこともできる。

いっぽうで、H&Mの店舗数は全国100店舗以下である。したがって、ユニクロはH&Mの8倍以上アクセシビリティが高いといえる。

H&Mのサイズ選びがむずかしい理由は、欧米人向けにデザインされているだけでなく、店舗数が少ないために試着をする機会も少ないからである。

あらゆる面でコスパが高すぎる

ユニクロのイージーケアシャツでもっとも重要なことは、コストパフォーマンスの高さである。「モノ」としてのデザインはリクワイアメントを満たしていて、機能面から考えると圧倒的な強さがある。

まず、税込み1,980円という価格だ。海外SPAとくらべても、同じ価格でビジネスシャツを展開できる企業はほとんどない。イニシャルコストだけでほかを圧倒している。

つぎに、「イージーケア」の機能だ。前述したとおり、半袖のイージーケアシャツは実質ノンアイロンシャツになる。つまり、ランニングコストがほとんどかからないということだ。

アイロンがけが必要になると、自宅でアイロンがけをするのか、クリーニング に出すのか、いずれにしても、時間や金といったランニングコストがかかってしまう。

しかし、半袖のイージーケアシャツは、通常の洗濯コストだけでランニングをまわしていくことができる。この通常の洗濯にかかる時間や金といったコストを削減する方法は、全ての服装において現在のところみつかっていない。

ユニクロのイージーケアシャツの欠点は?

それでは、ユニクロのイージーケアシャツに欠点はないのか?というと、そんなこともない。

耐久力は低いかもしれない

耐久力はあまりないといった印象だ。

下の写真は、40回ほど洗濯したものである。どの時点で発生したか分からないが、「ほつれ」が気になる箇所がいくつかある。

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しかしながら、コストを耐用年数で割ったパフォーマンスを考えると、やはりコストパフォーマンスが高いといえるかもしれない。なぜなら、たとえば、鎌倉シャツのイージーケア「TRAVELER」は、ユニクロのイージーケアシャツの4倍近い価格で販売されている。

実際に、「TRAVELER」の耐用年数が、ユニクロのイージーケアシャツの4倍あるとは考えにくい。とくに、消耗のはげしい「襟」や「カフス」の摩耗が気になってくるはずだ。

もちろん、鎌倉シャツには、コストや耐用年数だけでは判断できない「フィッティング」や「デザイン」といったこだわりがあるため、単純にくらべることはできない。

肌ざわりがコットンに劣る

もうひとつ、イージーケアシャツの弱点としては、コットンには劣る「肌ざわり」がある。

けっして不快ということはないが、コットン100%のシャツに慣れていると、ゴワゴワした肌ざわりがあることは事実だ。

鎌倉シャツ「TRAVELER」は、イージーケアでありながらも「肌ざわり」にはこだわった製品だ。「形状安定性」と「よい肌ざわり」の両立を目指したのが、鎌倉シャツのこだわりである。

しかしながら、ユニクロほどの企業が、このような視点を見逃しているわけがない。いずれは、同じような「こだわり」、または、別角度からの「価値」を付加した製品を開発してくるはずだ。