麻布テーラーのタキシードは初めてのフォーマルにおすすめしたい

麻布テーラーはこれからの動向が注目される企業だ。タキシードをレンタルで終わらせるのはもったいない。麻布テーラーのタキシードはQCD(F)が高い。したがって、麻布テーラーのタキシードは初めてのフォーマルにおすすめしたい

麻布テーラーはこれからの動向が注目される企業だ

麻布テーラーは「新興」テーラーではない。民事再生と商標権の譲渡を経験している。グループ全体が買収されてしまった。したがって、麻布テーラーはこれからの動向が注目される企業だ

麻布テーラーは「新興」テーラーではない

麻布テーラーは1999年に「メルボメンズウェアー」という会社が始めたオーダースーツの専門店だ。2022年現在で23年の歴史しかないように見えるが、メルボメンズウェアーの生い立ちから見ると「老舗」といっても過言ではない。

メルボメンズウェアーの母体は「メルボ紳士服」という紳士服メーカーに見ることができる。メルボ紳士服は1918年に創業した「平野屋羅紗店」を前身とする歴史ある企業だった。

そのメルボ紳士服の子会社として1969年に創業したのがメルボメンズウェアーである。だから、麻布テーラーは「紳士服を作ること」に関しては、平野屋羅紗店から数えて100年以上の歴史がある。

民事再生と商標権の譲渡を経験している

麻布テーラーは、その事業を始めた早々からさまざまな変化に直面してきた。一つは、2001年に麻布テーラーを運営するメルボメンズウェアーおよびその親会社であったメルボ紳士服の民事再生だ。さらに、2005年には伊藤忠商事による麻布テーラーの商標権取得がある。

元々、メルボグループは高級路線で勝負をする企業だったが、洋服の青山を展開する「青山商事」や紳士服のはるやまを展開する「はるやま商事」といった価格を重視する後発企業に、時代の潮流とともに押されその経営は悪化していた。

そして2001年には、経営悪化を理由とする民事再生が適用されることとなった。しかし、1999年に始めた麻布テーラーは好調だった。この麻布テーラーが評価されたことで伊藤忠商事からも資金が投入されることになったのだろう。

伊藤忠商事が商標権を取得した2005年に13店舗だった麻布テーラーは、2022年現在で26店舗と、2000年代から2010年代にかけてメルボグループが経営を再建する際の立役者であったとも言える。

グループ全体が買収されてしまった

今年2022年には業界全体を揺るがす衝撃があった。それがメルボグループの競合であった青山商事による、麻布テーラー(メルボメンズウェアー)を含むメルボグループの買収だ。

今でこそ洋服の青山(青山商事)もオーダースーツ事業を始めているが、元々は低価格の「吊しのスーツ」で成長してきた企業である。吊しのスーツとはいわゆる既製服のことで、フルオーダーにしろパターンオーダーにしろ、吊しのスーツはオーダースーツとはターゲットが異なる。

麻布テーラーはオーダースーツの専門店だし、その(元)親会社であるメルボ紳士服も高級路線の紳士服メーカーであった。一消費者の視点から見ると、吊しのスーツより高いオーダースーツのテーラーが、吊しのスーツを販売する企業の子会社になることにモヤモヤしたものを感じることだろう。

タキシードをレンタルで終わらせるのはもったいない

日本では結婚式のタキシードをレンタルすることが一般的である。タキシードはフォーマルの中でも汎用性がありオーダーもできる。したがって、タキシードをレンタルで終わらせるのはもったいない

日本では結婚式のタキシードをレンタルすることが一般的である

日本ではビジネスでスーツを着ることが欧米よりも一般的なのに対して、フォーマルで礼装を着ることは一般的ではないというか、礼装を求められる場が少ない。だから、結婚式で求められる礼装(モーニングやタキシード)はレンタルすることが主流だ。

実際、結婚式の新郎の93.5%はタキシードを着用し、そのタキシードをレンタルする割合は93.3%というデータもある(ゼクシィ 結婚トレンド調査2019 調べ)。1

タキシードはフォーマルの中でも汎用性がありオーダーもできる

礼装は「時間」と「格式」で分けられるが、日本で一般人でも参加できる儀式は「婚」「葬」くらいなのに対して、タキシードを使う宴は会社員でも参加することがあるだろう。それから、タキシードは宴のための礼装であるが、日本では結婚式で使うことができるし、レンタルやオーダースーツと大差ない価格でオーダーすることができる。

前述したデータでも新郎の93.5%が結婚式でタキシードを着用しているし、世界的に見ても本来は夜の(宴の)正礼装であった「テイルコート(燕尾服)」はタキシードに取って代わられている。

タキシード(既製品)をレンタルしたときの費用は平均して12.8万円とそれなりに高価だから、タキシードと小物を自前でそろえても十分に勝負できる可能性がある。

それから、オーダータキシードは結婚式の後に改造してスーツに直すことができるくらい、大きな作りではスーツと大差がない(実際にはそれだけタキシードの仕様が簡易的なものになると想定されるためおすすめはできない)。

麻布テーラーのタキシードはQCD(F)が高い

麻布テーラーは品質を担保している。タキシードも手頃にオーダーできる。仕立屋なのに気軽にオーダーできる。したがって、麻布テーラーのタキシードはQCD(F)が高い

麻布テーラーは品質を担保している

麻布テーラーはメルボグループ内に(現在は青山商事のグループ企業として)「メルボ紳士服工業」という縫製工場を持っている。メルボ紳士服工業は、50年以上の歴史ある縫製工場を国内2カ所で経営し、麻布テーラーが東西で受注したオーダースーツを作り分けている。

その一つが1969年に創業した滋賀工場で、年間45,000着のスーツを生産している(2020年)。もう一つは1972年に創業した広島工場で、こちらも滋賀工場と同じ規模でスーツを生産している。

いずれの工場でも古くからある特殊ミシンを使った熟練者の手作業が生きる一方で、オートメーション化を進めるなどして工業化による生産効率の向上も進めている。

麻布テーラーには自身の生い立ち(1999年の事業スタート)よりも以前から稼働する自社工場があることで、受注したオーダースーツの品質を担保していると言える。

タキシードも手頃にオーダーできる

麻布テーラーのフォーマルは「セレモニアルウェア」として分かりやすく展開している。例えば、タキシードは60,500円(税込)〜オーダーでき、タキシードに必要な小物一式(靴と靴下は除く)は33,000円(税込)で販売されている。

60,500円(税込)のタキシードの価格内訳は、オーダースーツの最低価格44,000円(税込)+タキシードオプション16,500円(税込)となっている。タキシードはジャケットに「拝絹地」やパンツに「側章」が入っているため、通常のスーツより工程が増えるからだろう。

オーダースーツと同じように、生地のグレードを上げるとタキシードの価格も上がる。このとき、縫製代やタキシードオプション16,500円(税込)の価格は変わらない(縫製代や麻布テーラーの利益が生地のグレードアップ代に含まれているとも言える)。

例えば、最低グレード(=オーダースーツの最低価格)から一つ上のグレード生地にすると、最低グレード44,000円(税込)+一つ上のグレード生地11,000円(税込)+タキシードオプション16,500円(税込)=71,500円(税込)となる。

タキシードは「黒」の「無地」で作ることが多いが、生地によってその質感(光沢や肌触り)は千差万別なので、実際に店舗で確認してから決めることになる。

タキシードに必要な小物一式は「蝶ネクタイ」「サスペンダー」「カマーバンド」「カフリンクス」「スタッズボタン」「チーフ」の6点がセットになったものだ。

オーダースーツの副資材や小物を取り扱うヤマモトが展開する「EXCY」というブランドのものと思われる。EXCYでもこれらの小物は個別にそろえることができるが、一部の小物には麻布テーラーのロゴが入っていたり、必要なものをまとめてリーズナブルに買えることは利点である。

仕立屋なのに気軽にオーダーできる

麻布テーラーは自社工場があることで納期(調整)の融通が利きやすいだけでなく、単純に店舗数が多いこともあり思い立ったら即行動に対応してくれる。

実際、麻布テーラーは2022年現在で国内26店舗がある。そのうち、東京11店舗、大阪4店舗と出店は主要都市がほとんどであるが、主要都市もしくはその近郊に住んでいる場合はその恩恵にあずかることができる。

麻布テーラーはイージーオーダーを基本とした仕立屋であり、店舗(スタッフ)は顧客を採寸し要望を聞いてデザイン(パターン)を決めることが仕事だ。

企業としては、店舗運営を採寸とヒアリングに限定し、その生産は工場に委託することでバリューチェーンを最適化できるのかもしれないが、店舗スタッフの技術・知識が上がりにくいといった課題もある。

麻布テーラーでフォーマル(セレモニアルウェア)をオーダーするときは、⽇本フォーマル協会認定の「フォーマルスペシャリスト」を取得したスタッフが提案するとしている。

しかし、この資格は実務経験を伴わないため、対応するスタッフのこれまでの提案経験が見えないところには不安が残るのも事実である。

モーニングとタキシードが並ぶ結婚式がおかしいことを知るべきだ

モーニングとタキシードの違いは時間と格式にある。「昼の礼装」と「夜の礼装」は共存できない。プロトコール(ドレスコード)から服装がもっとよく分かる。したがって、モーニングとタキシードが並ぶ結婚式がおかしいことを知るべきだ

モーニングとタキシードの違いは時間と格式にある

モーニングは昼の正礼装である。タキシードは夜の準礼装である。礼装は時間と格式で分けられる。したがって、モーニングとタキシードの違いは時間と格式にある

モーニングは昼の正礼装である

モーニングは男性の昼間の装いとしては最も格式の高い礼装(「正礼装」という)である。これは国際儀礼(プロトコール)に基づくもので、洋装文化がある国では共通の認識となっている。

実際、外務省のプロトコールに関する説明の中でも、男性の昼の正礼装をモーニングとしている。1

この文脈における「プロトコール」とは、異なる文化を持つ人たちが集まったとき、互いに礼を欠くことなく国際的または公的なイベントを円滑に進めるための「前提」や「ルール」といった意味である。

モーニングの構成は、前裾は短く後裾は長い黒無地のジャケット(モーニングコート)、ジャケットと共布またはシルバーグレーのベスト、黒とグレーの縞模様のパンツ(コールパンツ)からなる。

細かいところでは、シャツはウイングカラー(立襟)、タイはシルバーグレーのアスコットタイ、靴は黒革のストレートチップを合わせる。

タキシードは夜の準礼装である

タキシード(ブラックタイ)は男性の夜間の装いとしては正礼装に次いで格式の高い礼装(「準礼装」という)である。恐らく(少なくとも日本では)、タキシードは礼装の中で最も知られている装いだろう。

英国ではタキシードを「ディナージャケット」というように、本来の「タキシード」はそのジャケットのみを指す「礼服」であり、タキシードを中心に構成する装い(礼装)を「ブラックタイ」という。しかし、日本ではタキシード=ブラックタイである。

すなわち、礼服である「モーニングコート」が中心の礼装が「モーニング」であり、礼服であるタキシード(ディナージャケット)が中心の礼装が「ブラックタイ」という整理になるが、モーニングコート=モーニング、タキシード=ブラックタイでも文脈を取り違えることはない。

「ブラックタイ」は黒の蝶ネクタイを指し、それがタキシードを着こなすときの代名詞になっている。タキシード(ブラックタイ)の構成では、ジャケットとパンツは共布の黒無地が一般的だ。

ジャケットは一見して現代のスーツと似ているが、スーツでは上襟と下襟(ラペル)が折り返しになっている(「ノッチドラペル」または「ピークドラペル」)に対して、上襟と下襟がつながる「ショールカラー」が正式とされる。

ベストの代わりにベストを簡略化した「カマーバンド」という腹部に巻く飾り帯を付ける。靴はエナメル(パテントレザー)のオペラパンスを合わせる。

礼装は時間と格式で分けられる

モーニングやタキシード(ブラックタイ)といった装い(礼装)は好きなように各人の好みで着られているわけではなく、その装いで参加するイベント(の時間)と、その装いを使う人の立場(格、格式)によって使い分けられている。

礼装の使い分けは洋装文化「そのもの」であるから、元来は洋装文化にない日本において、礼装を使い分けるという認識は浸透していない。しかし、洋装文化のある国や、それらの国の人を交えた式典や公的なパーティーでは、招待状にプロトコール(ドレスコード)が明記される。

「昼の礼装」と「夜の礼装」は共存できない

昼の準礼装は(日本では)知られていない。夜の正礼装はタキシードに取って代わった。それでもプロトコールは時間に厳格である。したがって、「昼の礼装」と「夜の礼装」は共存できない

昼の準礼装は(日本では)知られていない

日本には昼の正礼装「モーニング」と夜の準礼装「タキシード」の違いを説明できる人が少ないが、それに輪をかけて昼の準礼装「ディレクターズスーツ」に関しては、その礼装の存在すら知る人が少ない。

実際、昼間の儀式となるとモーニング一択になることがほとんどで、外務省のプロトコールに関する説明でも、昼の準礼装については記載がない。

ディレクターズスーツは礼装の中でも最も現代スーツに近いスタイルであり、「礼装」という差別化が難しいことが普及していない背景にあるのだろう。

確かに、ディレクターズスーツはモーニングを簡略化したもので、その構成はモーニングのコールパンツにモーニングコートの代わりとしてダークスーツと同じ黒無地またはダークグレーのジャケット、無地のシルバーグレーまたはオフホワイトのベストからなる。

シャツはウイングカラー(立襟)ではなくレギュラーカラー(折襟)であり、モーニングの下半身とビジネススーツの上半身のニコイチとも表現できる。靴はモーニングに準ずる。

欧米ではブラックスーツを礼装とは見ないが、日本ではブラックスーツを冠婚葬祭の礼装と見なすことが多く、黒無地のジャケットではブラックスーツとの差別化ができない。

夜の正礼装はタキシードに取って代わった

話をややこしくするのが、礼装は時代とともに変化するということだ。プロトコールには夜の正礼装として「燕尾服(ホワイトタイ)」があっても、実態として燕尾服が使われることがなければ、タキシードを実質的な正礼装としてもおかしくない。

実際、夜の正礼装=燕尾服(ホワイトタイ)という認識は確立しているものの、パーティーのドレスコードでは燕尾服よりもタキシードが指定されることが圧倒的に多いという。そのことから、近年はタキシードが夜の正礼装に昇格したと見なす向きがある。

燕尾服(ホワイトタイ)の構成は、「テイルコート(日本では「燕尾服」)」というモーニングコートと同じく後裾の長いジャケット、ジャケットと共布のパンツ、白無地の襟付きベストからなる。

モーニングコートとテイルコートの違いは、モーニングコートが前裾から後裾にかけて斜めに切られているのに対して、テイルコートの前裾は四角く切られているところにある。

それから、「ホワイトタイ」は白の蝶ネクタイを指し、白のベストと合わせてジャケットとパンツの黒に対するコントラストが印象に残る。

それでもプロトコールは時間に厳格である

「昼の礼装」としてモーニングに準ずるディレクターズスーツが知られていないことや、「夜の礼装」ではタキシードが燕尾服に取って代わったことを差し引いても、プロトコールでは昼夜の礼装を明確に分けている。

具体的な例としては、天皇陛下が内閣総理大臣や最高裁判所長官を任命する儀式「親任式」では、(夜に行われることもあるが)モーニングを使うのが通例である。

天皇・皇后が国賓をもてなす宮中晩餐会の参加者は燕尾服またはタキシードを使う。日本国外ではオーケストラの指揮者やノーベル賞授賞式の参加者が使う。

つまり、一つの儀式または宴の中で、モーニングまたはディレクターズスーツと燕尾服またはタキシードが共存することはない。モーニングやディレクターズスーツは昼間の儀式、式典に限定され、燕尾服やタキシードは夜間の宴、観劇、音楽会に限定されている。

しかし、必ずしも「昼」と「夜」という分け方は適当でないかもしれない。「昼の礼装」と「夜の礼装」が共存することはないが、その使い分けは「昼」か「夜」ではなく、「儀式」か「宴」でも分けられるからだ。

この点は飯野高広が「紳士服を嗜む」に書いている。親任式が夜に行われるときもその参加者がモーニングなのは、親任式が「儀式」であるからというのは納得がいく。

プロトコール(ドレスコード)から服装がもっとよく分かる

礼装は「全体」が大切であることを教える。礼服と(ビジネス)スーツは切り離せない。本来の型を知っているから自分の型を作れる。したがって、プロトコール(ドレスコード)から服装がもっとよく分かる

礼装は「全体」が大切であることを教える

礼装は、ジャケットやパンツといった「部分」ではなく、カフスボタンやポケットチーフといった身に着ける小物や、それらのディテールまでも細かく決めた「全体(トータルコーディネート)」で表現する。

例えば、礼装ではパンツの裾は折り返しのないシングルが原則だし、昼の礼装では靴は黒革のストレートチップであるのに対し、夜の礼装ではそれがエナメルのパンプス(オペラパンス)になる。

「モノ」としてのモーニング(コート)やタキシードは「礼服」であるが、それらのジャケットやパンツ「だけ」を使うことはないから、単に「モーニング」「タキシード」と言っても、全体の装いとしての「礼装」を指すことができるのだ。

礼服と(ビジネス)スーツは切り離せない

現代の(ビジネス)スーツは、礼服が大衆化するときに起こった簡略化の結果である。だから、スーツには礼服のエッセンスが詰まっているし、服装としてのスーツ(スタイル)は礼装の考え方に準ずることが多い。

例えば、昼の礼装では黒革のストレートチップを履くことから、ビジネスで使うスーツでも黒革のストレートチップは最も格式が高いという認識があり、実際のビジネスでも多用されている。

礼服のパンツで裾をダブルにすることはないから、スーツを礼服から差別化するためにパンツ裾をダブルにすることもある。このように礼服はスーツを考えるとき、ある種のベンチマークとして使える。

本来の型を知っているから自分の型を作れる

「一般的に結婚式の新郎はタキシードを使う」からタキシードを使うのと、「昼の結婚式では昼の礼装を使うものだが、今の時代は昼の結婚式でもタキシードを使うことが多い」ことを考慮してタキシードを使うのは全く違う。

後者の考えから結婚式のタキシードを選ぶなら、本来のタキシード(ブラックタイ)から色やディテールを変えることで、自分らしい納得のいく服装ができる。

プロトコール(ドレスコード)が指定されているときは別として、儀式や宴では「礼装」かくあるべきと頭でっかちにならず、変化を受け入れながらも本来の型を知り自分らしさを表現するのが今のやり方である。

スタンスミスの合皮化は天然皮革が使われない未来を予測している

スタンスミスはアディダスのアイコンである。合皮化でサステナビリティにコミットする。天然皮革の生産量は少なくなる。したがって、スタンスミスの合皮化は天然皮革が使われない未来を予測している

スタンスミスはアディダスのアイコンである

アディダスで最も有名な靴である。どんな服装にも合わせられる。誰にでも履きやすい。したがって、スタンスミスはアディダスのアイコンである

アディダスで最も有名な靴である

アディダスのスタンスミスはスニーカーの定番といえば必ず名前が上がる靴の一つであり、日本の靴小売業界では単独首位を走るABCマートが別注(廉価)モデルを展開するほど人気がある。

スタンスミスの知名度は世界でも認められていて、1971年の発売から1991年までの20年間に「世界で一番売れたスニーカー」としてギネスブックに認定されている。

とはいえ、近年はナイキのスニーカーが強いことも事実だ。アメリカの市場調査会社が発表した統計"Sneakernomics 2021 Year in Review"1によると、2021年のスニーカー売上はナイキのエアフォース1から始まってトップ5がナイキである。

どんな服装にも合わせられる

これまでのスタンスミスのアッパーには天然皮革が使われていて、2021年からは天然皮革から合成皮革に切り替わったとはいえ、そのアッパーの上質さはカジュアルだけでなくビジネスカジュアルにまで使えるデザインだ。

全体的に見ても、シュータンにスタン・スミスの顔とバックにアディダスのロゴがプリントされている以外に装飾性はなく、非常にシンプルかつ上質なデザインのスニーカーであると分かる。

誰にでも履きやすい

スタンスミスはテニスシューズを原形として作られたためか、インソールにクッション性があって長時間履いていても疲れにくい。

実際、スタンスミスの原型はアディダスとフランス人テニスプレイヤーのロバート・ハイレットが開発した「ハイレット」にある。このハイレットをベースにアメリカでアディダスの認知度を上げるため、アメリカ人テニスプレイヤーのスタン・スミスの写真を使った「スタンスミス」が生まれた。

合皮化でサステナビリティにコミットする

全てのプラスチックがリサイクル素材になる。皮革でもサステナビリティを追求する。合皮化なくしてループシステムは拡大できない。したがって、合皮化でサステナビリティにコミットする

全てのプラスチックがリサイクル素材になる

アディダスは2024年までに全ての製品のポリエステルをリサイクルポリエステルに移行する。アディダス製品に使われているプラスチックのうち、どれだけポリエステルが使われているのかは分からないが、一般的にスポーツウェア・シューズの多くがポリエステルで構成されている。

2021年には全製品の60%以上がリサイクルポリエステルに移行していることから、2024年までにこの比率を100%に上げることは非現実的な話ではない。

現在、アディダスが使うプラスチックにはリサイクル素材が40%以上使用されている「プライムブルー」と、100%リサイクル素材だけで作られる「プライムグリーン」がある。

プライムブルーは海洋プラスチックごみをリサイクルして作られるが、バージンプラスチックとリサイクルプラスチックのミックスであり、100%リサイクル素材ではない。

つまり、アディダスの目標である「2024年までに全てのプラスチックをリサイクル素材へ切り替える」は、通常のプラスチックとプライムブルーをプライムグリーンに切り替えることで達成される。

現状のプライムブルーでは100%リサイクル素材への切り替えは達成できないし、そもそも海洋プラスチックごみの調達や品質が安定しないことから、今後プライムブルーは消えていくものと考えられる。

皮革でもサステナビリティを追求する

アディダスにとっての「サステナビリティ」は、プラスチックだけでなく動物性素材の使用を減らすことにもある。この動物性素材には皮革や毛皮が含まれる。

アディダスは全てのプラスチックをリサイクル素材にする以前の2018年にも、調達する全てのコットンを「サステナブルコットン」にしている。つまり、コットン、プラスチック、レザーと順を追って素材の切り替えを進めているのだ。

しかし、レザーはプラスチックのように回収する仕組みがなく社会の中で循環していない。だから、リサイクルレザーはリサイクルプラスチックほど一般的ではない。

そこで生まれたのがプライムグリーンを使ったスタンスミスだ。レザーをプラスチックに切り替える(合皮化する)ことで、動物性素材の使用を減らすのではなくその使用自体をなくしてしまった。

それから、アディダスはキノコ類の菌糸体(マイセリウム)を使ったマッシュルームレザー「マイロ」を発表している。このマイロを使ったスタンスミスが2022年にも発売される予定だ。

合皮化なくしてループシステムは拡大できない

しかし、プライムグリーンのスタンスミスを発表した2020年の段階では、アディダスによるマッシュルームレザーの開発はスタンスミスといったアイコンを全てマッシュルームレザーで供給するほどは進んでいなかった。

それに対して、リサイクル素材を使った合成皮革(プライムグリーン)は大量生産が可能であり、アディダス製品の製造原価を下げられる。つまり、合皮化はアディダスの掲げる三つのループ「リサイクル・ループ」「サーキュラー・ループ」「リジェネレーティブ・ループ」と、アディダスのビジネスの両方を拡大させる方法だったのだ。

三つのループの中で分かりにくいのがリジェネレーティブ・ループだが、リジェネレーションは本来「再生産」といった意味の言葉で、リサイクルやサーキュラーといったマイナスをゼロにする活動だけでなく、ゼロをプラスにするという意味で使われることが多くなった言葉だ。

アディダス製品の中ではマイロを使った製品がその例で、最先端の農業技術を使うとわずか二週間で成長する菌糸体の特性を「自然とのコラボレーション」としている。

天然皮革の生産量は少なくなる

国レベルで植物性タンパク質が推進されている。食肉の消費量が減れば皮革の生産量も減る。天然皮革離れの動きもある。したがって、天然皮革の生産量は少なくなる

国レベルで植物性タンパク質が推進されている

人口増加に合わせてこれまでのペースで食肉消費が増加すると、大量の家畜を飼養するための土地が必要になり、畜産に関わる温室効果ガスの排出や森林破壊といった環境問題にもつながる。

これらの問題を解決するために、カナダやEUは植物性タンパク質や植物ベースの食事開発に投資することを発表していて、それに追随するかたちで企業もこれらの開発に投資を始めている。

グーグルの共同創設者であるセルゲイ・ブリンが動物を殺さない「培養肉」の開発に資金提供をしたり、俳優のレオナルド・ディカプリオが植物由来の「人口肉」を製造・開発する企業に投資をしたりと、世界中で植物性タンパク質の話題は事欠かない。

食肉の消費量が減れば皮革の生産量も減る

服装に使われる皮革は食肉の副産物であり、植物性タンパク質の開発が進み食肉の消費量が減ればすべからくこれら皮革の生産量も減る。つまり、これまでの皮革消費は動物を余すことなく使っている点ではエコであった。

実際、皮を取るために動物を殺すことは禁止されていて、2000年代初頭に起きたBSE問題で牛肉の消費量が落ちたときは皮革の価格が高騰したといわれている。

食肉の副産物として生産される牛革を初めとする一般的な皮革に対して、食肉加工の副産物ではない皮革を「エキゾチックレザー」という。代表的なものではワニやヘビといった爬虫(はちゅう)類やダチョウなどの鳥類から取る皮革だ。

エキゾチックレザーはワシントン条約によってその輸出入が厳しく制限されているだけでなく、前述したように食肉加工の副産物ではないことから、その使用を廃止したブランドもある。例えば、2018年にはシャネルがエキゾチックレザー製品の廃止を宣言して話題になった。

天然皮革離れの動きもある

そもそも副産物としての皮革から作られた製品であっても、天然皮革を使った製品は使用しないという流れ(ある種のトレンド)もある。

近年は「動物福祉」という言葉が広く認知されてきているように、動物性素材(製品)に対して漠然とした嫌悪感を抱く人もいる。牛革などの一般的な皮革はエコなものであるが、その流通経路を無視して動物性素材(製品)を使わないと決めている人がいることは事実だ。

同時に合成皮革の技術が上がったことで、パッと見だけでは天然皮革と見分けができない質感を持っていたり、合成皮革の特長(雨に強いことや相対的に安いこと)を生かしてあえて合皮を選ぶという選択肢も出てきた。

天然皮革は二百万年前(旧石器時代)から食肉の副産物として使われている人類最古のリサイクル素材ともいえるが、現代に生きる人はその歴史の転換点に立っているのかもしれない。

マワハンガーはシルエットを中心に厳選した方が真価を発揮できる

マワハンガーのシルエットは汎用性があるハンガーだ。ジャケットやパンツにもマワハンガーは使える。マワハンガーの真価は厳選による全体最適化にある。したがって、マワハンガーはシルエットを中心に厳選した方が真価を発揮できる

マワハンガーのシルエットは汎用性があるハンガーだ

マワハンガーはシャツ用だけでも商品が多い。エコノミックはシャツの種類を選ぶ。シルエットはシャツの種類を選ばない。したがって、マワハンガーのシルエットは汎用性があるハンガーだ

マワハンガーはシャツ用だけでも商品が多い

マワハンガーはマワ社(MAWA)が作っているハンガーの総称で、シンプルで機能的なことがハンガーとしての特徴だ。それから、用途別にさまざまな商品を展開していることがマワ社の特徴である。

マワ社はドイツの会社であり、日本ではMAWA Shop Japanがマワハンガーの正規輸入代理店となっている。そのMAWA Shop Japanで商品を見ても、シャツ・ブラウス用のハンガーだけで五種類の商品があることが分かる。

シャツ・ブラウス用の定番は「エコノミック」と「シルエット」であり、準定番の「ライト」と、限定的な「SHE」「HE」がある認識だ。

ライトは、ハンガーの形としては定番のエコノミックとシルエットをベースに、バーの厚さをエコノミックやシルエットの10.0mmから2.5mmまで薄くした「超スリムハンガー」である。

バーの厚さを薄くすればそれだけ省スペースにはなるが、従来のエコノミック、シルエットの10.0mmでも十分に省スペースであること、薄くした対価として服にハンガー跡が付きやすいことから、定番にはなり得ないと考える。

それから、SHEやHEはそれぞれ女性向けと男性向けにデザインされたハンガーで、機能性はエコノミックやシルエットと変わらないが、デザインに装飾性がありマワハンガーの特徴であるシンプルさに矛盾していること、使う人の性別を限定することから、限定的なものと考える。

エコノミックはシャツの種類を選ぶ

エコノミックはマワハンガーのアイコンとも言えるハンガーで、肩先の緩やかなカーブがデザインの特徴になっている。しかし、エコノミックの襟回りはフラットになっていて、エコノミックに襟付きシャツを掛けるとハンガーとしての役割を十分に発揮できない。

実際、エコノミックに襟付きシャツを掛けてもハンガーがシャツの襟を支えないことから、シャツの襟の形が崩れてきてしまう。

エコノミックは丸首シャツやニットにはデザインや機能がシックリくるが、使うシャツを選ぶことから汎用性があるとは言えない。

シルエットはシャツの種類を選ばない

シルエットはエコノミックの上位互換とも言えるハンガーだ。襟回りが立ち上がっているから襟付きシャツの襟を支えることができるし、実は丸首シャツやニットにも使える。

シルエットの襟回りの立ち上がりは局所的なもので、服のサイズに合ったハンガーサイズを選んでいれば、丸首シャツやニットの首回りの形を崩すことはない。

シルエットは襟回りが立ち上がっていて角張って見えるが、肩先の緩やかなカーブはエコノミックと変わらない。だから、エコノミックと同じように、シャツにハンガー跡が付くこともない。

しかも、シルエットはエコノミックより汎用性がありながら、価格はなぜかエコノミックよりも安い(2022年3月現在)。

サイズは36、41、45とあるが、ざっくり36は体の小さな人向け、45は体の大きな人向けであり、日本人の平均的な体形であれば41が男女ともに使えるサイズになるだろう。

シャツ用のマワハンガーはシャツにハンガー跡を付けないとは言っても、シャツよりもオーバーサイズのマワハンガーを使えば、シャツにハンガー跡を付けたりシャツの型崩れにもつながってしまう。

ジャケットやパンツにもマワハンガーは使える

マワハンガーはシャツ以外にも使える。ジャケットにはボディーフォームが使える。パンツにはパンツシングルが使える。したがって、ジャケットやパンツにもマワハンガーは使える

マワハンガーはシャツ以外にも使える

マワハンガーにはシャツ・ブラウス用以外にも、ジャケット・スーツ・コート用、パンツ・スカート用、アクセサリー用とさまざまな用途に合った商品がある。

例えば、アクセサリー用としてはネクタイを16本掛けられる「ネクタイ」や、ベルトを4本掛けられる「ベルト」、汎用性があるフック状の「アクセサリー」など、いずれも省スペースでノンスリップなマワハンガーの特徴は共通している。

ジャケットにはボディーフォームが使える

ジャケットに使えるマワハンガーとしては、横から見たときに前に傾斜した立体的な作りになっている「ボディーフォーム」が最適だ。

ジャケットのような「洋服」は、曲線で裁断された生地を立体的に縫い合わせているから、服装としても立体的な作りになっている。だから、ハンガーも立体的な方が服装の持つ立体を生かすことができる。

「プレステージ」はボディーフォームとは違って直線的な作りのハンガーである。「オプティクローム」はボディーフォームと同じような立体的な作りではあるが、特殊コーティングを肩の部分にしかかけないことでクロームメッキを際立たせるデザイン性の高い商品である。

それから、シャツ用と同じく「SHE」「HE」は性別ごとにデザインしたもので、用途が限定的になってしまう。

パンツにはパンツシングルが使える

パンツを掛けるハンガーは、シンプルにパンツを一枚だけ掛ける「パンツシングル」がいい。掛けるだけなら二枚掛けられる「パンツダブル」もあり、こちらはより省スペースになるメリットがあるがデメリットもある。

パンツダブルは、一枚のパンツを取るためにパンツ二枚分の重さを持たなくてはならないので、実際に使っているとストレスになる。これは、ジャケットとパンツをセットで掛けられる類いのハンガーも同じだ。

「掛ける」ハンガー以外に「挟む」ハンガーもある。「ズボンツリ」「ウエスト」「スカートミニ(エル)」「クリップ」の四種類で、パンツにはスカートミニ(エル)以外の三種類が使える。

これら挟むハンガーの違いは、パンツのどこを挟むのかにある。ズボンツリは裾を挟むもので、一般的にパンツは裾よりも腰の方が重いため、裾を挟んで掛けることによって、パンツ自体の重さでしわが伸びる。

それに対して、腰を挟むのがウエストである。裾は二手に分かれているから挟むのが手間だが、ウエストならその手間は少なくなる。クリップはどちらにも使える汎用的なものだ。

しかし、そもそもパンツをハンガーに掛けるたびに「挟むこと」自体が手間だし、挟む力によってはパンツが落ちてしまうこともある。

マワハンガーの真価は厳選による全体最適化にある

「個」の機能では木製ハンガーに劣る。マワハンガーは個よりも全体で生きる。全体といっても最低限の厳選は必要だ。したがって、マワハンガーの真価は厳選による全体最適化にある

「個」の機能では木製ハンガーに劣る

マワハンガーには「省スペース」「ノンスリップ」といった機能的な特徴があるが、木製ハンガーの持つ「安定感」や「除湿性」はない。

マワハンガーは限られたスペースで効率的にその機能を発揮することを目的に作られていて、十分なスペースで木製ハンガーを使うことから得られる価値とは、同じ前提を共有していないため比べることができない。

ハンガーを掛けるスペースを小さくすることよりも、大きなスペースを使ってハンガーに服装を掛ける以上の機能(例えば、湿気を吸うことなど)を求めるなら、その最適解は木製ハンガーになる。

それから、マワハンガーは金属と樹脂で作られているから、木製ハンガー特有の木の匂いもないし、木製ハンガーが持つ高級感もない。

マワハンガーは個よりも全体で生きる

マワハンガーが生きるのは木製ハンガーを横に並べて比較したときではなく、ハンガーをマワハンガーでそろえたときである。

マワハンガー一本でも十分に省スペースではあるが、それが十本、二十本と増えていけばマワハンガーが節約するスペースの大きさはばかにならない。

それから、マワハンガーは複数本を並べたときにもきれいに並ぶよう作られているから、全体の見栄えも隙間なくピッチリと並べられてきれいに見える。

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全体といっても最低限の厳選は必要だ

しかし、いくらマワハンガーが省スペースだと言っても、マワ社の豊富な商品ラインナップから複数種類のマワハンガーを選んで使っていては、その機能を十分に発揮できない。

例えば、ボディーフォームは前に傾斜した立体的な形をしているから、ボディーフォームだけを並べれば問題はないが、ボディーフォームと直線的な形のシルエットをピッタリと並べることはできない。

それから、エコノミックとシルエットは襟回りがフラットか立ち上がっているかが異なるため、エコノミックとシルエットの両方を使っていると見え方にも統一感がなくなる。

服装はそれ自体に価値があって、ハンガーは服装を収納するための道具ではあるが、その道具を厳選しておくことが服装を厳選することにもなる。

あらかじめ決めておいたスペースとハンガーの数以上には服装を増やさないこと、そのような価値観に共感ができるなら、マワハンガーはそれを実現するために最適なハンガーである。

鎌倉シャツのイージーケアと衣類スチーマーは最高の組み合わせだ

鎌倉シャツのイージーケアは現代のクラシックである。衣類スチーマーは鎌倉シャツのイージーケアには十分すぎる。あらゆるコストを削減してクラシックを再現できる。したがって、鎌倉シャツのイージーケアと衣類スチーマーは最高の組み合わせだ

鎌倉シャツのイージーケアは現代のクラシックである

鎌倉シャツはクラシカルなシャツに強い。イージーケアでもクラシックである。特許があるからまねできない。したがって、鎌倉シャツのイージーケアは現代のクラシックである

鎌倉シャツはクラシカルなシャツに強い

鎌倉シャツは服装が分かる人をターゲットにしている。だから、クラシカルな服装を再現するためには抜かりがなく、鎌倉シャツが作るシャツはクラシックの本道である。

鎌倉シャツのモットーは「世界で活躍するビジネスパーソンをシャツで応援する」ことだ。鎌倉シャツは「世界で活躍するビジネスパーソン」を「洋装のルールを理解、実践してビジネスの場で活躍する人」としているから、鎌倉シャツのターゲットはクラシックを理解している人である。

それから、鎌倉シャツは1993年の創業から世界に唯一無二の最高のシャツ作りにまい進してきた会社で、「唯一無二のシャツ」の条件の一つに「素材」を上げている。

今でこそ鎌倉シャツはシャツ以外のアイテムも作っていて「ウール」や「カシミア」といった素材にも力を入れているが、鎌倉シャツの定番はコットンで作られたベーシックシャツであり、このことからもクラシカルなシャツ(=コットンで作られたシャツ)にこだわりがあることが分かる。

イージーケアでもクラシックである

クラシカルなシャツはコットンで作られる。このルールを壊してでも鎌倉シャツは現代の要請に答える必要があった。それでもクラシックにこだわる鎌倉シャツが作ったのが、見た目や着心地はコットンシャツと変わらない品質の(=クラシカルな)イージーケアシャツである。

鎌倉シャツは唯一無二の条件の二つ目に「縫製」を上げている。ベーシックシャツで証明された丁寧で立体的な縫製技術はイージーケアシャツでも変わらない。既製シャツではトップクラスの着心地が保証されている。

それから、鎌倉シャツのイージーケアシャツは唯一無二の条件三つ目である「挑戦」そのものでもある。こだわりの「素材」と熟練した「縫製」に新しい「挑戦」をして生まれたのが、鎌倉シャツのイージーケアシャツだ。

特許があるからまねできない

鎌倉シャツが「イージーケア(機能性)」と「クラシック(伝統)」というある種矛盾した条件を満たすために開発した素材(糸)は、特許が取れるほどの挑戦であった。

鎌倉シャツのイージーケアシャツには「パルパープレミアム」という糸が使われている。このパルパープレミアムは2019年に特許を取得していて、鎌倉シャツ以外の会社は使うことができない。

パルパープレミアムを使った生地の最大の特徴は、イージーケアシャツの目的である洗濯後の形状安定性である。一般的に、シャツに形状安定性を持たせるためには素材にポリエステルを使ったり生地に薬品処理をするといった方法が考えられるが、これらの方法では見た目や着心地が犠牲になりやすい。

それに対して、パルパープレミアムは「芯」となる再生ポリエステルにコットンを巻き付けて作られる「糸」であり、パルパープレミアムの表面はコットンである。だから、パルパープレミアムから織られた生地で作られるシャツは、見た目や着心地がコットンで作られるシャツと変わらない。

衣類スチーマーは鎌倉シャツのイージーケアには十分すぎる

衣類スチーマーの目的は「時短」である。ベーシックシャツでもしわが取れる。鎌倉シャツのイージーケアは形状安定性が高い。したがって、衣類スチーマーは鎌倉シャツのイージーケアには十分すぎる

衣類スチーマーの目的は「時短」である

そもそも衣類スチーマーの目的は「しっかりしわを取ること」ではなく、「しわを取る時間を節約すること」にある。だから、新品のようにのり付けされたシャツを着たいなら、時間をかけてアイロンがけをするかクリーニングに出すべきだ。

衣類スチーマーではしわが取れないという人がいるが、それは「しわ取り」に求める基準が高く、「しわを取ること」を重視しているからだ。衣類スチーマーはアイロン台を使ったプレスよりもしわが取れないことは事実だが、しわが取れること自体は事実である。

近年、衣類スチーマーがアイロンに代わって普及してきた背景には、洗濯後にハンガーを使って干した衣類に対して、そのままの状態でしわ取りができることの価値が認められてきたからだ。

衣類スチーマーの性能が上がったとはいっても、アイロンでプレスするようにしわが取れることはない。しかし、それ以上にアイロン台を準備する手間やハンガーからの掛け外しといった手間を省けることが人気の理由である。

ベーシックシャツでもしわが取れる

衣類スチーマーは「しわがないこと」を重視する人には向かないが、「しわがないこと」よりも時短を重視する人だったら、形状安定性のない鎌倉シャツのベーシックシャツにも使える。

2022年2月現在、パナソニックの衣類スチーマーの上位モデルである「NI-FS770」を使っているが、鎌倉シャツのベーシックシャツでも外に着ていけるレベルまでのしわ取りができている。

アイロンとアイロン台を使ってプレスしたときよりもしわが取れていないことは事実だが、衣類スチーマーでしわ取りをしただけでも外に着ていける(左がベーシックシャツで右がイージーケアシャツ)。

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鎌倉シャツのイージーケアは形状安定性が高い

シャツの形状安定性は、アパレル製品等品質性能対策協議会が定める基準の通称「ウォッシュ&ウェア性」によって1.0級から5.0級までで評価できる。鎌倉シャツのイージーケアシャツはこのウォッシュ&ウェア性で3.5級を獲得している。

世の中で「形状安定シャツ」として売られているシャツは、ウォッシュ&ウェア性で3.2級以上を獲得している。だから、鎌倉シャツのイージーケアシャツが獲得している3.5級は、形状安定シャツの基準値よりも形状安定性が高い。

ウォッシュ&ウェア性が3.2級のシャツで洗濯後のしわカット率が50%、4.0級のシャツでは90%とされている。だから、イージーケアシャツ(3.5級)のしわカット率は70%前後といったところだろう。実際は衣類スチーマーを使わなくても、洗濯後にしわを伸ばして干せばそのまま外に着ていけるくらいの性能はある。

あらゆるコストを削減してクラシックを再現できる

衣類スチーマーはランニングコストがかからない。イージーケアの付加価値コストがあまりにも低い。イージーケアは既製シャツでトップクラスにクラシックだ。したがって、あらゆるコストを削減してクラシックを再現できる

衣類スチーマーはランニングコストがかからない

衣類スチーマーにかかるコストは最初に買うときのイニシャルコストを除くと、スチームのための水道代や動かすための電気代くらいで、ランニングコストはほとんどかからない。

それに対して、シャツをクリーニングに出せばクリーニング代がかかるし、クリーニング屋への往復時間もかかる。時間という観点ではアイロンがけも衣類スチーマーより高コストだ。

それから、アイロンにはアイロン台が必要だから、アイロンとアイロン台を置くスペースが必要になる。衣類スチーマーにはアイロン台が必要ないから、衣類スチーマーを置くスペースだけでいいこともコスト削減になっている。

イージーケアの付加価値コストがあまりにも低い

鎌倉シャツのイージーケアシャツは、クラシックなベーシックシャツの見た目や着心地はそのままに、洗濯にかかる手間を最小化できる価値を付加したものだ。それにもかかわらず、その付加価値にかかるコストが低い。

鎌倉シャツのベーシックシャツは5,900円とそれだけでもリーズナブルだが、イージーケアシャツの6,900円は付加価値コストをわずか1,000円に抑えている。

しかも、鎌倉シャツではふるさと納税を使った寄付でギフトカードがもらえる。還元率は30%に固定されているが、100,000円を寄付すれば30,000円分のギフトカードがもらえるから、実質負担は2,000円でイージーケアシャツを四枚買うといったことができる。

イージーケアは既製シャツでトップクラスにクラシックだ

何度でも言うが、鎌倉シャツが作るシャツはベーシックもイージーケアもクラシックの本道であり、既製シャツではトップクラスにクラシカルなシャツだ。そして、イージーケアシャツはベーシックシャツから見た目や着心地は変わらない。素材にコットンではなくパルパープレミアムを使っているという事実と、1,000円の価格アップだけがベーシックシャツから変わる点だ。

例えば、シャツは下着であるという前提から胸ポケットを付けないことや「裏前立て」「背ダーツ」といった作りは、こだわりを持ってオーダーシャツを作るときに考える仕立てで、鎌倉シャツ以外の既製シャツで当然のように備えているものは非常に少ない。

鎌倉シャツのイージーケアシャツが「イージー」なのは手間(ケア)だけで、それ以外はオーダーシャツに近い水準にクラシカルで丁寧かつ立体的に作られている。安い形状安定シャツならいくらでもあるが、低価格と高品質を両立した形状安定シャツは鎌倉シャツのイージーケアシャツだけだ。

モンベルのパーマフロストダウンパーカはアクティブ派が買うべき

パーマフロストダウンパーカはコスパ最強の防寒着だ。また、アクティブ派にオーバースペックはオーバーではない。そして、インドアメインだとオーバースペックなことは事実だ。したがって、モンベルのパーマフロストダウンパーカはアクティブ派が買うべき

パーマフロストダウンパーカはコスパ最強の防寒着だ

モンベルは実用性を重視した服装をつくる。防寒性能は価格の差で妥協してはいけない。パーマフロストダウンパーカは妥協しない。よって、パーマフロストダウンパーカはコスパ最強の防寒着だ

モンベルは実用性を重視した服装をつくる

モンベルのコンセプトは"Function is Beauty"と"Light & Fast"である。日本語では「機能美」「軽量と迅速」だ。これらの言葉から分かるように、モンベルのモノづくりは実用性にステータスを振っている。

モンベル創業者の辰野勇自身が日本のトップクライマーだ。だから、モンベルは登山などのアクティビィティで本当に「使える」アウトドア用品をつくるために創業されたといえる。

アウトドアブランドのなかには、本格的なアウトドア用品をつくるブランドと、それらを模倣したファッションとしてのアウトドア用品をつくるブランドがある。モンベルは間違いなく前者に分類されるブランドだ。

アウトドア用品の優劣は技術の差で比べられることが多い。この技術という点でも、モンベルは最先端の素材を使ったり独自の技術を開発することで、アウトドア用品全体のバリューアップに貢献してきた。

防寒性能は価格の差で妥協してはいけない

ダウンジャケットのようなアウターは重ね着をする服装ではない。体温が上がったときはアウターを脱げば済むが、体温が下がったときに持ち歩いている以上の服装を着ることはできない。つまり、「防寒」が目的のアウターに妥協はない。

防寒アウターの価格にはふたつのプレミアムが乗っている。ひとつは「防寒性能」であり、もうひとつが「ブランドライセンス料金」だ。後者のウェイトが大きい一部のブランドを除けば、防寒アウターの価格は防寒性能と比例している。

たとえば、モンベルの「パーマフロストダウンパーカ」は、ユニクロの「ウルトラライトダウン」の五倍の価格だ。当然この価格差と同じように、防寒性能が五倍になるわけではない。

しかし、パーマフロストダウンパーカには、ウルトラライトダウンでは再現できない防寒性能がある。そして、その性能差を価格面で妥協してしまうと、対「寒さ」の点でリカバリーすることができなくなる。

パーマフロストダウンパーカは妥協しない

モンベルのダウンジャケットのなかでも、パーマフロストダウンパーカは最高ランクに近い「保温性」を持っている。街着としても使えるダウンジャケットでは、もっとも高い保温性だ。

モンベルのダウンジャケットの保温性は、「ポーラーダウン」「ベンティスカダウン」の順番で高い。しかし、ふたつとも登山向けのデザインになっている。ポーラーダウン、ベンティスカダウンの次に保温性が高いのが、パーマフロストダウンパーカになる。

パーマフロストダウンパーカもモコモコと厚みがあるが、フードのデザインが控え気味で街着としても着られる。

生地の構造は上位モデルと同じ「ボックス構造」になっている。ダウン入り生地の表地と裏地を一定間隔で縫い合わせる「シングルキルト構造」とは異なり、ダウン入りの箱をつなぎ合わせて生地をつくるイメージだ。

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アクティブ派にオーバースペックはオーバーではない

オーバースペック議論には上限がある。アクティブ派は上限がないことも多い。ゆえに、アクティブ派にオーバースペックはオーバーではない

オーバースペック議論には上限がある

そもそも何かがオーバースペックであるという主張には、オーバーする「スペック」という名の「枠組み(上限と下限)」が前提にある。つまり、基準となる枠組みがなければ、オーバースペック議論はできない。

「この車の性能は公道ではオーバースペックである」という主張には、公道には速度や道路幅といった制限があることを前提にしている。この前提が誰でも知っていることであればあるほど、この主張の説得力が上がる。

しかし、この主張を制限速度や道路幅が日本とはまったく異なる地域に住む人が聞けば、前提となる枠組みも異なるために主張の確からしさは下がってしまう。

アクティブ派は上限がないことも多い

冬場は車や公共交通機関でしか移動せず、その移動範囲が都心部に集中している人には、アクティブ派の寒さの上限が分かりにくい。雪山を登山する純粋なアクティブ派でなくても、寒さの上限は簡単に上がる。

たとえば、冬場にバイクや自転車を運転する人は、体の正面から冬の冷たい風を受ける。だから、ダウンジャケットには保温性だけでなく、表地から風を通さない「防風性」も必要だ。

防風性がなければ、たとえ保温性に優れたダウンジャケットであっても、すぐに体温は下がってしまう。少しでも屋外アクティビティで使うことを想定するなら、「街着」でのスペックだけで防寒着を選んではいけない。

インドアメインだとオーバースペックなことは事実だ

ダウンの品質が登山用レベルに高い。ウインドストッパーが風を通さない。マフラーなしで首周りが温められる。よって、インドアメインだとオーバースペックなことは事実だ

ダウンの品質が登山用レベルに高い

パーマフロストダウンパーカの保温性は、モンベルのダウンジャケットのなかでは三番目に高い。そして、パーマフロストダウンパーカより保温性が高いポーラーダウンとベンティスカダウンは、雪山登山でも使えるレベルだ。つまり、パーマフロストダウンパーカは雪山登山用途に匹敵する保温性があるということだ。

ダウンジャケットの保温性を測る指標のひとつに「フィルパワー(FP)」がある。ダウンとは「ダウンフェザー(羽毛)」のことだが、羽毛1オンスあたりの体積をフィルパワーで表す。つまり、フィルパワーが高いほど羽毛の嵩が高く、品質の高いダウンとされる。

フィルパワーによる羽毛の品質には基準があり、600〜700FPは良質、700FP〜は高品質とされる。モンベルは高品質のなかでもとくにフィルパワーが高い800FP以上の羽毛を、「EXダウン」と呼んでいる。

パーマフロストダウンパーカで使う羽毛は800FPであり、ポーラーダウンやベンティスカダウンと同じである。モンベルには900〜1000FPの羽毛を使ったダウンジャケットもあるが、保温性はパーマフロストダウンパーカよりも低い。

フィルパワーは羽毛単位での品質を表している。すなわち、保温性との相関はあるが、ジャケットとしての保温性をフィルパワーだけで議論できるわけではない。

具体的には、フィルパワーが高いダウンジャケットでは、使用する羽毛の量を減らして保温性を上げることができる。だから、モンベルにおける900〜1000FPのダウンジャケットは、軽量な中間着として設計される傾向がある。

これがパーマフロストダウンパーカよりもフィルパワーが高い羽毛を使ったダウンジャケットの保温性が、パーマフロストダウンパーカよりも低い理由だ。

ウインドストッパーが風を通さない

パーマフロストダウンパーカは、表地に「ゴアテックス インフィニアム ウインドストッパー」を使っている。この素材の特徴は、高い「防風性」と「透湿性」にある。

高い「防風性」「透湿性」とは、外部から内部への風は通さないが、内部で発生した汗(水蒸気)は外部へ排出する仕組みだ。つまり、風が強く気温の低い天候でも、アクティブに過ごせるのがウリになる。

しかし、実際には暖房の効いた屋内で暑いと感じる状況になると、その暑さを外部へ逃すほどの透湿性はない。あくまでも悪天候の屋外アクティビティを想定しているため当然だ。

一方、防風性の高さはホンモノで、本当に防風性が高いからこそ屋内では風を取り入れられず、暑いと感じてしまう。

それから、撥水加工もされているため、多少の雨なら生地に染み込まずに防げてしまう。ゴアテックスといえば「防水性」なので、ゴアテックスの防水性を撥水性に買えた素材がインフィニアムだといえる。

マフラーなしで首周りが温められる

マフラーをすると体が温まるのは、首の皮膚表面近くに動脈が通っているためだといわれる。パーマフロストダウンパーカは、しっかりと羽毛の入った高い襟が付いていて、この襟がマフラーの代わりになる。さらには、高い襟のおかげで風がジャケット内部へ侵入するのを防いでくれる。

ダウンジャケットの暖かさのキモは、ジャケットと下着の間にできる「空気の層」だ。この空気の層が冷えれば、ダウンジャケットの性能は最大限に発揮できない。

ダウンジャケットがつくる空気の層を冷えさせない機能が「防風性」である。街中を歩いたりしているかぎりは、よほどの強風でないかぎり、ダウンジャケット内部の空気の層が冷えることはない。

しかし、バイクに乗ったりと正面から風を受ける環境では、防風性が低かったり隙間があると、ダウンジャケットに風が侵入してすぐに空気の層は冷えてしまう。

東京の冬場の気温であれば、パーマフロストダウンパーカと下着と中間着が一着ずつで冬場のバイクを乗り切れる。少し寒いと感じれば、中間着を増やせば十分に暖かい。

一方、襟はマフラーのように取り外せないため、暑いと感じても体温を調節することが難しい。襟を開いても、シャツのように首に沿わせるかたちで襟が存在しているため、外部から風を取り入れることができない。

ケンフォードのKB48を履き捨てるならジャランやスコッチを買おう

ケンフォードのKB48は安価な定番である。また、履き捨てることが最善の策になってしまう。そして、長い目で見るとジャランやスコッチは安い。したがって、ケンフォードのKB48を履き捨てるならジャランやスコッチを買おう

ケンフォードのKB48は安価な定番である

ケンフォードはリーガルのサブブランドだ。ケンフォードはリーガルよりも買いやすい。KB48はケンフォードを代表するモデルだ。よって、ケンフォードのKB48は安価な定番である

ケンフォードはリーガルのサブブランドだ

ケンフォードのウェブサイトには「リーガルの品質や履き心地を正統に受け継ぎながら、・・・」といったことが書かれている。つまり、ケンフォードとリーガルのコンセプトは同じだ。

ケンフォードのブランドコンセプトは、リーガルがつくる伝統的な革靴をより多くの消費者へ届けることだ。つまり、リーガルの革靴を否定せず、リーガルコーポレーションとしてターゲットの拡大を考えていることが分かる。

リーガルとケンフォードの関係は、通信キャリアでいえばauに対するUQ mobileや、SoftBankに対するY!mobileといったところだ。菅内閣からの要求で誕生したahamoやpovo、LINEMOは、メインブランドの料金プランという位置付けのため、立ち位置が異なる。

通信キャリアのようなサービスではなく、モノを対価に利益を得るリーガルにとっては、リーガルブランドとして(リーガルの品質で)低価格な革靴を導入してしまうと、高価格の革靴から得る利益を取り戻す方法がなくなってしまう。

ケンフォードはリーガルよりも買いやすい

それでは、具体的にどのような方法でケンフォードがリーガルコーポレーションのターゲットを広げているのかというと、リーガルに対して30〜50%ほどの価格設定にある。

リーガルはブランド内で価格の振れ幅が大きいが、グッドイヤーウェルト製法の革靴は3.5〜4.5万円はする。一方、ケンフォードの革靴は1.2〜1.7万円とリーガルよりも圧倒的に低価格だ。

ケンフォードが「リーガルの品質や履き心地を正統に受け継ぎながら」も、リーガルより価格を下げることができる理由は、革靴の製法によるところが大きい。

ケンフォードの革靴はセメント製法でつくられている。セメント製法はアッパーと底材を接着剤で貼り合わせるため、構造が単純で大量生産に向く。だから、グッドイヤーウェルト製法の革靴よりも安価に仕上げることができる。

KB48はケンフォードを代表するモデルだ

KB48は「内羽根」「ストレートチップ」の革靴だ。内羽根のストレートチップはもっともフォーマルな革靴であるが、ビジネスシーンで使われることが多いことから、ビジネスの定番にもなっている。

KB48のキャッチコピーも「ブランドコンセプトを100%体現するドレスシューズ」となっており、ケンフォードが自信を持って販売しているモデルといえる。

内羽根やストレートチップについて少し補足をする。そもそも革靴は「紐靴」と「それ以外」に分類できる。紐靴とそれ以外では、紐靴のほうがフォーマルだ。

紐靴のレースステイ(紐を通す「アイレット」があるところ)は「内羽根」と「外羽根」に分類でき、内羽根のほうがフォーマルである。

紐靴のトゥ(つま先)のデザインでは、「ストレートチップ」のほかに「パンチドキャップトゥ」や「プレーントゥ」がある。ストレートチップはこれらのなかでもっともフォーマルであるとされる。

以上が、内羽根ストレートチップが革靴でもっともフォーマルであるとされる理由だ。

履き捨てることが最善の策になってしまう

メンテが導入コストを上回るなら新調する。セメント製法はソール交換ができるが高い。ゆえに、履き捨てることが最善の策になってしまう

メンテが導入コストを上回るなら新調する

革靴のメンテナンスといえば、ソール(底材)の交換を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、ソールの交換にかかるコストで革靴そのものが買えるなら、わざわざソールを交換する人は多くないはずだ。

革靴のソールをメンテナンスするときは、ヒール(かかと)やトゥだけでも2,000〜3,000円かかる。オールソール(ソール全体の交換)になると、ラバーソールでも10,000円以上になる。

しかも、革靴を履いていて消耗するのはソールだけではない。アッパー(甲)も内外からの衝撃で消耗していく。だから、ソールの交換コストが革靴の買い替えコストより低くても、その差が小さければ小さいほど、ソール交換のメリットが見えてこない。

セメント製法はソール交換ができるが高い

そもそもセメント製法の革靴はソールの交換(オールソール?)ができないといわれることが多いが、実際にはソールは交換(オールソールも)できる。しかし、オールソールになるとソールを交換してくれる店が限定されることや、グッドイヤーウェルト製法の革靴と同じようなコストがかかるため、セメント製法の革靴を買うよりも相対的に高いことは事実だ。

「セメント製法」「ソール交換」といったキーワードで検索すると、セメント製法の革靴をオールソールしてくれる店は見つかる。オールソールのコストは10,000円以上で、ケンフォードのように安価な革靴を買うのと変わらないコストだ。

セメント製法の革靴でオールソールをするとき、ウェルトを縫い付けてグッドイヤーウェルト製法やマッケイ製法の革靴にすることもできる。当然ながら、セメント製法でソールを貼り合わせるよりも高コストになる。

長い目で見るとジャランやスコッチは安い

トータルコストで比較しないと意味がない。ケンフォードはサブスク的なコスト構造だ。ジャランやスコッチのコストは分散される。よって、長い目で見るとジャランやスコッチは安い

トータルコストで比較しないと意味がない

革靴を買うとき、革靴「そのもの」の価格だけで判断していては少しもったいない。前述したように、メンテナンスのコストがかかるのだから、メンテナンスコストも含めたトータルコストこそが比較の対象となるべきだ。

革靴に使われる「革」の品質は、革靴の価格と相関する。しかし、ソールの耐久性に大きな差はない。つまり、十万円の革靴でもソールの交換は必要であり、交換までの間隔や交換コストは一万円の革靴と変わらない。

ここで結論をいうと、グッドイヤーウェルト製法の革靴はセメント製法の革靴よりもトータルコストは高い。しかし、大切に履き続ければ、その差は(埋まることはないが)縮まっていく。

埋まることのない差は、グッドイヤーウェルト製法の革靴におけるプレミアムとなる。プレミアムは履き続けるとインソールが足の形に馴染んでくることや、全体的に良質な革を使っていることによる見栄えの良さと解釈できる。

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ケンフォードはサブスク的なコスト構造だ

ケンフォードの革靴を買うときは低コストだ。グッドイヤーウェルト製法の革靴と比べれば、使用頻度にもよるが数ヶ月〜二年間にかかるコストは圧倒的に低い。この特徴はまさにサブスクリプション型のサービスと同じである。

たとえば、15,000円のKB48を週二回のペースで履いていれば、二年間で200日履いたことになる。革靴を200日も履けば、オフィスワークがメインでもソールの交換時期が訪れる。KB48の場合はソール交換よりも買い替えが最善策だから、再び15,000円を支払ってKB48を買うとしよう。

KB48を買い替える直前までにかかったコストは、15,000円 / 200日 = 75円 / 日である。買い替えたKB48は再び200日履くと買い替えの時期になるから、その時点のコストも同様に75円 / 日で、日あたり75円のサブスクリプションと考えることができる。

ジャランやスコッチのコストは分散される

ジャランスリワヤやスコッチグレインがつくるグッドイヤーウェルト製法の革靴は、ケンフォードのようなサブスク型のコスト構造ではない。革靴の価格が耐用年数で償却される固定資産のイメージに近い。つまり、長く使えば償却金額も小さくなる。

たとえば、30,000円の98317(ジャランスリワヤの内羽根ストレートチップ)を200日ごとにソール交換する。ソールの交換に20,000円かかるなら、ソール交換前のコストは30,000円 / 200日 = 150円 / 日だ。この時点ではKB48の二倍のコストがかかっている。

しかし、一度ソール交換をして200日経過したときのコストは、( 30,000円 + 20,000円 ) / 400日 = 125円 / 日と、革靴の価格が期間に応じて分散されていることが分かる。それから200日後は117円と、分散効果は低くなるがKB48とのコスト差は小さくなっていく。

さすがにアッパーなどの消耗もあるため、10年で耐用年数を迎えるとする。すると、トータルコストは日あたり110円でありKB48の150%だ。すなわち、最終的にKB48よりは高いものの、KB48の50%がプレミアムとして乗っていると考えられる。

革靴のなかからケンフォードを選ぶ時点で、数千円の革靴よりはしっかりとした革靴を選びたいという意志があるはずだ。だから、このプレミアム分は受け入れられる可能性が高い。

さらに、環境省が掲げるサステナブルファッションといった観点からも、履き捨てを前提に革靴を買うよりも、プレミアムを乗せて満足度の高い革靴を長く履くほうが理にかなっている。