英会話の初心者は瞬間英作文をやるべきか?

英会話で立ち上がるには、コツが必要だ。それまでの英語学習とは、異なる能力をストレッチしなければならない。このようなトレーニングに適した教材として、瞬間英作文というものがある。今回は瞬間英作文についてまとめる。

なぜ「瞬間」英作文なのか?

まず、「瞬間」というところが、非常に重要である。英語にかぎらず、会話には瞬発力が必要だからだ。とくに、英会話の初心者には、この考えが抜けがちだ。

英会話で会話を成立させるには、相手が発信した内容に対して、「瞬間」的に何らかの返答をしなければならない。とくに、英会話は会話中のポーズをきらう傾向がある。

実際のところ、たとえ文法や単語がナチュラルではなくても、なにも言葉を発しないよりは、なにかを発信する意思を見せることが重要だ。

「瞬間英作文」とは?

英会話における瞬発力を鍛えることを目的とした教材に、「瞬間英作文」というものがある。「瞬間英作文」は、簡単な日本語の文章を、「瞬間」的に英訳できるようになるための教材だ。

中学英語で十分に分かる

瞬間英作文をつかった学習で必要な知識は、中学英語の文法と単語だけだ。

じつは、初級英会話で発話する文章のほとんどは、中学レベルの英語知識だけで表現することができる。具体的には、英語の5文型や疑問文、人称代名詞のほか、日常単語などが分かっていれば十分だ。

これまでの日本における英語教育には問題もあるが、学習する内容自体は体系的にまとめられている。とくに、文法や単語の知識は、中学生の学習内容で十分に基礎を網羅している。

フレーズ暗記とは異なる

瞬間英作文とフレーズ暗記は別物だ。その違いは、何に重点をおいて学習するかということと、アウトプットのかたちである。

フレーズ暗記は言葉どおり「暗記」、すなわち、インプットに重点をおいている。アウトプットの際は、記憶というひきだしから、ソリッドなフレーズを取りだして使うイメージだ。いっぽうで、瞬間英作文は「瞬間的に英作文する力」、すなわち、はじめからアウトプットに重点をおいている。また、フレーズはゼロベースで作りだすことが目標になる。そのため、アウトプットされるフレーズは、フレーズ暗記よりもフレキシブルだ。

個人的には、フレーズ暗記は瞬間英作文の次のステップだと考えている。瞬間英作文では、とりいそぎ何かを英語でアウトプットするため、表現の不自然さは無視される。フレーズ暗記は、このような不自然な表現をより自然な表現にするため、長い時間をかけて記憶に定着させていくものだ。

英会話において、このフレーズだけを覚えれば会話ができる、というものはない。それにも関わらず、「初級者向け」フレーズ暗記教材があるのは信じがたい。英会話で早期に立ち上がりたい場合、フレーズ暗記はかえって遠回りにすらなってしまう。

瞬間英作文が最適な理由は?

初級英会話では、とくに、瞬発力を意識するべきだ。瞬発力を意識するためには、瞬間英作文がぴったりな教材である。

英会話で必要な瞬発力が身につく

瞬間英作文でトレーニングをすると、(初級)英会話に必要な瞬発力が身につく。つまり、初級英会話における要求と、教材の目的が一致している。

瞬間英作文でのトレーニングでは、簡単な和文の英訳作業をくりかえす。そうすることで、「瞬間」的に和文を英訳する回路を学習者に構築する。あやしい話ではなく、これはスポーツと同じだ。基本動作をくりかえし練習することで、その動作にかかる時間を最小化できるようになるというわけだ。

ある言語のネイティブは、それまでの莫大な時間と経験から、内容を十分に吟味しなくとも、反射的にその言語で文章を発することができる。このペースに対応するためには、フレキシブルな瞬発力が必要である。

教材として取り組みやすい

瞬間英作文は、あらゆる英語教材のなかでも、取り組みやすい部類の教材だ。

理由はふたつある。ひとつは、瞬間英作文が中学レベルの英語知識で使用できることだ。これにより、学習者を英語レベルによって排斥しない。また、かといって簡単すぎて飽きてしまうということもない。つまり、学習にフォーカスして取り組みやすい構成になっているというのが、ふたつめの理由だ。なぜなら、瞬間英作文はアウトプットに重点をおいているため、インプット中心のフレーズ暗記とは違って、「思考する」プロセスが入るためだ。

対偶的に考えると、瞬間英作文の学習にフォーカスできないのであれば、思考していないということだ。つまり、学習に集中できていないか、すでに瞬間英訳回路が構築できているか、そのどちらかである。

瞬間英作文をどのように使うか?

瞬間英作文のシリーズは何冊かでているが、下記の2冊で英会話は立ち上がれる。

どんどん話すための瞬間英作文トレーニング (CD BOOK)

どんどん話すための瞬間英作文トレーニング (CD BOOK)

  • 作者:森沢 洋介
  • 発売日: 2006/10/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング

スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング

  • 作者:森沢洋介
  • 発売日: 2007/06/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

かならず声に出すべき

瞬間英作文でトレーニングするときのポイントは、かならず声にだして練習することだ。暗唱では意味がない。

暗唱することはできても、実際に発話しようとしてできないことが、往々にしてある。また、実際に声にだすことで、英語のリズムをつかむという意図もある。

基本型で瞬発力の基礎を学ぶ

まずは、基本型(青いほう)をつかって、瞬発力の基礎を学習する。中学レベルの英語知識があれば、理解できないところはない。

基本型は、文法ごとの章立てになっている。そのため、順番どおりに進めていくだけで、徐々に負荷を増やしながら学習することができる。2周、3周とくりかえし学習することにより、はじめは時間がかかっていたものも、次第に学習ペースが上がっていく。

何周か学習していると、どの章もスムーズに英訳ができるようになる。しかし、これは記憶の定着による影響が大きいため、次のシャッフル型にうつる。

シャッフル型で瞬発力を強化する

つぎは、シャッフル型(緑のほう)で、さらに瞬発力を強化していく。

シャッフル型は、基本型の文章を変更して、文法ごとの章立てをやめたものだ。そのため、基本型でスムーズにできたものでも、シャッフル型では時間がかかる。しかし、それがシャッフル型を使用する意味だ。つまり、基本型だけでは瞬発力の基礎学習と暗記に終わってしまうところを、シャッフル型でしっかりと能力として定着させるというわけだ。

何周か学習すると、こちらも記憶に定着してしまう。そのため、最後の仕上げとして、基本型とシャッフル型の2冊をつかって、練習をくりかえす。2冊ともスムーズに英訳ができるようになれば、この学習は終わりだ。これだけやれば、瞬発力が能力として定着したといえる。

実戦でトレーニングする

あとは、実際の英会話において、瞬間英作文の学びを活かしていくことだ。瞬間英作文は初級「英会話」のための教材であるし、初級英会話には「瞬間英作文」が必要である。つまり、英会話と瞬間英作文の両方に取り組むことに、意味があるということだ。

例外があるとはいえ、ほとんどの英文は基本5文型とその変化型で表現することができる。瞬間英作文は基本的な文法を網羅的にトレーニングするため、文法的に表現ができないということはない。

唯一の問題となるのが単語だが、分からない単語は調べればいいし、一番いいのは講師に聞くことだ。それだけで会話になるうえ、自然な表現を学ぶこともできる。また、はじめから自然な言い回しや単語を気にする必要はない。相手へ伝える意思を持って何らかのアウトプットをすることが、より重要だと考えられているからだ。

最後に

英語の学習に近道はない。しかし、遠回りは多いため、それを見極めることが重要だ。

少なくとも、大人が英会話を始めるにあたっては、瞬間英作文は正しいやり方だ。実際に自分も、瞬間英作文で英会話の立ち上がりに成功しているからだ。

日本の英語教育に対する批判は、インプット偏重の学習に対する批判であったことを思い出したい。