ホーズだけがスーツにあう靴下なのでは?

まわりを見ても、スーツにあわせる靴下としてホーズを履いている人は少ない。スーツにあわせるなら、ホーズ以外の選択肢はないと思っている。しかし、ホーズの認知度は低く、普及しない原因にもなっている。今回はホーズの認知度を上げるためにも、ホーズについてまとめる。

ホーズとは?

ホーズとは、靴下のことだ。つまり、ソックスの仲間である。広義には、ソックスもホーズに含まれる場合がある。「長いものには巻かれろ」ということだ。

別名をロングホーズという

ホーズは、別名ロングホーズとも呼ばれる。英語で書くと"long hose"である。"hose"といえば、水をまくホースをイメージするが、ストッキングやソックスのことも"hose"という。

「ロング」ホーズという名前のとおり、丈が長いことがその名の由来だ。一般的には膝下、ふくらはぎを完全におおう長さがある。

ソックスとの違いは長さにある

日本でスーツに合わせる靴下としては、ドレス「ソックス」が普及している。ホーズとソックスの違いは、その長さにある。

ホーズは前述したとおり、ふくらはぎを完全におおう長さだ。いっぽう、ソックスといえば、膝下からくるぶしまでの間でもっとも太い部分、つまり、ふくらはぎがもっとも発達したところまでの長さである。

なぜホーズなのか?

一度ホーズを履けば、そのよさが分かるはずだ。しかし、理由が分からなければ、そもそも、履くこともないだろう。なぜホーズをおすすめするのか、その理由を書く。

履きごこちがよい

ホーズは履きごこちがよい。フィッティングがよいだけでなく、着用中にずり落ちてくることもない。

なぜずり落ちないのかといえば、ホーズはふくらはぎを完全におおっているため、ふくらはぎのもっとも発達したところに引っかかるからだ。念のため断っておくが、引っかかるといっても、必要以上にふくらはぎを圧迫するようなことはない。

いっぽう、ソックスは多くの人が経験しているとおり、頻繁にずり落ちが発生する。これは、ソックスがふくらはぎのもっとも発達したところまでの長さしかないため、ホーズのようにふくらはぎへの引っかかりを実現できないという、構造上の問題である。

耐久性が高い

ホーズには耐久性がある。下着であるホーズは、スーツや靴のような修理を前提としていない。そのため、耐久性があり長持ちすることが、コストパフォーマンスに直結している。

ホーズの耐久性が高い理由は、ソックスのようにずり落ちたりしないことも関係している。なぜなら、ソックスはずり落ちが発生するたびに、引っぱり上げるという動作が必要だ。この動作は、繊維にダメージをあたえ、耐用年数を下げている。また、ホーズは認知度が低いため需要も少なく、ソックスのように安価な商品が少ないことも理由のひとつだ。つまり、ホーズの多くは、しっかりとした製法でつくられた、(相対的に)高価な商品であるということだ。

実際、ユニクロなどのSPAであれば、ソックスは3足1,000円ほどの商品が多い。しかし、ホーズは1足1,000〜2,000円の価格レンジにあることが多く、ソックスよりは高価な商品である。

上品さやマナーがある

ホーズを履くと上品にみえる。このことは、同時にマナーの問題でもある。

ホーズがソックスのようにずり落ちないことの重要性は、スーツでは肌を露出させないというマナーの観点にある。スーツにおけるマナーとは、スーツを着るうえでのルールのことだ。とくに、肌の露出を最小化することは重要であり、脚部が露出することはありえない。このことは、クラシックスーツの記事でも書いた。

実際、椅子に座ったとき、パンツとソックスのあいだの肌(スネ)を露出させている人を、見たことがあるだろう。もしくは、自分がそのようになっていないだろうか?客観的に見て、その光景をどのようにとらえるだろうか?ホーズを履いていれば、少なくともこのような状況にはなりえない。

ホーズはどこで買えるのか?

ホーズの認知度は低いとはいえ、最近は品揃えにも若干の改善がみられるようになった。

国内の老舗にはハリソンがある

国内の老舗ホーズメーカーといえば、ハリソンがもっともメジャーなブランドだろう。一時期は、生産縮小によって一部製品が廃盤となった。しかし、近年はクラシック回帰トレンドの影響もあってか、勢いは盛りかえしているようにも感じる。

ハリソンのホーズは、公式ウェブサイトで購入することができる。また、最近ではアマゾンでも取り扱っているようだ。そのつくりには定評があり、間違いなくおすすめできるブランドである。

とくに、コットン100%の平編ホーズは、肌ざわりもよくおすすめできる。1足1,400円ほどと、低価格なソックスとくらべると、高く感じるかもしれない。しかし、しっかりと編みこまれていて耐用年数も長いため、コストパフォーマンスはいいはずだ。

近年成長している靴下屋にもある

国内にとどまらず、近年その認知度を上げているのが靴下屋だ。靴下屋のホーズは、Tabioというオンラインサイトで購入することができる。

靴下屋は、気づけばホーズを取り扱っていたようだ。数年前までは、国内でホーズを取り扱っているメーカーといえば、ハリソンがほとんどだった。そのため、ここ数年でホーズ分野にも進出を始めたものと思われる。ハリソンのような歴史はないが、製品はしっかりとつくられていて、品質もよい。

実際、化学繊維を混紡したホーズを、2足購入して使用している。いずれも、ホーズの吸いつくような履きごこちがある。また、混紡のため、洗濯しても型くずれしない安定感がある。靴下屋のホーズも、価格はハリソンと同じレンジに入ってくる。

海外ではニットブランド中心である

欧米でスーツに合わせる靴下としては、日本よりはホーズの認知度が高い。そのため、とくにイギリスやイタリアにおいては、ニットブランドを中心にホーズの取り扱いがみられる。

ホーズは、糸から立体的につくられる。つまり、ニッティング(=編む)ということだ。そのため、ニットブランドは技術力を発揮しやすいということだろう。しかし、価格の点においては、輸入にかかるコスト増もあって、ハリソンや靴下屋よりも、コストパフォーマンスは低い。

実際、ハリソンや靴下屋などの国産品と比較すると、1足あたりの価格は1.5〜2倍近くとなる。伝統のニットブランドの技術で編みこまれた製品の魅力はあるが、この価格差は無視できない。

最後に

冒頭で書いたように、ホーズの認知度はいまだに低い。一見、ファッションに気をつかっているように見せかけて、足元の締まりがない人を頻繁に見かける。

服装は全体で表現するものだ。よいスーツを着て、よい靴を履いていても、そのつなぎとなる靴下で手を抜いてしまっては、すべて台無しになってしまう。

マナーという観点からも、ホーズを履いてみてほしい。そうすればもう、ソックスには戻れないはずだ。