スターティングストレングスはバーベルに関係なく体を大きくする

スターティングストレングスはストレングストレーニングの専門書である。バーベルトレーニングの本質が書かれている。バーベルトレーニングの本質はバーベル以外にも使える。したがって、スターティングストレングスはバーベルに関係なく体を大きくする

スターティングストレングスはストレングストレーニングの専門書である

ストレングストレーニングのコーチが書いている。分かりやすく論理的に書かれている。価格も「専門書」並みだけどKindleなら安い。したがって、スターティングストレングスはストレングストレーニングの専門書である

ストレングストレーニングのコーチが書いている

スターティングストレングスは、アメリカでストレングストレーニングのコーチをしているMark Rippetoeによって書かれた本だ。Mark Rippetoeは自身のパワーリフター経験を生かして、ストレングストレーニングのコーチングやそれに関わる本の執筆をしている。

本書「スターティングストレングス」も、Mark Rippetoeがストレングストレーニングのプログラムである"Starting Strengh"のコーチング内容を、一冊の本としてまとめたものだ。

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分かりやすく論理的に書かれている

スターティングストレングスは、写真やイラストを使って科学的な根拠が誰にでも分かるように書かれている。

例えば、本書には「スクワット」や「プレス」といった具体的なバーベルトレーニングの解説があるが、その解説では物理学的な力のかかり方や、生物学的な筋肉の動き方が、専門家でなくても理解できるように書かれている。

「パワーリフリティング」や「ウエイトリフティング」など、ストレングストレーニングに関連してよく使われる「リフト("lift")」という言葉は、何かを「持ち上げる」ことである。

何かを持ち上げることは重力によって垂直方向にかかる力に対処することだから、持ち上げるときの体の位置や、持ち上げる方向といった力学的な理解は欠かせない。

それから、持ち上げる主体は人なのだから、その人の体の構造や動きといった解剖学的な理解もしなければならない。

価格も「専門書」並みだけどKindleなら安い

スターティングストレングスは2011年にアメリカで出版された本だが、2019年には日本語にも翻訳されている。これら原書"Starting Strength"と翻訳「スターティングストレングス」は専門書並みの価格だが、原書のKindle版だけは安価になっている。

原書"Starting Strength"のペーパーバックは29.95ドルであり、翻訳「スターティングストレングス」は5,800円である。しかし、原書のKindle版だけは1,000円前後で買えるため、洋書に抵抗がなければこちらが最もリーズナブルである。

価格が最も高い翻訳「スターティングストレングス」であっても、その内容に5,800円の価値は十分にある。しかし、未読者が本を買うとき、5,800円が心理的な抵抗になることは容易に想像できる。

バーベルトレーニングの本質が書かれている

バーベルを垂直に上げる理由が書かれている。支点からの距離を考える意味が書かれている。呼吸を意識することの大切さが書かれている。したがって、バーベルトレーニングの本質が書かれている

バーベルを垂直に上げる理由が書かれている

物体にはその質量に比例して地面に向かう垂直の力「重力」がかかる。だから、バーベルは垂直方向に持ち上げるときに最も力が必要であり、それ以外の方向に持ち上げるときには力のロスが発生する。

実際、バーベルを垂直方向に持ち上げるときにかかる重力は質量×重力加速度で計算されるが、垂直方向からズレて斜めに持ち上げるときにかかる重力はズレの大きさだけ割引される。

スターティングストレングスではバーベルを垂直に持ち上げることに関連して、バーベルの重心を体の中心に置く"mid foot"という言葉が頻繁に使われる。

例えば、スクワットの終点でバーベルを持ち上げたまま安定するのは、バーベルの重心が足の中心(mid foot)から垂直線上にあるからだ。

そして、バーベルがこの足の中心からの垂直線上を動くなら、バーベルは常に最大の力を発揮することができる。

支点からの距離を考える意味が書かれている

回転軸(力の支点)と、力点から回転軸と同じ平面に下ろした垂線の交点までの距離を"moment arm"という。moment armが長いほど大きな力がかかる(必要になる)。

例えば、バーベルを垂直に立てたとき、バーベルを支える手(支点)とバーベル(力点)のmoment armはゼロだから、バーベルを支える手に力はかからない。

しかし、バーベルを斜めに傾けていくと、バーベルを支える手とバーベルのmoment armが長くなるから、バーベルを支える手にも力がかかってくる。

moment armはバーベルを垂直に持ち上げることにも関係する。ベンチプレスの終点でバーベルが斜め(頭や腰の方向)にあると、本来使いたい垂直方向の力は弱くなるのに対して、バーベルを上げたときの支点となる肩関節に負荷がかかる。

呼吸を意識することの大切さが書かれている

ストレングストレーニングでは腹圧をかけることが大切だというが、その具体的な方法として、スターティングストレングスでは"valsalva maneuver(バルサルバ法)"を紹介している。

valsalva maneuverは、息を吸い込んで口を閉じ息を止めることで、肺の空気の圧力を高め腹筋が収縮する。そうすることで、肺と腹腔内から脊柱の前面に力が加わる。

脊柱に力が加わると、体に堅いシリンダー入ったような状態になるため、負荷をかけたい筋肉に集中することができる。

バーベルトレーニングの本質はバーベル以外にも使える

スターティングストレングスは基礎的なバーベルトレーニングを解説している。基礎的なバーベルトレーニングの知識はマシンや自重トレーニングにも使える。スターティングストレングスは全てのトレーニーを対象としている。したがって、バーベルトレーニングの本質はバーベル以外にも使える

スターティングストレングスは基礎的なバーベルトレーニングを解説している

スターティングストレングスは、その副題が"Basic Barbell Training"となっているように、基礎的なバーベルトレーニングからストレングストレーニングを解説している。

スターティングストレングスは主に三つのパートで構成されている。一つはストレングストレーニングやバーベルトレーニングの意味についてである。

二つ目は主要なバーベルトレーニングである「スクワット」「プレス」「デッドリフト 」「ベンチプレス 」「パワークリーン」と、それらの補助種目の解説だ。

補助種目では、スクワットのバリエーションや「バーベルカール」といったバーベルトレーニング以外にも、「ディップス」や「懸垂」などの自重トレーニングも解説している。

三つ目がバーベルトレーニングを実行するためのプログラム作り、食事、トレーニング器具についてである。トレーニングに最適な頻度から、リストストラップといった具体的なトレーニング器具の解説もある。

基礎的なバーベルトレーニングの知識はマシンや自重トレーニングにも使える

スターティングストレングスの大部分は主要なバーベルトレーニングの解説に割かれているが、それらの本質はmid footやmoment arm、valsalva maneuverといった知識にあり、これらはバーベルを使わないトレーニングにも使える。

例えば、スミスマシンを使ったスクワットでは、あえてmid footを外してバーベルを垂直に上げることができるが、mid footを維持するための筋肉は使われない。

このように、バーベルトレーニングの本質を理解することで、マシントレーニングのメリットやデメリットが分かり、トレーニングの使い分けができるようになる。

自重やダンベルトレーニングよりも効率的なのがバーベルトレーニングであり、バーベルトレーニングを特定の目的だけにフォーカスしたのがマシントレーニングである。

だから、バーベルトレーニングは自重、ダンベルやマシントレーニングの中間に位置していて、その本質が他のトレーニングにも使えるのだ。

スターティングストレングスは全てのトレーニーを対象としている

スターティングストレングスはストレングストレーニングを始めたばかりの初心者は無論、中級者や上級者であってもストレングストレーニングの理解を深める助けになる。

ストレングストレーニングのメリットは、正しいやり方が分かっていてそれを実行できれば、誰でも力(ストレグス)を強くできることだ。力が強くなれば、結果的に体も大きくなる。

それに対して、ストレングストレーニングのデメリットは、その正しいやり方を分かること、実行することが難しいことである。

ストレングストレーニングの経験が長く、それなりに効果を上げている中級者や上級者であっても、ストレングストレーニングの体系的な知識が整理されている本は他にないから、スターティングストレングスがこれからのストレングストレーニングの質を上げることは間違いないだろう。