ローバースクワットは生産性において代替されることがない種目だ

ローバースクワットは安全に脚を鍛える種目だ。ローバースクワットは生産性が高い。ローバースクワットの生産性を上回る種目はない。したがって、ローバースクワットは生産性において代替されることがない種目だ

ローバースクワットは安全に脚を鍛える種目だ

ローバースクワットではバーベルを低い位置で担ぐ。バーベルを低い位置で担ぐと股関節の屈曲が大きくなる。股関節の屈曲が大きくなると膝が前に出にくい。したがって、ローバースクワットは安全に脚を鍛える種目だ

ローバースクワットではバーベルを低い位置で担ぐ

「ローバースクワット」は英語で"Low Bar Squat"と書く。つまり、ローバースクワットは(バーベル)バーを低い位置で担ぐスクワットのことだ。

この「低い位置」を具体的にすると、多くの場合でバーベルは肩甲骨の上、後側から見て両肩のカーブの真ん中を通る水平線上にある。多くの人にとって、この位置はバーベルを「自然に」担いだときよりも低い位置になるだろう。

実際、バーベルを低い位置(肩甲骨の上)で担ぐには、肩回りや手首の柔軟性が必要になる。しかし、最初はそれが難しくても、ローバースクワットをしているうちに柔軟性は獲得できるから心配はいらない。

低い位置でバーベルを担ぐと股関節の屈曲が大きくなる

関節を曲げることを「屈曲」という。ところで、スクワットでしゃがむ人を横から見ると、バーベルは常にその人の足の中心の垂直線上を動く。そうでなければバランスを崩して倒れてしまう。だから、スクワットをする人がバランスを取るには、バーベルを担ぐ位置の違いを股関節の屈曲の大きさによって調整する必要がある。

実際、バーベルを肩甲骨よりも高い位置にある首の付け根(僧帽筋の上部)で担ぐとき(これを「ハイバースクワット("High Bar Squat")」という)、ローバースクワットと同じだけ股関節を屈曲させると、重心は足の中心の垂直線上よりも前に来てバランスを崩してしまう。

逆に、バーベルを肩甲骨よりも低い位置である腰で担ぐ(実際にはできないが何らかの方法で担ぐことができるとする)とき、ローバースクワットと同じだけ股関節を屈曲させると、重心は足の中心の垂直線上よりも後に来てバランスを崩してしまう。

股関節の屈曲が大きくなると膝が前に出にくい

股関節の屈曲が大きいということは、しゃがんだとき(太ももを地面と水平かそれ以上にしたとき)に「すね」がより垂直に近いということだ。だから、しゃがんときにも膝がつま先の垂直線上よりも前に出ることがない。

それに対して、ハイバースクワットのように股関節の屈曲が小さいときに太ももが地面と水平になるまでしゃがもうとすると、膝はつま先の垂直線上よりも前に出てしまう。

スクワットは非常に優秀なトレーニング種目である一方、ケガのリスクが高い種目でもある。その中でも膝関節へのダメージは深刻であり、膝関節は膝がつま先の垂直線上よりも前に出るときに大きな負荷がかかる。

ローバースクワットは生産性が高い

脚の筋肉は全ての筋肉の中で最も大きい。ローバースクワットは大腿四頭筋を鍛える。ローバースクワットはハムストリングを鍛える。したがって、ローバースクワットは生産性が高い

脚の筋肉は全ての筋肉の中で最も大きい

脚(太もも)の筋肉は主に、体の前側にある「大腿四頭筋」と、後側にある「ハムストリング」からなる。主要な筋肉の一般的な大きさを見ると、大腿四頭筋は体の中で最も大きな筋肉であり、ハムストリングは三番目に大きな筋肉である(二番目はお尻の筋肉である「大臀筋」だ)。

人の下半身には大臀筋やふくらはぎの筋肉である「下腿三頭筋」もあり、これら下半身の筋肉を総合すると、人の筋肉全体の50%を超える。

大腿四頭筋、ハムストリング、下腿三頭筋はいくつかの筋肉の総称である。例えば、大腿四頭筋は「大腿直筋」「外側広筋」「内側広筋」「中間広筋」という四つの筋肉の総称だ。

当然これらの筋肉一つ一つにそれぞれの役割があるのだが、その役割は大腿四頭筋とハムストリングに含まれる筋肉同士ほどの違いはないため、一般的には総称が使われている。

ローバースクワットは大腿四頭筋を鍛える

関節を伸ばすことを「伸展」という。大腿四頭筋の作用(力の働き)は膝関節の伸展である。つまり、大腿四頭筋は膝関節が屈曲した状態から伸展するときに負荷がかかる筋肉であり、これはローバースクワットの動作とも合致している。

ローバースクワットで太ももが地面と平行かそれ以上になるまでしゃがむとき、膝関節が屈曲し大腿四頭筋は最も引き伸ばされる格好になる。ここから膝関節を伸展させると、大腿四頭筋は縮みながら収縮することで力を発揮する(これを「短縮性筋収縮(コンセントリック収縮)」という)。

筋肉を「鍛える」とは、筋肉を「実際に使う」ことに他ならない。ローバースクワットでしゃがんだときは大腿四頭筋が引き伸ばされていることを、立ち上がったときはそれが縮んでいることを意識できると良い。

ローバースクワットはハムストリングを鍛える

ハムストリングの作用は膝関節の屈曲と股関節の伸展である。つまり、ハムストリングは膝関節が伸展した状態から屈曲するときと、股関節が屈曲した状態から伸展するときに負荷がかかる筋肉であり、これもローバースクワットの動作と合致している。

ローバースクワットでしゃがむとき、膝関節だけでなく股関節も(ハイバースクワットより)屈曲しハムストリングは引き伸ばされる。ここから膝関節と股関節を伸展させると、ハムストリングにもまたコンセントリック収縮が起こる。

ハムストリングは、膝関節が伸展し股関節が屈曲しているときに最も引き伸ばされるわけだが、ローバースクワットではその動作を全く同時に実現することはできない。

しかし、それはしゃがむときには膝関節の屈曲でハムストリングが使われ、立ち上がるときには股関節の伸展でハムストリングが使われるということである。

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ローバースクワットの生産性を上回る種目はない

ハイバースクワットはハムストリングに弱い。フロントスクワットは大腿四頭筋が主になる。レッグプレスでは脊柱起立筋が使えない。したがって、ローバースクワットの生産性を上回る種目はない

ハイバースクワットはハムストリングに弱い

ハイバースクワットはローバースクワットよりも股関節の屈曲が小さい。スクワットにおいて股関節の屈曲が小さいとハムストリングの関与も小さくなるから、ハイバースクワットはローバースクワットよりもハムストリングを鍛えることには向いていない。

実際、スクワットをしていてもハムストリングがうまく使えていないと感じる人の多くは、ローバースクワットができていない(ハイバースクワットになっている)からだ。

それから、ローバースクワットでは大腿四頭筋だけでなくハムストリングの関与も大きくなるのだから、それだけ重い重量を上げられるということでもある。これはパワーリフティングでローバースクワットが使われることが多い理由の一つだ。

逆に、ハイバースクワットではハムストリングの関与が小さくなることを利用し、どちらかといえば大腿四頭筋「狙い」の種目としてハイバースクワットをトレーニングに取り入れることもある。

フロントスクワットは大腿四頭筋が主になる

スクワット系種目の中でも、ハイバースクワットよりさらにハムストリングの関与が小さい種目が「フロントスクワット」だ。フロントスクワットはハイバースクワットよりも股関節の屈曲が小さくハムストリングの関与が限定的なことから、大腿四頭筋を鍛える種目として取り入れられる。

フロントスクワットはバーベルを体の前側(多くが顎の下あたり)で担ぐスクワットである。だから、ローバースクワット→ハイバースクワット→フロントスクワットの順番で、(股関節の屈曲の大きさが同じなら)バーベルの重心は体の後→前に移動し、それを調整するために股関節の屈曲は小さくなる。フロントスクワットでしゃがんだ状態を横から見ると、上半身はほとんど起きた状態になる。

スクワット系種目の中でハムストリングを使わない究極のカタチとしては「ハックスクワット」がある。ハックスクワットは一般的にはスミスマシンやハックスクワットマシンを使って行う。

ハックスクワットをスミスマシンで行う場合は、股関節を屈曲させないで(上半身を垂直に立てて)、膝関節の屈曲と伸展を繰り返す。イメージは背中を壁に付けた(壁に寄りかかった)状態で、足は体の前の方に接地してしゃがんだり立ち上がったりする動きだ。

ハックスクワットマシンはその動作が自然とできるように設計されている。股関節が屈曲しないため、大腿四頭筋だけを鍛えたいとき(例えば、デッドリフトでハムストリングを使った後)に取り入れられる。

レッグプレスでは脊柱起立筋が使えない

スクワットと同じような動きができるマシンとして「レッグプレス(マシン)」がある。しかし、レッグプレスではスクワットのように背中を伸ばす動きがないため、スクワットで鍛えられる「脊柱起立筋」といった体幹筋が使われない。

脊柱起立筋は「腸肋筋」「最長筋」「棘筋」の総称で、骨盤から頭部までをつなぐ背中の中心部にある最も長い筋肉である。脊柱起立筋は体(主に上半身)の姿勢を維持するための筋肉であり、スクワットやデッドリフトのように上半身だけはまっすぐに伸ばした状態でバーベルをリフトするときに使われる。しかし、レッグプレスはマシンに背中を預けることができることから、上半身をまっすぐに伸ばすことには負荷がかからない。

ハムストリングは、フロントスクワットやハックスクワットのように股関節を伸展させた状態で膝関節だけを伸展させてもほとんど使われない。しかし、レッグプレスでは股関節を屈曲させた状態で膝関節を屈曲・伸展させるためハムストリングが使われる。