フィッシュオイルは副作用より効果に疑問を持たなくてはならない

フィッシュオイルは筋肉の分解抑制が期待されている。フィッシュオイルの副作用は大きな問題ではない。フィッシュオイルの効果には期待できない。したがって、フィッシュオイルは副作用より効果に疑問を持たなくてはならない

フィッシュオイルは筋肉の分解抑制が期待されている

フィッシュオイルは「オメガ3脂肪酸」を含有している。「オメガ3脂肪酸」は筋肉の分解を抑制する。「オメガ3脂肪酸」は魚に含まれている。したがって、フィッシュオイルは筋肉の分解抑制が期待されている

フィッシュオイルは「オメガ3脂肪酸」を含有している

フィッシュオイルとは「オメガ3脂肪酸」を含有したサプリメントのことだ。オメガ3脂肪酸はEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といった化合物の総称である。

例えば、ネイチャーメイドのスーパーフィッシュオイル一粒にはEPAが162mgとDHAが108mgが含有されている。一日一粒のフィッシュオイルから効率的にEPAやDHAを取ることがサプリメントの目的になる。

フィッシュオイルは一粒あたり10円ほどで他のサプリメントよりも安い。実際、オプティマムニュートリションのクレアチンは一日5gで23円だし、毎日取るものではないにしてもエクステンドのBCAAは一回あたり68円である。

この価格の安さがフィッシュオイルが普及した要因の一つかもしれない。

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「オメガ3脂肪酸」は筋肉の分解を抑制する

EPAやDHAといったオメガ3脂肪酸は、筋肉の分解を抑制しながら合成を促進したり、筋肉痛を緩和したりといった運動パフォーマンスにポジティブな影響があるとされる。

実際、ある研究で特定の動物にEPAとDHAを投与したところ、筋肉の分解を抑制する効果が見られたという。しかし、この効果が人でも同様に再現できるかどうかは分かっていない。

それから、オメガ3脂肪酸には認知機能を向上させたり視力低下を抑制したりといった効果も期待されている。また、「血液をサラサラにする」ともいわれており、オメガ3脂肪酸は非常に優れた化合物のようにいわれている。

「オメガ3脂肪酸」は魚に含まれている

この魔法のような化合物オメガ3脂肪酸は主に魚介類に含まれている。特に、イワシやサバといった青魚に多いといわれる。

フィッシュオイルも、イワシやサバを原料にした煮汁から油だけを分離して作られる。

それから、オメガ3脂肪酸は必須脂肪酸であるため人の体内では合成することができない。人が体内で合成することができないものをサプリメントとして体外から取るというのは、必須アミノ酸をBCAAとして取ることと似ている。

必須脂肪酸の一日あたりに必要な基準量は決まっていて、ISSFALはEPAとDHAを合計で500mg以上取ることを推奨している。

フィッシュオイルの副作用は大きな問題ではない

副作用もリスクが低ければ大きな問題ではない。フィッシュオイルの副作用はリスクが低い。したがって、フィッシュオイルの副作用は大きな問題ではない

副作用もリスクが低ければ大きな問題ではない

どのようなサプリメントにも副作用が起こる「可能性」はある。だから、副作用が起こる可能性の高さや損害の大きさといった「リスク」を議論しなければ意味がない。

人には、期待される利益よりも起こりうる損害(リスク)を回避しようとする習性がある。だから、感覚的に意思決定をしていると本来は得られたであろう利益を取り逃すこともある。

ダニエル・カーネマンは行動経済学の分野でこのことを「プロスペクト理論」と定義した。ここに有名な実験がある。

  1. 100%の確率で100万円が手に入る
  2. 50%の確率で200万円が手に入るが、50%の確率で何も手に入らない

この質問ではaを選ぶ人が多い。これは「50%の確率で何も手に入らない」リスクを回避している。この堅実な人たちに次の質問をする。

  1. 100%の確率で200万円の負債から100万円が減額される
  2. 50%の確率で200万円の負債から全額が減額されるが、50%の確率で負債は減額されない

堅実な人たちなのだからaを選びそうなものだが、実はほとんどの人がbを選ぶ。これはaの「100%の確率で減額されても100万円の負債は支払わなければならない」リスクを回避している。

いずれの質問でも期待値は同じだが、この実験から人は利益は堅実な方法で手に入れようとし、損害はリスクそのものを回避しようとすることが分かる。

フィッシュオイルの副作用はリスクが低い

フィッシュオイルを取ったときに起こりえる副作用は、「胸やけ」「頭痛」「止血遅延」といった軽微なものばかりだ。1 ただし、フィッシュオイルに期待される効果のひとつでもある「血液をサラサラにする(血液の性状を健康な状態にする)」ことは、血液凝固剤との関係もあるし、魚介類アレルギーへの反応といった問題があることも事実だ。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、EPAやDHAには一日あたりの目標摂取量(下限)はあるが目標摂取量(上限)はない。つまり、他のサプリメントと同じで適量を取る分にはリスクは低い。

それから、オメガ3脂肪酸には前立腺がんのリスクが上がるといった例もあるが、EPAやDHAを多く取ることで前立腺がんのリスクが下がったという報告もある。 2

フィッシュオイルの効果は置いておいても、フィッシュオイルは副作用に対して過剰に反応されているサプリメントの一つだ。この点ではマルチビタミンといったビタミン剤も同様に過剰反応が多い。

結局のところ、副作用に対する過剰反応は人の本能的なリスク回避行動だから、そのことを理解してしっかりとサプリメントのリスクと効果に向き合うべきだろう。

フィッシュオイルの効果には期待できない

サプリメントの効果は再現性で決まる。フィッシュオイルの再現性に根拠はない。したがって、フィッシュオイルの効果には期待できない

サプリメントの効果は再現性で決まる

サプリメントがサプリメントとしての効果を発揮するためには、サプリメントに含有されている化合物が食事から人の体内に入ったときと同じ働きをしなければならない。

例えば、プロテインは食事から取るタンパク質と同じように体内で代謝されて筋肉の材料になる。だから、食事だけでは不足するタンパク質をプロテインから取ることには意味がある。

もし、プロテインからタンパク質を取ったときに体内で代謝がされなければ、どれだけプロテインが安くてもサプリメントからタンパク質を取る意味はない。

フィッシュオイルは一日あたり10円のコストがかかる。年間で4,000円だから大きくはないが、それでも安価なトレーニング器具や体重計なら買えてしまう。

それに、サプリメントを購入するまでの時間的コストや、サプリメントを保管しておく空間的コストもかかっているから、サプリメントを多く取っているなら厳選してみるのもいい。

無論、サプリメントは食事を補助するものだから、食事をバランスよくしっかりと取っていれば必要のないものだ。

食事から栄養を取ることを前提に、どうしても足りないものだけをサプリメントで補助するという意識で積み上げていくのが本来のあり方だろう。

フィッシュオイルの再現性に根拠はない

フィッシュオイルはEPAやDHAといったオメガ3脂肪酸を効率的に取るためのサプリメントであったが、フィッシュオイルからオメガ3脂肪酸を取っても、食事からオメガ3脂肪酸を取ったときと同じ効果があることは証明されていない。

フィッシュオイルや他のサプリメントの研究は日々進歩しているから、数年後にはその結果も変わっているかもしれない。しかし、現状ではEPAやDHAが体にポジティブな影響があることは肯定しつつも、フィッシュオイルにはその効果を認めていない。

これは体内で合成できない必須アミノ酸をサプリメントとして取るBCAAも同じだ。必須アミノ酸の役割は分かっているが、BCAAが必須アミノ酸の役割を果たしているかは分からない。

オーストラリア国立スポーツ研究所は科学的な根拠に基づいてサプリメントをいくつかのグループに分類している。その中で、フィッシュオイルやBCAAは「グループB」に分類されている。3

グループBに分類されるサプリメントは科学的な支持があるものの効果を実証するには研究が不十分であるものだ。つまり、フィッシュオイルには期待されるところがあるものの、現状では「推奨される」域には達していないということである。

それに対して、クレアチンは「グループA」に分類されている。グループAに分類されるサプリメントは科学的な根拠に強く支持されているものだから、サプリメントの導入を検討するならグループAのサプリメントから順番に試すべきだろう。